【アトム】愛され続けるホントの理由image_maidoya3
うかつ。大失態である。これまで数々のメーカーを取材し、ご紹介してきたまいど屋がアトムを忘れていた!イイワケを承知で弁解させてもらえば、アトムがあまりに日常的、あまりに圧倒的なブランドだから。
  試しに市中のワークショップを覗いてみればよい。作業手袋のコーナーにはアトムの商品が所狭しと並んでいるはずだ。当然のようにお客さまからの指名買いされ、当たり前のように売れ行き好調。改めて取材することすら思いつかない---アトムはそんな存在である。
  このブランドの何が現場のユーザーたちを引き付けるのか。数ある他のブランドと何が違うのか。耐久性。機能性。価格。言葉にできない微妙なフィット感。理由はいろいろあるだろう。でも、ハッキリした答えは誰も知らないし、教えてくれない。愛され続けるホントの理由。それは一体何だろう。
  今回の取材は今まで不思議にも感じなかったそんな素朴な疑問を解明する絶好のチャンス。月刊まいど屋編集部では早速、アトムの広島本社を訪ね、同社の商品開発を主導する田口さんをはじめ、スタッフの方にたっぷりとお話を伺ってきた。

アトム
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大きな緑文字が目立つ看板が目印の本社。とても大きな社屋だ。
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総勢6名でインタビューに答えてくれたアトム社員の方々。
「ウチはゴム屋です。特にゴム張りの手袋*は生産の80〜90%。業界シェアもありがたいことに、この分野で50%程ある。日本で使われるゴム張り手袋の2つに1つはウチの製品なんです」。インタビューが始まった直後、アトムはどんな会社ですかという質問に対し、即座に返ってきた答えである。もちろん、ゴム張りの他にも、アトムにはゴム手袋や靴下など、売れ筋のラインナップが多数ある。ただ、ゴム張り手袋の出荷量があまりにも膨大なため、結果として売り上げの大部分がゴム張り関連になってしまう。やはりアトムはゴム張り手袋の最高峰ブランド。今回のインタビューでは、そこをメインに話を聞いていきたいと思う。取材に応じてくれたのは、技術開発部と営業部の人たち総勢6名。商品開発のポイントから営業サイドのフィードバックまで、アトムの全貌をつかむには理想的なメンバーが集まった。熱気にあふれたインタビューは途中から、さながら臨時の企画開発会議と化す。まいど屋のお客さまに、少しでも彼らの商品の良さを分かってもらおうという意気込みが伝わってくる。
  「最近、お客さまが好まれるゴム張り手袋のトレンドが、明らかに変わってきています」。商品開発の田口さんによると、ここ数年、ハード系でしっかりした作りの商品よりも、薄地のフィットタイプが人気を集めているという。「薄地で伸縮性が高いハイゲージ原手に、スベリ止めのゴムを薄くコーティングして作ります。素手感覚で細かい作業ができ、グリップ力も高い。使い勝手の良さがウケているんだと思います。コーディングするスベリ止め素材は、天然ゴム、ニトリルゴム、塩化ビニール、ポリウレタンなど、使用目的によって、さまざまです。ある程度の耐久性と柔らかさをポイントにするなら天然ゴム、耐油性や強度を重視するならニトリルゴムといった具合です」。
  営業室長の藤堂さんが続ける。「これだけ種類が多いと、お客さまは迷ってしまうかもしれない。また、専門的すぎて分かりにくいかもしれない。それでもいいんです。手袋は最終的には個人のフィーリングですから、とにかく、一度使っていただく。いろいろ試してみれば、自分にぴったりの製品が必ずあります」。
  また、ゴム手袋を含めた手袋全体では、油に強いニトリルゴムの商品ラインナップが増えてきているという。「とにかく私たちの手袋は、油に強い性質であることがウリ。それが、多くのお客さまから評価されているポイントなんです」。耐油技術が磨かれてきたのは、同社が天然ゴム素材に特にこだわってきたからだと田口さんは説明する。「天然ゴムは伸びがよく柔らかいので、作業での使い心地は抜群なんです。ただ、油で滑ってしまう。その欠点を克服しようと、NBRを使用した手袋を15年程前に開発しました。NBRとは、アクリルニトリルブタジエンラバーの略で、一般的にはニトリルゴムと言います。ニトリルの量を加減することで、耐油性能や耐摩耗性、硬さを自在に設計でき、微妙な感触も細かく調節できるんですよ」。
  営業室長の藤堂さんが言ったように、手袋の良し悪しを決めるのは、最後は「使ってみてしっくりくるか」というフィーリングの問題に行きつく。アトムの手袋が人気を集めるのは、素材のバランスにコダワリぬいて、多様なフィーリングの手袋を生み出す執念にあるのだろう。
  そんな彼らに、今後の目標を尋ねてみた。「これからは環境をもっと意識していきたいと考えています。製造過程の排煙や排水対策で環境負荷のない企業を目指したいと考えているんです。また、当たり前のことですが、ゴム屋であり続けたい。どんな手袋が求められているのか、お客さまの声を注意深く聞いて、そこにアトムとしてのこだわりを加える。目的に特化させた手袋を開発するのが私たちの使命です。お客さまのニーズにこたえながら、オリジナルな商品を開発すること。そこは譲れないですね」。田口さんの言葉にはゴムに対する深い愛着と自負心が満ちている。アトムの手袋が愛される理由がわかる気がしたインタビューだった。
 
  *編集部注:この記事中で「ゴム張りの手袋」と表記したものは、ゴム張り手袋の他に、ゴム引き手袋を含みます。
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豊富な種類が揃うアトム製の手袋。この4種類はどれだか分かりますか?
 

    

防振手袋シリーズ

アトムオリジナルの振動軽減ゴム加工とオリジナルのブロック意匠が効果を発揮!防振手袋の決定版といえば、このシリーズ。チェンソーやドリルを使うひとは要チェック!


人気のタフレッドシリーズ

手にピタッとくるフィット感が大好評!伸縮性があるナイロン原手にグリップ力抜群の天然ゴムをコーティングした作業性抜群のゴム張り手。優れた耐久性でも人気のシリーズ。