【ヒラノ産業】レインシーズンの救世主、リターンズ!image_maidoya3
なかなか新作が出てこないなぁ。レインスーツの専門メーカーなのに、どうしちゃったんだろ。このブランドを最後に取材してから、もうかれこれ4年も経つ。その間、まさか寝ていたわけじゃないだろうけど、まったく音沙汰なしっていうのはどういうこと?まいど屋のお客さまはガマン強いから、リピートし続けてくれているけど、そろそろいい加減にしろって怒られそう。梅雨入りも間近だし、クレームがてらに挨拶でもしてこよっか。やる気はあるの?この先、いったいどうすんの?そんでもって、商品企画の担当者がヘナチョコの回答しかしなかったなら、まいど屋のお客さまを代表して説教してやる!
  今回の特集にヒラノ産業を選んだのは、そんな上から目線でストレスを発散してこようというヨコシマな動機から。だが、取材に行って大恥かいた。新商品が出てる出てる。じゃ、なんでまいど屋に連絡ないんだ?担当者、出て来い!
  月刊まいど屋史上、かつてないほど不穏な空気で始まった今回のインタビュー。今振り返って、こうしてちゃんとしたレポートにまとまったのは、取材に応じてくれた比嘉取締役と、営業部の鈴木氏のオトナの対応ぶりのおかげである。あの、ご連絡はしてますよ。まいど屋さんの編集部宛てにその都度、資料を送ってるんです。正式カタログ出してたら、お客さまのご要望にスピーディーに対応できないので、最近はチラシでご案内していました。ご覧いただけなかったのでしょうか。そう、寝ていたのは編集部。説教されるべきは自分自身。冷や汗をかきながらの2時間半で、この4年の空白を埋めようと、必死に質問を繰り返した。以下、そのインタビューの顛末である。
 

ヒラノ産業
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首元もしっかり風雨から守ってくれるプラネットレインスーツ
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ズボンの丈がこれだけ調節可能!上下の組み合わせを楽しんで
「いやぁ、まいど屋さんには、私が仕事してないことがバレちゃってるなぁ(笑)」。頭を掻いてそう話すのは営業部の鈴木郁夫氏。「もっとこまめにご連絡をしていればよかったです。いつもお忙しいようなので、アポイントメントも取りづらくて」。まいど屋が知らないところでリリースされていた商品の数々を前に、鈴木氏の隣に座る比嘉賀彦取締役が穏やかに説明を始める。「毎年、新商品を少なくとも1点ずつは出しているんです。同時に、ホームセンターや問屋さん向けのプライベートブランド(PB)製品も作っています。既存の定番品だって、カラーを増やしたりするようなマイナーチェンジをしてるんですよ。いつも同じカラーじゃつまらないでしょうから、お客さまに少しでも楽しんでもらおうと思って」。
  きっと定番品の人気の高さをいいことに、商品開発は半ばお休み状態だったんだろうとタカをくくって臨んだ取材。蓋を開ければ、お休みどころか、現場は大忙しだったという。「丁度、今シーズンの新作が上がってきたばかりのところです。今日はそのご紹介をさせていただきます」。そう言って鈴木氏は、にこやかに新アイテムのパッケージを机上に並べてくれた。では、さっそく、プラネットレインスーツ(型番:01570)の方から、仕様の詳細について伺おう。「カッパの条件は濡れないことが第一。その上で、お客さまが快適に感じるためにできることを、一つひとつ手を抜かずにやってみる。細かいことなのかもしれないですが、例えば前立てのファスナーのところは、雨水がファスナー部分に浸入しないように、ファスナーの手前で布を折り返した作りにしています。ベンチレーションの深さも、試行錯誤を繰り返して、どれくらいの深さにすれば切り返しから雨水が入らないか、何度もサンプルを作りました」。
  あまり目立たないけれども、気のきいた配慮。それを積み重ねれば、出来上がった商品の使い勝手は格段によくなってくると鈴木氏は繰り返す。「袖口の開口を調節するマジックテープは、角を丸くカットして肌への当りを柔らかくしてあります。取り外しのできるフードの顔の周囲の部分が透明ビニール製になっているのは、薄暗い雨天時に少しでも見通しが効くようにするため。ズボンのおしり部分は、ウエストから太ももの付け根あたりまで、広範囲が二重仕様です。カッパを脱いだらズボンのおしりに雨がしみていた、なんてことがないようにね」。
  背中についた反射板には、よく見ると小さな土星のようなマークが付いている。「商品名がプラネット、つまり惑星なので、惑星をポイントにしてみようかと。単なる開発者側のわがままなんですけどね(笑)」。ちょっとした遊び心もニクイ。
  続いてご紹介するのはレインクロスジャケット(型番:01732他)。プラネットレインスーツが一般の通勤通学者向けだとすれば、こちらはワーカー向き。グローブをはめたままでも手の出し入れがしやすいよう、ポケットが大き目に作られていたり、ファスナーの金具にリボンを付けて、つまみやすくするなどの工夫が随所に光る。最大の特徴は、上下別々にサイズを選べること。「今までは、上下同じ色でのセット販売が一般的でした。でも、お客さまには様々な体型の人がいます。上はLサイズだけど、下はLLサイズがいいとか。それに、ジャケットだけ欲しい人、ズボンだけが欲しい人もいますよね。上下別々の商品を作れば、今まで不便を感じていたひとたちが、きっと喜んでくれると思ったんです」。
  カラーは、黒、シルバー、カモフラージュ(迷彩柄)の3パターン。違うサイズを組み合わせるだけでなく、上下で色柄の違うものを選んで、自分なりのコーディネートを楽しむこともできそうだ。また、ズボンの丈はマジックテープで最大10cm短くすることが可能なアジャスタブル仕様。ワーク用ではあるが、伸び盛りの小中学生の林間学校などにもぴったりだ。「最初はマジックテープじゃなくて、ボタンにすることも考えたんですが、ボタンだと膝をついたときに当って痛いでしょ?それでテープ仕様に」。
  では、こうしたきめ細かなアイデアは、どこから集めてくるのだろうか。そんな質問に比嘉取締役が答える。「取引先のホームセンターの売り場に実際に立って、販売をしながらお客さまの声を生で聞いています。ハガキでアンケートを集めるところもありますが、逆にいい事しか書いてなかったりするでしょ?現場に立つと、お叱りを受けることもありますが、一番ダイレクトにお客さまが何を望まれているか分かるんです」。
  週に2~3日は販売の現場に足を運んでいるという比嘉氏。ユーザーの声を商品づくりに生かすため、今後はまいど屋のような通販の可能性にも大いに着目していきたいという。インタビューの最後にご紹介いただいたレインポンチョ(型番:01487)は、そんな期待を背負った商品だ。「今日、まいど屋さんがいらっしゃるというので、この商品を用意しておいたんです。通販の難しいところは、実際の商品を手に取って触れられないことですよね。だからその分、色で見せたり、機能で見せたりして、一目でその商品の良さを分かってもらうことが重要だと思っています。このレインポンチョは、そんな通販向けのアイテムにピッタリじゃないですか」。
  比嘉氏が手にとって説明を始めたポンチョは、確かに特徴があって機能が充実している。例えば、袖口には手の甲を覆うカバーが内蔵されているので、ウエアの袖をムリヤリ引っ張って手の甲を覆う必要がない。前開きの裾の部分はマチ付きで、自転車にまたがっているときにも足元にかかる雨をしのぐことができる。配慮が行き届いていて、いちいち納得させられる。ユーザーの「これがあればいいのに」が見事に形になっている。カラーは、メインターゲットの女性心をくすぐる、カラフルな6色展開。パッケージを今までの平型から、コンパクトな筒型にしたのは、売り場でより多くの色を並べ、お客さまに選ぶ楽しさを味わってもらうためだという。
  お客さまが本当に求めているものは何か。売価は変えずに、いかにプラスアルファの快適性を提供できるか。取材の間、何度もお二人の口から出た言葉が、ヒラノ産業のモノづくりの姿勢を端的に表している。以下、お待ちかねの新商品のほか、多数の人気アイテムをご紹介する。百聞は一見に如かず。実際に一つでも試してみれば、彼らがどれほど真剣にユーザーの気持ちを考えているか、はっきりと具体的に実感できると思う。
 
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袖口と前開きのマチに注目!鮮やかな色遣いも◎