【丸五】機能オタクで何が悪いimage_maidoya3
商品企画の要諦とは何か?いきなり供給サイドの視点で話を始めてしまってすまないが、そりゃ、おそらくコンセプトを明確にすることだろう。まずユーザーの声を集める。こんなところが不満なんだけど。こんなのがあればいいんだけど。そんなさまざまな意見をサンプルとして収集し、長年の経験で培ったフィルターにかけて分類し、項目ごとに開発のアイデアに落とし込む。そうして蓄えたいくつものアイデアを組み合わせれば、特徴のある新商品がわりと簡単に出来上がる。世の中にはいろんな要望を持ったいろんなユーザーがいるから、そうやって機能を明確にした商品を多数取り揃えておけば、そのうちのどれかはそのひと固有の問題を解決してくれる、まさにドンピシャのアイテムとなる確率が高くなる。数うちゃ当たるでもないけれど、まず間違いのないやり方なのではなかろうか。
  丸五の新商品に出会うたび、いつもそんなイージーな、プロジェクトX的苦難の道とは無縁の、悪く言えばお手軽な、多少色を付けて持ち上げてみるとしてもコレクションマニア的な迷いのなさで作られている印象を強く受ける。それくらい頻繁に、楽々と新商品が出てくるのだ。もちろん、そうやって輪郭のはっきりした商品を次々とリリースできるのは、メーカーとしての総合的な実力があってのことなのだろうけど。
  先日、また例によって丸五の新商品の紹介を受けた。そのとき、丸五の担当者さんに向かって、皮肉交じりに上述の感想を漏らしたのが今回取材をすることになったきっかけである。まいど屋のぶしつけなコメントに対し、そうでもないんですよと、その担当者さんは苦笑して言った。「基本的にはおっしゃる通りの単純な話ではあるのですが、個々の案件に具体化させるのはなかなか難しく、ノウハウも必要なんです。まいど屋さんみたいな通販だって、誰でも簡単に始められるみたいに見えるけど、それなりにご苦労もあるんでしょ?」。まいど屋が苦労しているかどうかはさておき、難度の高い技を大したことがないような、素人でもできそうなものに錯覚させてしまうのが真のプロフェッショナルじゃないかということで意見が一致し、ならばと今回の新商品開発の舞台裏を聞かせてもらうことになったのだ。
  前フリが長くなったが、要するにこのレポートは、機能オタクとさえ呼びたくなる丸五の商品開発がいかに進められているかを描くことを目的とする。もちろん、供給側である丸五のそのような思考法について理解しておくことが、ユーザーである読者の皆さんがより的確な商品選びをするのに役立つと確信してのことだ。なんだか業界紙的な論評になる恐れもあるが、できるだけ噛み砕いて、読者の皆さんの利益となるように彼らの話を解説してみよう。
 

丸五
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Boaクロージャーシステムを説明する松野さん(左)と杉本さん(右)
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防雨安全スニーカー『370』の防水シートの位置を示す杉本さん
「ウチの商品開発って、いつも同じパターンで進んでいくんですよ。先日まいど屋さんが言ったように、モニターさんや販売店を通して、まずどこからかユーザーさんの声が聞こえてくる。特に何か目的を持ってリサーチをしているわけではないんですが、そうした現場感覚のカケラみたいなものが、不思議と集まってくるんです。それは既存の商品に対する希望であったり、不満であったり、いろいろなんですが、それをスタッフがよってたかって解決しようとアイデアを出し合い始めるんです。初めのころは面白がって、それこそ遊び感覚なのですが、どこかの時点で非公式なコンセンサスみたいなものが出来上がることがあるんです。これはモノになりそうだぞと。そうなると企画と営業を含めた社内全体にベクトルが生まれて何かわからないうちにそっちの方向に動き出す。気が付いたら新商品が出来上がっている」。丸五ではどんな風にして新商品のアイデアを出しているのか。まいど屋の改めての質問に、営業担当の松野さんはそう言って笑った。
  同席してくれた企画担当の杉本さんはそれを聞いて苦笑する。「そうそう。そうやってみんな気軽に商品化を考えちゃう。おかげでこっちは大変なんですよ。実際に形にしようと思ったら、技術的にクリアしなきゃいけない問題が細かなところでたくさん出てくるんだから。そんな苦労も知らず、いいアイデアでしょってねえ」。
  「でも、結局はちゃんと出来上がるじゃないですか」
  インタビューはそんな和やかな雰囲気で始まった。では、そうしたプロセスを経て生まれた商品とは一体どんなものなのか。具体例を挙げながら、紹介してもらおう。
  まずは最近出たばかりのBoaクロージャーシステム搭載『001マンダムセーフティー』から。Boaモデルは他社からも出ているが、丸五のはダイヤルがセンターではなく、上部横に付いているのが特徴だ。「誰かがウチもBoaをやろうって言い出したんです。それで試作してみると、どうも思ったほどしっくりこない。なんか違うなぁって。いろいろ試して、結局、センターに置くとダイヤルが邪魔して締まりが悪くなるので、横にずらしました。Boaシステムは均一に締まると言われますが、メッシュを多く使うと上部は締まってもサイドが伸びて緩くなるなど、素材の組み合わせやデザインが難しいんです」(設計・杉本)。
  このモデルのためにラスト(木製足型)を新調し、オブリーグという全体的に広い先芯を採用。前が広い分、カカトを絞ってフィット性を高めている。「丸五ならではの足袋の発想です。足袋はハセで留めて、カカトをピシッとキメるでしょ。『001』もカカトぴったりでワイヤーで締めるから足がしっかりホールドされ、指先が自由になる」(営業・松野)。
  Boaモデルに対し、フィット感を違う切り口でアプローチしたのが『731マンダムセーフティー』だ。日本人の6割を占める“親指が長い足”に対応したスクエア先芯と、ゆったり目のラストでジャパン・フィットを謳っている。「安全靴を履く人は、先芯に指が当たって痛いというひとが多いんです。私の足もこのタイプ。で、みんなでいろいろ話していると、日本人の足はちょっと特殊なんじゃないかと。それで出てきた答えがジャパン・フィット。普通の安全スニーカーを履くと親指が当たってしまうけど、『731』はぜ~んぜん。めちゃラクです」(営業・松野)。
  『741』はこのマジックタイプで、ベルトを内と外から互い違いに掛けるようになっている。「交互ベルトはトライアスロンシューズをヒントにしたもので、屋根用作業靴『屋根やくん』でも好評です。片側だけで締めると偏りが出て、締め幅も限られますが、交互締めにすると紐に近いフィット感が得られるんです」(設計・杉本)。
  さてお次は、ちょっと変わったところで、女性モデル『メダリオンセーフティー』のミッドカット『508』について。「物流系の職種で台車に足首をぶつけるケースがあると聞き、女性の足首を守るために開発しました」(営業・松野)。
  これまでメンズばかり見てきたせいか、とても小ぶりですっきりスマート。つま先がキュンと上がった感じがカワイイ。「メンズのようなデザインにすると、凝縮感が出てごちゃごちゃするので、シンプルにして配色にこだわりました。ソールは必要最低限の部分にラバーを貼り、片足260gとローカット『507』と変わらない軽さにしました。また、ミッドカットは脱着しにくいので、履き口を下げて足入れを良くしています」(設計・杉本)。
  通常、女性モデルは開発コストを節約するためにメンズモデルを縮小して作られるが、丸五では女性専用のラストを作って商品化。そのこだわりは履き心地に表れ、先行発売のローカット『507』の使用感アンケートで、多くの女性から「満足」という回答を得ているのだという。
  最後は、「何じゃこりゃ?」で始まり、「でも、いいね!」に落ち着く『370マンダムセーフティーHigh』。4月に出たばかりのブーツタイプの防雨安全スニーカーだ。「安全スニーカーを長靴代わりに、がコンセプト。ゴム長はカカトがガバガバして1日履いているとふくらはぎが疲れちゃうでしょう。ならば、どうにかストレスなく過ごす方法はないものかと。『370』は安全スニーカーがベースなので長時間履いても疲れにくい。しかも、JSAA A種適合です」(営業・松野)。
  「地面から18cmのところまで防水フィルムを入れています。本物の長靴ではないので水の中にズボッと浸かってしまうのはNGですが、水がかかっても浸透しにくくなっています」(設計・杉本)。
  重さは長靴の半分程度。早い話、安全スニーカーに長めの立ち上がりが付いた感じなので足にしっかりフィットし、クッション性があって衝撃吸収性に優れている。「ふだん安全スニーカーを履いている方で、雨が降った時、水たまりやぬかるみがある時などにオススメです。職種でいえば警備や駐車場の誘導など。ガッツリ土木系には向きませんが、お手伝い程度なら大丈夫ですよ」(営業・松野)。
  とまあ、インタビューはこんな調子で進んでいったのだが、その他説明してもらった商品の開発経緯も、大体似たような様子だったので、後は省略する。要は松野さんが最初に言った通り、誰かが何かの課題を見つけると、丸五の社内がワイワイガヤガヤ、みんなで一緒になって解決策を見つけようとし始めるのだ。そこには伝統ある会社の真面目さというよりは、学生のサークルに近いフットワークの軽さのようなものがあるように思われる。本文中で紹介したアイテム同様、出来上がった商品は、いずれも個性的で他に類を見ないものであるから、興味のある方は以下で確認してみてください。松野さんと杉本さんがどんなやり取りをしながら商品化にこぎつけたのか、想像するだけで結構面白いですよ。
 
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ゴム引き軍手の新商品『黒万年』も、社内のアイデアから誕生した (今回の特集テーマから外れるのでレポート本文では紹介していませんが、まいど屋の消耗品/ゴム引き手袋コーナーで販売中!)
 

    

これは長靴なのか?それとも俺たちが知らない未知の何かなのか?ありえない軽量性にクッション性とフィット感をプラスした革命的シューズ、370マンダムセーフティーHigh

安全スニーカーを長靴形状にしたら、雨の日の仕事がグッと快適に!フィット感が良くてクッション性があって長時間履いても疲れにくいブーツタイプの防雨安全スニーカー。長靴の半分の軽さで、地面から18cmまで防水フィルムを内蔵し、雨や水ハネをシャットアウト。水深4cmで4時間(静止状態)の防水性能があり、浅い水たまりやぬかるみでの作業にも対応。アッパーは合成皮革。ゆったり4E、樹脂先芯のJSAA A種適合品。


ガテンな仕事をしてたって、女子はやっぱりカワイイが一番!現場の男子が思わず胸キュンする女子専用安全スニーカー、メダリオンシリーズ

シンプルデザインとキュンと上がったつま先がカワイイ、女子専用の足型で作った安全スニーカー。樹脂製先芯、EVAミッドソールのクッション性とカカト衝撃吸収、必要な部分のみに配したラバーのグリップ力により、長時間でも疲れにくい履き心地を実現。ミッドカットもローカットも片足260g(23.5cm)と超軽量。アッパーは合皮とメッシュ。サイズ22.5~25.0cm。