【(株)開邦工業】民事再生から復活。環境プラントで離島を支えるimage_maidoya3
四方を海に囲まれた島国、日本。「本土」と呼ばれる5島を除けば島の数は6852島、このうち有人島は、なんと418島にも上る。
   いくら人の少ない離島であろうと、人間が住んでいる限りゴミは必ず出る。資源はリサイクルしなければいけないし、下水も処理しなくてはならない。規模は小さくても、本土と同じように島にも廃棄物を処理する設備が必要なのだ。
   そこで出番となるのが、離島向けのプラントメーカー・開邦工業である。
   沖縄県うるま市に本社を構える同社は1979年創業。県内の有人離島の数は49島と、島だらけの沖縄県で自治体向けに都市ごみ用の焼却炉や火葬炉を製造・販売してきた。
   同社の強みは、自社で何でもやってしまうことだ。設計から取り付け工事、メンテナンスはもちろん、プラントの運転管理もする。業界では焼却炉メーカーとして通っている一方で、ペットボトルの圧縮機、タンスの破砕機といったリサイクル設備も製造。さらには水処理のプラントまで作っている。
  「簡単に言えば、モノを燃やしたり、水を処理したりする機械屋です」
   と会社について語るのは2代目社長の玉寄将(たまよせ・つよし)氏だ。
   じつは同社は15年前の2013年、民事再生法の適用を受けている。玉寄社長は2007年、どん底に落ちた開邦工業を再建するためにマグロ漁船を降りて家業を継いだ。
   当時の開邦工業は、焼却炉を作っていた技術者の大半が去った後だった。会社に残ったのは、他に行き場のない人ばかり。それでも社長は「ズブの素人」として家業に取り組み、困難な経営再建に取り組んできた。
   約10年に及ぶ悪戦苦闘の結果、今や同社は東京都の離島で都市ごみ焼却プラントを受注するなど、息を吹き返すまでになっている。
   どん底から這い上がった経験から語られるのは、意外にもユニフォームの重要性。離島という独特のエリアで、どんなふうにワークウェアを着こなしているのか?
 

(株)開邦工業
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先代社長のころから使っている綿100%作業服
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玉寄社長(左)と社員
●離島に火葬場を作る
 
   開邦工業はこの2月に設立39年を迎える。これまで渡嘉敷島(那覇市の西方40kmに位置。人口約750人)や南北の大東島(沖縄本島の東300kmにある。人口は両島で約2000人)など、県内の離島を中心に、自社設計の焼却炉を販売してきた。
   近年はバグフィルター(ダイオキシン類を含む粉塵を除去するための装置)など、高性能のわりに低価格な商品が評価され、沖縄だけでなく、関東の自治体にも商品を納めるようになった。そのため東京支社は今や売り上げの半分を担うまでに成長している。
   玉寄社長は、数あるプラントメーカーの中で自社の特徴を次のように語る。
  「どこの傘下にも入らない独立系メーカーなので、リーズナブルな製品を自由に企画開発できるのが強み。サービスも顧客の要望によって臨機応変に展開しています」
  「離島」とひとくちに言っても置かれた状況はさまざまだ。だから、リクエストに応じて何でも作ってくれる同社のようなプラントメーカーが求められるのである。
   取材に訪れた日、同社では久米島(那覇市の西方100kmに位置。人口約8000人)に設置予定の火葬炉を制作していた。
   火葬場も人が住む以上は不可欠な施設。だが、ごみ処理場や汚水処理場と同じように「必要なのはわかるけれど、ウチの近所には作らないでほしい」と言われるのが世の常だ。
   そこで、そんな「迷惑施設」のイメージを払拭するのも同社の仕事となる。
  「ゴミの焼却炉と違って、火葬場にはダイオキシン類の測定義務はありません。しかし今の世の中では、煙が出たり臭いが出ると評判が悪くなってしまうので、当社はバグフィルター(集塵機)を付けることにしています。これによって、煙突も要らなくなるし、排気口からも水蒸気が出るだけでの臭いもゼロになるわけです」(玉寄社長)
   火葬場の建物自体も、近年はコンサートホールのような外観になり、パッと見ただけではわからないようにできているという。
   今の時代のプラントには、臭気や排煙をカットするのはもちろん、誰もがプラントだと思わないような外観も求められているのだ。
 
  ●3種類の作業服
 
   そんな同社では作業内容に応じて、次のように、素材の違う3種類のユニフォームを使い分けている。色はすべてコーポレートカラーのグリーン系だ。
 
  ①綿100%の作業服……先代社長の時代から受け継がれているユニフォーム。火花が飛んでも生地が溶けないので、溶接作業には不可欠。
 
  ②「ビッグボーン」のポリエステル80%・綿20%作業服……プラントの運転管理業務が増え、軽くて動きやすいウェアを求める声があったため2009年に採用した。ちなみに現在では社員85人のうち約50人が運転管理に携わっている。
 
  ③「バートル」のポリエステル65%・綿35%(型番6021)作業服……営業課長の奥さんが作業服店を営んでおり「②と似たような素材でいいのがあるよ」と持ってきてくれたという。「営業課長から買えることもあって今はこっちが主流です」(玉寄社長)。
 
   これら3種類のウェアは作業や気候に応じて使い分ける。
   たとえば、作業場の見学時、火葬炉に耐熱タイルを取り付けていた社員が着ていた作業服は「上=ポリエステル混綿/下=綿」という組み合わせだった。
  「溶接をするので、綿でないとすぐ穴が開いてしまうんです」
   気になっている点はウェアが明るい色のため、汚れが目立つことだという。
   一方、現場監督の課長は、気候に応じてポリエステル混と綿を使い分けている。
  「夏は綿100%のほうがいいですね。いくら暑くても、作業着はきちんと着てないと危険ですから、そこだけは非常に気を付けています」
   ほかにもプラントメーカーらしい装備として、防塵服や空調服がある。
   バグフィルターを取り替えたり、焼却炉の中に入るときには、粉塵が服の中に入らないようにするため、ツナギの上にデュポン製の防護服を重ね着する。さらに、高温の現場ではファン付きのヘルメットや空調服を身につけるケースもあるという。
   これらの作業服は希望に応じて年1着を貸与。ベテラン社員の場合、破れたり擦り切れたりしない限り、状態のいいウェアをたくさん抱えていることもある。そのため退職者から返還されたウェアは、リクエストがあれば新入社員に渡している。
   こんなふうに作業服のリユース(再利用)ができるのも「ネーム入れ」が各自の自由だからだ。
  「下水処理場や浄水場では名札を付ける規則があり、つけ忘れを避けるためにネームを入れる社員もいる。一方で、ウェアを後輩に譲るために、あえてネームを入れない社員もいますよ」(玉寄社長)
   いかにも環境機器メーカーらしいエピソードといえるだろう。
 
  ●島の人たちは見ている
 
   このように作業服の選定から着こなしまで神経を注ぐ開邦工業だが、最初からそうではなかった。
   そもそも社長自身、当初はワークウェアの意義がわからず、ラフな格好で仕事をしていたという。
   そんな雰囲気は社員にも伝わるもの。ある日、移動中だった若い社員が半ズボンのまま離島を訪れたとき、そこにいた協力会社の社員から、こんなふうにからかわれた。
  「ビーチパーティーに来たの?」
   この一件がきっかけとなり、同社では、各自が移動中に着るため状態のいい作業服をキープしておくようになった。
  「『誰も見てないからいいんだよ』と言ったりするけれど、島の人はちゃんと見ています。それに実際、社員がちゃんとした格好で働いている会社は利益を上げている」(玉寄社長)
   きちんとしたウェアを選ぶだけでなく、作業服の着こなしの大切さも「経験を重ねる中で、身に染みてわかってきた」と玉寄社長はしみじみ語る。
  「会社の状態は、作業服の着こなしひとつにも表れるものなんです。社員教育が行き届いている会社は、作業服もビシッと着こなしていて、参りました! という感じ。反対にゆるい会社は見た目もだらしなくて、いくら『仕事はきちんとやる』と言っても説得力がない。当社もかつては『腕さえよければ恰好なんてどうでもいいよ』という社員が多かったけれど、それじゃあダメなんです。それでは発注レベルの高い(単価の高い)お客さまから声をかけてもらえない。このことに、みんな少しずつ気がつき始めたようです」(同)
   ユニフォームから社員の意識を変えようという試みは、少しずつ成果が表れようとしている。
 
  ●「事故だけは許さない」
 
   身だしなみに気を付けるのは、商売上で有利だからだけではない。やはり最大の目的は安全。プラントを作って設置し、運転するという同社の業務自体が、危険と隣り合わせのものだからだ。
   だから玉木社長は新人に対して「事故だけは許さん!」と厳しく伝えることにしている。
  「若い人は何か目指すところがあって会社に入ってきたはずなのに、ケガしちゃったら何しに来たのかわからないでしょう。僕らも何のために採用したのか、やるせない気持ちになる」(同)
   当然だが、事故を防ぐのに「これさえやっておけば大丈夫」というものはない。ユニフォームをきっちり着ることだけでなく、あいさつ、現場の整理整頓、ラジオ体操など、小さなことの積み重ねで、社員の安全意識を高め、それを維持することでしか無事故は達成できない。
   作業服に関しては少しずつ浸透してきたものの、まだまだと感じている分野も多いという。
  「ラジオ体操をちゃんとやろう、と言っても『なんでや?』みたいな感じで、わかってもらえないことがあるんです。僕が口を酸っぱくして言うより他の人が言った方がいいケースもあるので、代わりに言ってもらったりしています」
   努力の成果は少しずつ表れている。
   2013年、同社は無災害日5400日を達成。中央労働災害防止協会から表彰を受けた。15年近く安全を守り続けたことになる。ところが、この記録は草刈り作業中に起きた手首の骨折事故でストップしてしまったという。
  「どこかに慢心があったのかなぁ……」(同)
   そんな反省を踏まえつつ、いま玉寄社長は、プラントメーカーとして会社のステージを上げることを目指している。
  「会社というのは社員全員で動かしていくもの。いきなりのレベルアップは無理なんです。やはり社長を先頭にして、徐々にレベルを上げていかなければ。そうなると、ついていけない人は辞めていくし、逆にレベルの高い人も僕らでは扱いきれなくて辞めていく。悔しいけどね」(同)
   民事再生というマイナスからプラスに転じ、ようやく軌道に乗り始めた同社。これからどんな成長を遂げるのか楽しみだ。
 
 
  株式会社 開邦工業
  〒904-2234沖縄県うるま市字州崎7-19
  TEL 098-934-2811
 
  ホームページ
  http://www.kaiho-k.co.jp/
 
  カイホウおまかせサポート
  http://kaiho-omakase.com/
 
 
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火葬炉を見せてくれた現場監督
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工場と本社

    

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