【KAZEN】新素材登場! もっと「疲れにくい服」へimage_maidoya3
「カゼン」とは聞きなれない言葉である。広辞苑で引いてみると「可染(かぜん)」は古い言葉で「銀色」のこと。2014年10月、同社の白衣ブランドは「アプロン」から「KAZEN」に生まれ変わった。ウェブサイトによると、このネーミングは昭和27年に白衣をつくることからスタートした同社の歴史を踏まえ、「白銀のように、白が輝いた時の美しさを表現」しているという。
   先ほど訪れたフォークは、カラースクラブを引っ提げて新規参入したメーカーなのに対し、こちらはドクターコートやナース服など、昔からおなじみのウェアを作ってきた「ザ・白衣メーカー」だ。
   とはいうものの、長く親しまれたブランドをリニューアルしたばかりというからには、きっと何か新しい"仕掛け"を用意しているに違いない。
   衣料の街として有名な東京・馬喰町。問屋街から歩いてすぐのカゼン本社で、2018年ラインナップについて聞いた。
 

KAZEN
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新素材「LIEN」を使ったスクラブ981-43
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動きやすいニットスクラブ983-15
●2018年の目玉は「LIEN」
 
   カゼンの会議室。目の前には分厚くて重い2018年カタログがある。冒頭のページをめくりながら、おずおずと質問する。
  「えーっと、これがカゼンの春夏もの新商品でしょうか?」
   こう言った編集部に対し、営業部係長の加藤裕章さんは小学校の先生のような優しい笑みを浮かべた。
  「フフフ、白衣はユニフォーム業界の中でもちょっと特殊なんですよ。病院の中は空調が効いてるもんですから。基本的に季節ものはないんです。カゼンではメディカルのほか、飲食サービス、フード工場、介護などのジャンルごとに毎年カタログを作っています」
   なるほど、季節モデルがないというのは非常にわかりやすい。では、カゼンが打ち出す2018年もののメインとは?
  「なんといってもLIEN(リアン)でしょう。カゼンの2018年メディカルの目玉は新素材『LIEN』を使った看護衣シリーズです」
   ここで加藤さんの隣の女性が、LIENの解説をしてくれることになった。「着る側」から「作る側」に転身した元ナース、商品企画室の岸本真紀子さんである。
   説明をまとめると、LIENは素材・原料メーカー共同開発した、ものすごく高機能な生地。軽くて、ストレッチ性があり、工業洗濯もへっちゃらの耐久性がある。吸汗するのに下着の透けもなく、静電気のパチパチも起きない。制菌加工のSEKマーク(赤)も付いている。
   この素材を、患者の抱え上げ、点滴のセッティングなど、看護師の筋肉や皮膚の動きを分析した上で「動体裁断」。動きやすく、長時間着ていても疲れにくい看護衣を実現した。
   これだけ聞くと、スペックばかり追求しているように思うかもしれないが、そうでもない。
   機能は追求する一方で、パーツをできるだけ少なくして、コストを削減したという。パーツが多いとコストがかさむだけでなく、縫込みが多くなるので「ほつれ」などの洗濯トラブルも起きる。縫製は3、4年の使用に耐えるものになっている。
  「私もナース時代、自腹で看護衣を買っていました。病院から支給されるウェアの枚数では足りないので。こんな事情もあって、看護衣の価格はすごく大事なんです」(岸本さん)
   こうして完成したLIENの看護衣は、機能的でありながら華のある見た目。カラーも豊富だ。
  「新商品って高リスクなんですよね。やっぱり売れないものも出てくるし。でも今回のLIENは出足からものすごく好評で、サンプルの取り寄せも多い。この良さを分かってもらうには、とにかく着てもらうのが一番だと思います」(加藤さん)
   自信のほどがうかがえる言葉だ。
 
  ●見えないところも妥協せず
 
   さらに2018年カタログから商品を見ていこう。
   加藤さんがイチオシするのは、診察衣KZN127(レディース)、KZN113(メンズ)だ。
   このドクターコートのウリは「ストレッチセンサー素材」という食品加工用ウェアの生地を使っていること。異物混入にデリケートな食品工場で使われているポリエチレン生地だけあって、毛羽立ちなどがほとんど起きない。それでいて、吸汗性・速乾性・ストレッチ性に優れている。
  「食品工場で好評だからメディカルでも使ってみよう、というわけでドクターコートにしてみました。軽くて伸びるので長時間着ていても疲れにくいのが特長です。デザインはシングル・ハーフ丈と、今の主流に合わせています。しゃがんでも裾が床につかないだけでなく、座っての仕事もしやすく、歩くときの足さばきもいい。というわけで、短めの丈がウケています」(加藤さん)
   一見、なんの変哲もない白衣に見えるものの、実際に着てみると軽さに驚いた。着丈やシルエットからは若々しく活気のあるイメージを受ける。
   続いて、加藤さんが隠れた名品としてオススメするのが型番「133」のスクラブだ。これもごく普通のカラースクラブのようだが……。
  「スクラブって、作る側としては全然おもしろくないんですよね……どれも形は一緒だし。でも、この『133』は、見えないところのこだわりがすごい。ほら(とスクラブを裏返す)、ロックミシンじゃなくて伏せ縫いしているでしょ。それに生地の端はバイアステープで始末してある。派手さはないけれど、ユニフォームとしてのスペックは高い。それでいて無駄を省いて低価格に抑えてある。おかげさまでロングセラーとなっています」
   パッと見は普通で他社と同じもののようだが、じつは高品質。同社のウェアを象徴するようなスクラブだ。
 
  ●「本当に着たい診察衣」とは?
 
   このように価格を抑えた商品がある一方で、同社には高級路線もある。25年前から手がけている渡辺雪三郎デザインの白衣シリーズだ。
   これまでは、基幹ラインの「YUKISABURO WATANABE」と「PRATIQUE(プラティーク)」との2ラインで展開していたが、2018年から第3のライン「MODA MEDICA(モーダ・メディカ)」をスタートさせた。
   KAZENウェブサイトのトップにもドーンと登場している同社の「顔」と言える白衣である。
   この新機軸の狙いについて、担当の石井さんは次のように語る。
  「美やエレガンスを追求した『YUKISABURO WATANABE』に対して、機能性を重視しつつフェミニン寄りにしたのが『PRATIQUE』。今回の『MODA MEDICA』はそこからさらにクールなデザインを追求しました。『YW114』のラインを採り入れた直線的なデザインは、現場の緊張感を表しています」
   言われてみれば、確かに「PRATIQUE」にはかわいらしさを感じるのに対して、「MODA MEDICA」からは、より知的で洗練された印象を受ける。とがったデザインでありながら、優しい雰囲気もまとっており、やや不思議な感じだ。
   では、この「MODA MEDICA」は一体どんな意図で、どういうユーザー向けに開発したのだろうか。
  「他社でも高級診察衣が人気を集めているという背景があります。会社員がスーツを買うとき、いいものを着たい人はテーラーで作ってもらいますね。アレと一緒で、医師もいいものを着たい人がいるわけです。そこで今回は『医師が本当に着たい診察衣』というテーマで作ってみました」
   スクラブの普及をはじめ、医療用ウェアは「見た目の立派さより機能性、リラックスした雰囲気」の時代になったのかと思えば、そうとも言いきれないようだ。いくら和やかな雰囲気を出していても、やはり医者は権威のある仕事。シーンによってはこのような存在感のある白衣が求められる。
   緊張があるから緩和があり、緩和があるから緊張がある――。医療用ウェアの奥深さが身に染みる取材となった。
 
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通常の始末とバイアステープ始末(右)
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丁寧な「伏せ縫い」も魅力

    

新素材「LIEN」採用で最上級の疲れにくさを実現!動いているときが最も美しく見える動体裁断モデル

新開発の素材を使ったアクティブでスタイリッシュなナースウェア。メディカルウェア業界で初めて動体裁断を採用。動けば動くほどストレスフリーを体感できる。底のないスルーポケット仕様、鍵などの落下を防ぐダブルループ、ポーチのひも類をまとめられるウエストループなど、忙しいナースのための機能が満載。ハイスペックな生地を使いつつも、生産工程の無駄を省いてこの価格を実現した。


人気の「YUKISABURO WATANABE」に新ラインが登場!「MODA MEDICA」でクール&モードに決めろ!

四半世紀の歴史を持つカゼンの白衣ブランド「YUKISABURO WATANABE」に新ライン「MODA MEDICA」が登場。エレガントでありながら、ムダを省いたシンプルなデザイン。現場の緊張感を表す直線は、相手にフェミニンかつクールな印象を与える。ドクターコートは「医師が本当に着たい診察衣」をテーマに開発。スクラブ、パンツともにシルエットの美しさを追求した。