【桑和】カジュアル路線へ さらに前進!image_maidoya3
「国産ジーンズの街」として知られる倉敷市・児島――。
   別段ファッションに興味があるわけではない編集部でも、「岡山ジーンズ」のブランドは知っていた。ただ、こだわりのジーンズなんて自分には必要ないし、わざわざ見に行くほどでもないだろう、と。ずっとそう思っていた。
   ところが、である。新作の春夏モデル作業服の話を聞かせてくれるという「桑和」を地図で調べてみると、なんとズバリ児島なのだ。住所としては倉敷市だから、もっと旅館なんかが立ち並ぶしっぽりした街だと思っていたのに(大阪人の倉敷に対するイメージ)。
   しかし、でも見方を変えればこれはすごくおもしろい。ジーンズの街、児島に作業服の人気メーカーを訪ねるなんてすごくクールじゃないか。ジーンズはもともと作業服なわけで、岡山ジーンズを買いに来た観光客より、月刊・まいど屋の方が、ずっと児島という街の本質に迫れるわけなのだ。
   岡山から瀬戸大橋線・高松行きの「マリンライナー」に乗り、意気揚々と児島の駅に降り立つ――うわ、駅サインが「JEANS STATION」になってる! それになんだ? ジーンズのエレベーターに、ジーンズの階段、ジーンズの改札機! 空にはジーンズがはためき、道路にはジーンズのバスが走る。目に入るものすべてジーンズだらけ!
   い、いや落ち着け、ここでジーンズに洗脳されてはいけない。今日は作業服の取材に来たのだ……、とタクシーを止めて桑和に向かう。さすがにタクシーはジーンズではなかった、が、運が良ければジーンズラッピングのクルマに乗れることをドライバーに聞かされる。
  「もうジーンズはいい、もういいから……」
   作業服の話を求めて、桑和の門をくぐった。
 

桑和
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ジーンズソムリエの資格も持つ後藤さん
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「飾り」のタックボタンの内側にスナップボタンがある「583長袖ブルゾン」
●デザイン重視の「G.GROUND」
 
   話を聞かせてくれたのは、生産部企画課の後藤大輔さん。アパレル業界から桑和に転職してきた若手社員だ。
   もらった名刺をよく見ると名前の下に「ジーンズソムリエ」の文字が。ここでもジーンズに出会うとは、と思いつつ、この肩書について聞いてみる。
  「ああ、これは『ジーンズ検定』に合格したら名乗れるんですよ。僕を含めたうちの社員4人と専務で受験しました。ジーンズの歴史や縫製技術などに関する試験があるんですけど、しっかり勉強したおかげで、全員合格でした」
   生まれも育ちも倉敷の後藤さん曰く、児島は古くから「繊維と縫製の街」。その結果として、ジーンズ、学生服、作業服といった特産品が生まれてきたという。つまり、桑和の作業服と岡山ジーンズとは兄弟のような関係なのである。
   そんな桑和は今年、創業50周年を迎えた。会社の入り口には、感謝を伝えるポスターや取引先から贈られた花が並んでいる。児島の地場産業から生まれ、半世紀の歴史を持つ作業服メーカー。その商品の特色をひとことで言い表すなら、どうなるだろうか。
  「何でもある総合ユニフォームメーカー、という感じですね。昔からずっと作業服ひとすじで、ツナギや鳶服、ベルトなどの小物類まで幅広く扱っています。販路も、店舗に並ぶものから業者に納品するものまで、さまざまです」
   後藤さんが主に手掛けているのは商品開発。定番商品である昔ながらの作業服に加えて、最近は特に若者にウケるカジュアルなワークウェアの開発が求められているという。
   この「カジュアル路線」を開拓するためのブランドが「G.GROUND」である。
  「G.GROUNDは、うちのカジュアルワーキング路線の基軸ブランド。店舗での個人買いをターゲットに『かっこよくて機能性のあるワークウェア』というコンセプトで開発しています。若い人に好まれる細身のシルエットで、デザイン性も高め。ストレッチ素材を使った製品が多いのもこのブランドの強みです。『定番モノは桑和で買うけれど、イケてる服は他で買う』と言われたりする状況は悔しいので、これから挽回していきたいと思っています」
 
  ●新ブランド「SOWA」誕生
 
   現在、同社ではブランドの整理を進めている。その主軸となるのが、創業50周年を記念してスタートした「SOWA」である。今後、乱立気味のブランドはSOWAへの統合を進め、次の3ブランドを柱にしていきたい考えだ。
 
  1:G.GROUND(カジュアル)
  2:BULL WORKS(低価格)
  3:SOWA(納品向け)
 
  「G.GROUNDが『カッコよさで勝負』なら、第2のブランド・BULL WORKSは『価格で勝負』。作ってから価格を決めるのではなく、始めに価格ありき、です。まずお客さんが買いやすい価格を決めて、その範囲で収まるように商品を開発しています。コストの縛りがあるのでデザイン性を高くしたりはできないのですが、価格が支持されてよく売れています」
   一方、第3のブランドSOWAはカジュアル路線からやや距離を置く。
  「第3のブランドSOWAの路線は『会社のユニフォーム』です。個人買いより事業所に納品することを考えて、カラーは多色展開。サイズもレディース対応し、ユニフォームとして導入しやすくしています。それでいてYKKのファスナーや野帳の入るポケットなど、作業服としてのクオリティも高い、というのがウリですね」
   カジュアルから昔ながらの作業服まで「何でもある」という桑和の特徴は「強み」であるものの、買う側からすると「どう選べばいいのかわからない」という面もある。
   今回のブランド整理は、買う側、そして店舗にとってもうれしいニュースと言えそうだ。
 
  ●「やりすぎ?」がヒットの秘訣
 
   では、ここで後藤さんに今シーズン春夏作業服のイチオシを聞いていこう。
   まずは、同社「カジュアル路線」を担うG.GROUNDから、ストレッチ素材を採用した立体裁断モデル「543長袖ブルゾン」「545長袖シャツ」である。
   やや細身のシルエットに、左右非対称のポケット、デザイン上のアクセントとしてあえて残したステッチ――。一見するとカジュアル系の服だが、引き裂きに強いリップストップ生地を使うなど、作業服としての耐久性も兼ね備えている。対応する「548カーゴパンツ」と合わせると、さらにワイルドかつクールな印象だ。
   さらに、後藤さんが「ぜひ現物を見てほしい」と語るのが、同じくG.GROUNDの「583長袖ブルゾン」と「588カーゴパンツ」。デニム素材でジージャンのような見た目ながら、生地は7オンスと薄手で涼しく、ストレッチ性もある。デザイン面では、ジーンズ的なルックスにするため、使用しないタックボタンやボタン穴などをわざわざ付けている。並々ならぬ凝り様だ。
  「自分でも、やりすぎじゃないか? と思うこともあるんですが、こういうデザイン重視のもの方が売れる、というのは確かにあるんです。特に関西では、カッコイイもの、目立つものが好まれるという事情もあって、うちの営業からは『もっと派手なのヤツ作ってよ』といつも言われています。派手すぎるくらいじゃないと、なかなかショップに並べてもらえないようで……」
   関西の職人は派手好み――。どこかマンガみたいな話だが、地方によって好まれる"味"というのは確実にあるという。
  「うちは九州での販売も多いんですが、九州ではアメカジっぽいデザインが好まれます。こういった傾向の関西・九州に比べると、関東は昔ながらの定番モデルの支持が厚い。だから低価格な鳶服やツナギといった長く売れるもの着実に作り続けながら、耐久性のあるコーデュラナイロンや動きやすいストレッチ素材などを採り入れたカジュアル作業服も作る、という感じです」
   ギラギラした"ヤンチャ系"のワークウェアについても「個人的な好みはさておき、勉強しています」と語る後藤さん。ワークウェアの企画にもデザイン的な研究が不可欠な時代になったのだ。
 
  ●"メーカーのエゴ"を超えて
 
   好調なカジュアルワーキング路線は、これからの「伸び」も最も期待されている分野。ただ一方で、作り手としての悩みもあるという。
  「従来の作業服と比べると、やはりカジュアルは流行り廃りがすごく激しい。初年、2年目はバーッと売れたとしても、その次の年にはもう売れなくなったりするんです。だからどうしても2、3年で廃番にして、またすぐ新しいのを出さなきゃいけない。一方、昔ながらの作業服だったら同じモデルが10年くらい安定して売れ続けたわけで……。長い目で見ると、どっちがいいのかな? という気持ちも正直あります」
   同社に限らず「カジュアル」と「ワーク」のバランスは難しい課題だろう。
   さらに、カジュアル作業服を強化するなかでこれからのテーマと捉えているのが、エンドユーザーの声だ。
  「たとえばデザインに切り返しを入れるとカッコよくなるとします。しかし一方、そのせいで価格が上がるという面もあるわけです。こういう場合にメーカーのエゴが出ないようにしないといけないな、と。『もっとカッコいいのを』という販売店の意見も大事だけれど、ウェアを買って着るユーザーの意見をもっと聞かなきゃいけないなと感じています」
   ハイスペックでデザイン性の高いものを作りたいメーカーに対し、顧客は「低価格でそこそこのもの」を求める。これは家電や車などの業界でもよくある悩ましい構図だ。
   それでも、カジュアル路線ウェアのデザイン上の工夫について語ってくれたときの後藤さんは、とても生き生きとしていたのだった。
 
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デザイン性がウリの「873長袖ブルゾン」
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963長袖ブルゾン。低価格でもペン差しなどの機能は妥協なし

    

「機能」に加えて「見た目」にもこだわるあなたに!これまでとひと味違う"デザイン系"ワークウェア誕生!

ストレッチ素材を使い、左右非対称のポケット、ステッチワークなどでデザイン性を高めた作業服。上着としても使える長袖ブルゾン(543)、裾をインできる長袖シャツ(545)に、同色のカーゴパンツ(548)を用意。パンツはストレッチに加えて立体裁断「バナナカット」でヒザのつっぱり感なし。綿98%・ポリウレタン2%のやさしい着心地もうれしい。


見た目は"ジージャン" なのに軽くて動きやすい!この「涼しいデニム」で夏を乗り切れ!

夏用に7オンスの薄手生地を使ったデニム風ワークウェア。綿74%・ポリエステル24%にポリウレタン2%を加え、ストレッチ性もバツグン。ポケットはペン差しなど作業服の機能を残した一方、見た目はジージャンを目指した。「飾り」としてあしらわれたポケットやタックボタンなど、デザイン上の工夫もユニーク。カラーはブルーブラックのみ。