「三段鳶」というネーミングの由来については諸説ある。
かつて存在していた一段鳶・二段鳶から生まれたという「後継ブランド説」、鳶が貧乏せずおカネに算段がつくようにとの願いを込めた「語呂合わせ説」、そして、ホップ・ステップ・ジャンプでおなじみの「三段跳び」のように華麗に跳躍してほしいという「そのまま説」……すいません、初めの二説は編集部の考えたフィクションです。
と、こんな話で始まった理由は、シンメンの誇る鳶ブランド「三段鳶」がなくなるという情報が編集部に入ってきたからだ。ごぞんじの通り、超超ロング、超超超ロングといった特殊用語でおなじみだった鳶装束も今や下火。すでに関西ではカジュアルワークウェアが普通になり、主なターゲットだった関東でもコテコテの鳶ズボンを着る人は減ってきている。
こんな状況では、メーカーが撤退しても不思議ではない……。しかし、もし三段鳶がなくなるなら、鳶衣装の行く末を左右しかねない大きな事件だ。
真偽を確かめるべく、月刊まいど屋・編集部はシンメン本社を訪ねた。
かつて存在していた一段鳶・二段鳶から生まれたという「後継ブランド説」、鳶が貧乏せずおカネに算段がつくようにとの願いを込めた「語呂合わせ説」、そして、ホップ・ステップ・ジャンプでおなじみの「三段跳び」のように華麗に跳躍してほしいという「そのまま説」……すいません、初めの二説は編集部の考えたフィクションです。
と、こんな話で始まった理由は、シンメンの誇る鳶ブランド「三段鳶」がなくなるという情報が編集部に入ってきたからだ。ごぞんじの通り、超超ロング、超超超ロングといった特殊用語でおなじみだった鳶装束も今や下火。すでに関西ではカジュアルワークウェアが普通になり、主なターゲットだった関東でもコテコテの鳶ズボンを着る人は減ってきている。
こんな状況では、メーカーが撤退しても不思議ではない……。しかし、もし三段鳶がなくなるなら、鳶衣装の行く末を左右しかねない大きな事件だ。
真偽を確かめるべく、月刊まいど屋・編集部はシンメン本社を訪ねた。
シンメン
新市駅すぐのシンメン本社
羽原さん(営業部)オススメの鳶用レインウェア
●鳶カテゴリの市場は崩壊
なにはさておき、まずは「三段鳶」について公式見解を聞いておかねばなるまい。
三段鳶はなくなるのか? シンメン営業本部の副本部長、商品企画・生産管理部を務める平康太朗さんは「誤解のないように」と念を押した上で、次の3点を語った。
1:鳶カテゴリの商品は4、5年前まで大きな市場があったが、ここ数年で需要が一気に落ちた
2:その結果、三段鳶は3年ほど新作を出しておらず、現在も出す予定はない
3:取引先などに対して公式に「鳶から撤退する」とのアナウンスはしていない
「三段鳶はもともと、鳶衣装が売れているのを見て『もっとリーズナブルな価格帯で作ろう』と始めたブランドです。しかし、最後まで残った関東の市場でももはや求められなくなり、お店の方でも売り場スペースを縮小しています。また鳶衣装は普通の作業服と比べると縫製も特殊で、余計に採算がとりにくい。今のモデルも在庫をもって回転させていけるレベルならば来年以降も作り続けますが、新作は出ないしブランドとして育てる意思はない。得意先にも『やめる』とは言っていないものの、鳶ジャンルに力が入っていないのは誰が見ても明らかでしょう」
いかがだろう。既存の三段鳶ブランド商品はすぐに廃番になるわけではない。ただ新作は現時点で出す予定はないし、わざわざブランド終了宣言もしない、と。三段鳶は事実上終わったと受け取るべきか、復活の目が完全にゼロではないことを喜ぶべきなのか……。
●入り込む余地がなくなった
「三段鳶って正直、それほど際立ったブランドではなかったんですけど、人気はあったんですよ」
こう語るのは営業部の中田和典さんである。新作も出ないのになんの話をすればいいの? と言いながらも今回の取材を受け入れてくれた。正直すぎるのでは、と思ったものの、これはシンメンの商品戦略にもかかわる話でもあるらしい。
「当社は作業服の総合メーカーなので、基本的に何でも作ります。ワークウェアのカテゴリに入るものなら、うちで全部そろうような商品ラインナップを作ってきました。三段鳶の場合は、売れている鳶衣装の廉価バージョンとして市場でウケていました。とくに塗装系の職人さんなんかに支持されていましたね。どうせ汚れるから安いのでいい、というようなニーズです。こんなふうに、売れてるジャンルをコストパフォーマンスのいい商品で攻める、というのが当社のやり方なんですね」
高級なウェアを求めるお客さんもいれば、逆を求める人も必ずいる。ペンキが飛び散っても気にならないような柄を付けたウェアなども評判を集めたという。
「鳶が人気ジャンルだったころは、お店も高いものから安いものまでそろえておく必要がありました。低価格が売りの三段鳶も入り込む余地があったんです。ところが、超超ロングのような路線は、禁止の現場が出てきたり、若い人が恥ずかしいからと敬遠するようになってきたりで、一気に人気がなくなった。下火になってもこだわりのある職人は買い続けますが、それは寅壱のような高級路線の話。市場が縮小してしまったら、三段鳶のような商品は『安いから』と置いてくれるお店もなくなってしまうんです。昔は和柄とかけっこう面白い商品を出してたんですけどね」
廉価が売りの商品を成立させるには、数をさばくことが条件となる。そして数をさばくには、そもそもマーケットが大きくなければ不可能。三段鳶がフェードアウトしていくのは仕方がないのかもしれない。
●「こだわらない」という強味
後ろ向きな話にもかかわらず、中田さんの口調は明るい。その背景には同社特有のフットワークの軽さがある。「売れ筋ジャンルはすぐ出して、売れなくなる前に撤退する」というのはシンメンの“得意技”のようだ。
「鳶装束がダメになっても、うちでは空調服や新2017年に始まった新ブランド『SLASH』など、カジュアル系ワークウェアの路線も充実しています。鳶はおもしろいジャンルですけれど、こういうニッチな商品で在庫を抱えているのは危険な状態なんですよ。売り上げがあるからといって売れなくなるまで続けていたら、最終的に余って赤字になってしまう。そのあたりの見極めも大事です」
職人が鳶装束の代わりに細身のワークウェアを着るようになる。そんな場合でも、シンメンならそっち方面もしっかりカバーしている。総合メーカーの強みである。
ロングセラー商品を生み出し、ブランドを育て……とメーカーは得意ジャンルで攻めたくなってしまうものだが、それには危険も伴う。一方で、ジャンルにこだわらず柔軟に戦い方を変えていく手もあるのだ。
あるジャンルがダメになっても、すぐほかのジャンルで勝負する――この屈託のなさはシンメンの持ち味であり、大きな武器と言えるだろう。
「新商品の予定はないんですけどね……」と何度もこぼしながらも、鳶装束について語る姿はかなり楽しそうな中田さんだった。
なにはさておき、まずは「三段鳶」について公式見解を聞いておかねばなるまい。
三段鳶はなくなるのか? シンメン営業本部の副本部長、商品企画・生産管理部を務める平康太朗さんは「誤解のないように」と念を押した上で、次の3点を語った。
1:鳶カテゴリの商品は4、5年前まで大きな市場があったが、ここ数年で需要が一気に落ちた
2:その結果、三段鳶は3年ほど新作を出しておらず、現在も出す予定はない
3:取引先などに対して公式に「鳶から撤退する」とのアナウンスはしていない
「三段鳶はもともと、鳶衣装が売れているのを見て『もっとリーズナブルな価格帯で作ろう』と始めたブランドです。しかし、最後まで残った関東の市場でももはや求められなくなり、お店の方でも売り場スペースを縮小しています。また鳶衣装は普通の作業服と比べると縫製も特殊で、余計に採算がとりにくい。今のモデルも在庫をもって回転させていけるレベルならば来年以降も作り続けますが、新作は出ないしブランドとして育てる意思はない。得意先にも『やめる』とは言っていないものの、鳶ジャンルに力が入っていないのは誰が見ても明らかでしょう」
いかがだろう。既存の三段鳶ブランド商品はすぐに廃番になるわけではない。ただ新作は現時点で出す予定はないし、わざわざブランド終了宣言もしない、と。三段鳶は事実上終わったと受け取るべきか、復活の目が完全にゼロではないことを喜ぶべきなのか……。
●入り込む余地がなくなった
「三段鳶って正直、それほど際立ったブランドではなかったんですけど、人気はあったんですよ」
こう語るのは営業部の中田和典さんである。新作も出ないのになんの話をすればいいの? と言いながらも今回の取材を受け入れてくれた。正直すぎるのでは、と思ったものの、これはシンメンの商品戦略にもかかわる話でもあるらしい。
「当社は作業服の総合メーカーなので、基本的に何でも作ります。ワークウェアのカテゴリに入るものなら、うちで全部そろうような商品ラインナップを作ってきました。三段鳶の場合は、売れている鳶衣装の廉価バージョンとして市場でウケていました。とくに塗装系の職人さんなんかに支持されていましたね。どうせ汚れるから安いのでいい、というようなニーズです。こんなふうに、売れてるジャンルをコストパフォーマンスのいい商品で攻める、というのが当社のやり方なんですね」
高級なウェアを求めるお客さんもいれば、逆を求める人も必ずいる。ペンキが飛び散っても気にならないような柄を付けたウェアなども評判を集めたという。
「鳶が人気ジャンルだったころは、お店も高いものから安いものまでそろえておく必要がありました。低価格が売りの三段鳶も入り込む余地があったんです。ところが、超超ロングのような路線は、禁止の現場が出てきたり、若い人が恥ずかしいからと敬遠するようになってきたりで、一気に人気がなくなった。下火になってもこだわりのある職人は買い続けますが、それは寅壱のような高級路線の話。市場が縮小してしまったら、三段鳶のような商品は『安いから』と置いてくれるお店もなくなってしまうんです。昔は和柄とかけっこう面白い商品を出してたんですけどね」
廉価が売りの商品を成立させるには、数をさばくことが条件となる。そして数をさばくには、そもそもマーケットが大きくなければ不可能。三段鳶がフェードアウトしていくのは仕方がないのかもしれない。
●「こだわらない」という強味
後ろ向きな話にもかかわらず、中田さんの口調は明るい。その背景には同社特有のフットワークの軽さがある。「売れ筋ジャンルはすぐ出して、売れなくなる前に撤退する」というのはシンメンの“得意技”のようだ。
「鳶装束がダメになっても、うちでは空調服や新2017年に始まった新ブランド『SLASH』など、カジュアル系ワークウェアの路線も充実しています。鳶はおもしろいジャンルですけれど、こういうニッチな商品で在庫を抱えているのは危険な状態なんですよ。売り上げがあるからといって売れなくなるまで続けていたら、最終的に余って赤字になってしまう。そのあたりの見極めも大事です」
職人が鳶装束の代わりに細身のワークウェアを着るようになる。そんな場合でも、シンメンならそっち方面もしっかりカバーしている。総合メーカーの強みである。
ロングセラー商品を生み出し、ブランドを育て……とメーカーは得意ジャンルで攻めたくなってしまうものだが、それには危険も伴う。一方で、ジャンルにこだわらず柔軟に戦い方を変えていく手もあるのだ。
あるジャンルがダメになっても、すぐほかのジャンルで勝負する――この屈託のなさはシンメンの持ち味であり、大きな武器と言えるだろう。
「新商品の予定はないんですけどね……」と何度もこぼしながらも、鳶装束について語る姿はかなり楽しそうな中田さんだった。
縦縞が魅力の立ち襟オープンシャツ(型番9211)
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