Leeのワークウェア――。この言葉だけでもやや官能的な響きがある、というのは褒めすぎだろうか? 思い出話をさせてもらうと、たしか高校生のころに初めて自分で買ったジーンズがLeeだった。よくジーンズを穿いているカッコいい先輩がいて、彼がしゃがんだとき革に刻まれた「Lee」のロゴが見えた(Leeの革パッチは裏にベルトが通る)。当時は親が買ってきたダブダブのソフトジーンズしか持っていなかったので「次はLeeにしよう!」と決意したのを覚えている。結局は、買った後に足の短い人間にジーンズは似合わないと気付いたのだが……。と、こんなふうにLeeのロゴを見ただけで、甘酸っぱい記憶がよみがえってくる人もいるのではないか? もしそうなら、ぜひ今回のLeeのワークウェアラインナップを見てほしい。作業服メーカーの作るカジュアル系ウェアとは一線を画す「Leeのワークウェア」の妙味がわかるはずだ。そして一着、ワードローブに加えてみたくなるに違いない。
Lee
東京馬喰町のボンマックス本社
Lee営業担当の杉坂恒康さん
●事務服メーカーの持ち味
訪問したのは東京・馬喰町のボンマックス本社。岡山でも広島でもなく、東京でワークウェアの取材をするのはけっこう久しぶりだ。エントランスには、「パパはわるものチャンピオン」「主婦カツ!」など、同社が衣装協力した映画やドラマのポスターが柱を覆うほどたくさん貼られている。そう、Leeを展開するボンマックスは事務服メーカー。銀行窓口や会社の受付で女性社員が着ているアレである。
「当社のメイン商品は女性向けの事務服と制服です。もともとは生地問屋として創業し、メンズの作業服も扱っていたそうなんですが、1964年の東京オリンピックをきっかけとしたオフィスウェアの需要に応えるかたちで事務服メーカーになりました。そしてLeeのライセンス契約をして、作業服を展開しはじめたのが3、4年前のこと。大昔に手がけていたとはいえ、ワークウェア分野はまだ育成中という感じですね」
こう語るのは同社営業本部の杉坂恒康さん。レディースの事務服を扱っているだけあって、物腰もどこかエレガントというか、作業服メーカーの人とは違った雰囲気を放っている。
今まさに「売り出し中」のLeeではあるが、ブランドの路線というか、持ち味はどういったものなのだろう? と、思っていると杉坂さんがドカッと机の上にLee商品を積んでくれた。
おおっ、かわいい。でもって「良品感」というか、ちょうどいい上品さがある。さらにヘビーデューティーな雰囲気も感じる。古き良き正統派のアメカジというか。あれ? これって自分が一番欲しいタイプの服なんじゃ……と、思わず仕事を忘れそうになる。
「いいでしょ? これ、飲食やサービス業で売れてるんですよ。特にエプロンが人気です。ほぼ全商品がレディース対応なのも事務服メーカーだから。Sサイズのみレディースシルエットというのはよくありますが、サイズが合わないとモッサリしちゃうんでね。女性にヒアリング調査して美しく見えるウェアをつくる。これが『女性にやさしいボンマックス』としてのこだわりです。まあ、会社のユニフォームとして大口納入というタイプの商品ではありませんが、カフェなどのお店で恰好を男女そろいにしたいケースなどで、よく採用していただいていますよ」
●「カジュアル作業着に殴り込み」
「ただ一方で……」と、杉坂さんの表情がやや曇った。ちょうどエプロンやシャツなどのサービス業向け商品を披露したあと、ツナギや作業服を出してもらったときだ。
「作業服の方は、正直いって苦戦しています。事務服メーカーが作っただけあって、ちょっと他社のカジュアル作業服の雰囲気とは違うんですね。『もっとトンがったデザインじゃないと売れないよ!』とショップから言われたりします。それでも、今やどこでも細身のカジュアルワークウェアを見るようになったこともあって『ほかにもっと違ったヤツないの?』というお客さんにはウケています。先日、納入した従業員50人くらいの水道屋さんはそういう『ちょっと変わったウェアが欲しい』というニーズでした」
たしかに、他社カジュアルワークウェアのヤンチャでギラギラした雰囲気と比べると、Leeはずいぶん大人しい。レディース事務服メーカーであるボンマックスの遺伝子がLeeの商品にも表れているというか……。こういう路線は男性ホルモンの強い職人にはウケないのかもしれない。だが、話にあった水道屋さんのように戸別訪問して接客することの多い仕事なら、この品の良さも活きてくるのではないか。
さらに、同社では3年ほど前からLeeに加えて第2の作業服ブランドROCKY(ロッキー)もスタートさせている。これもまた細身やストレッチ素材を使ったカジュアルワークウェアの路線だ。Lee、ROCKYと相次ぐ作業服ブランドの立ち上げ。事務服メーカーに一体何が起きているのだろう? 杉坂さんは「LeeとROCKYでカジュアルワークウェアに殴り込みですよ!」と笑いながら、その背景を語ってくれた。
「やはり将来を考えてのことですよね。レディースの事務服や制服の市場は、どう見たってこれから広がっていくことはない。銀行や役所も制服を作るのをやめる流れになってきています。じゃあ代わりに何を売るのか、と考えたとき、作業服はとても魅力的なんです。旺盛な需要があるし、熱心なファンを獲得しているメーカーもある。そこで当社としては得意のレディース作業服を軸にニッチなところを取っていけたら……と考えています。ROCKYはロードサイドのお店などで個人向けに売っていこうとしているわけですが、そこでも、『人気のアレじゃなくてもっと違うのが着たい』というニーズに応えていこう、と」
ROCKYに関してはカタログを見ただけだが、やはり巷のカッコいい系ワークウェアの中では異彩を放っているというか、なんとなくシックな印象。この路線、他人とカブりにくいし意外とアリだと思うんだけど……。
●「農園系」だけじゃない
話をLeeに戻そう。昔ながらの「ザ・作業服」でも、近ごろ流行りのカジュアルワークウェアでもなく――。Leeブランドの方向性の言葉にするなら、こういう感じだろう。
そういったニッチな方向性を物語っている商品に、「ユニオンオール(型番:LWU39001)」、「オーバーオール(型番:LWU39002)」がある。簡単に言えばデニムのツナギとオーバーオールだ。ひと目見て「女の子が着たら絶対かわいいヤツだ!」と思う。と同時に「これって普通のアメカジ服なのでは?」という疑問も出てきてしまう。
「見た目はオシャレでカジュアルウェアみたいですが、耐久性などはワークウェア基準で作ってあります。あとツナギの左袖にペンポケットがあったり、ハサミやカッターを入れても大丈夫なポケットもある。しゃがみやすいようにアコーディオンプリーツがあるのも作業服の証ですね。ツナギは畜産や農園、果樹園といった現場で、オーバーオールはカフェや花屋さんでも使われています」
なるほど。お尻の上のプリーツなんかは、機能的に必要でありながら付けるとダサくなりがちな要素だが、まったく違和感なくスマートにまとまっている。カジュアルウェアにしか見えないのは、それだけ完成度が高いということでもあるのだ。
農園などに支持されるニッチな商品の一方で、オーソドックスな作業着としては「ジップアップジャケット(型番:LWB06001/LWB03001、LWB06002/LWB03002)」がある。シルエットの男女別・素材別・7種のカラーバリエーションと、ユニフォームとしても採用しやすいストレッチ生地の上着だ。ややゆったりした懐かしいデザイン。それでいてスッキリした雰囲気もあるのがおもしろい。
「ひとことで言えば、街中でも着られるワークウェアですね。特徴的なカラー展開は女性ウケを意識しました。飲食・サービス業でウケているLeeをなんとか作業服の方にも、と頑張った甲斐あって引き合いも増えています。水道や電気といった中小企業のユニフォームのほか、大手企業でも冬のジャンパー代わりに使われるケースもありますね。大手メーカーのブルゾンより値は張るけれど、それでもほかと差別化したい。そういうニーズです」
取材中、何度も出た言葉は「これから」。育成中のブランドとして、今後は飲食・サービス業ウェアと作業着の両面でアイテムを増やしていくという。事務服メーカーの持ち味を生かした“ひと味違うカジュアルワークウェア”として、Leeはこれからも新風を吹かせてくれるだろう。
訪問したのは東京・馬喰町のボンマックス本社。岡山でも広島でもなく、東京でワークウェアの取材をするのはけっこう久しぶりだ。エントランスには、「パパはわるものチャンピオン」「主婦カツ!」など、同社が衣装協力した映画やドラマのポスターが柱を覆うほどたくさん貼られている。そう、Leeを展開するボンマックスは事務服メーカー。銀行窓口や会社の受付で女性社員が着ているアレである。
「当社のメイン商品は女性向けの事務服と制服です。もともとは生地問屋として創業し、メンズの作業服も扱っていたそうなんですが、1964年の東京オリンピックをきっかけとしたオフィスウェアの需要に応えるかたちで事務服メーカーになりました。そしてLeeのライセンス契約をして、作業服を展開しはじめたのが3、4年前のこと。大昔に手がけていたとはいえ、ワークウェア分野はまだ育成中という感じですね」
こう語るのは同社営業本部の杉坂恒康さん。レディースの事務服を扱っているだけあって、物腰もどこかエレガントというか、作業服メーカーの人とは違った雰囲気を放っている。
今まさに「売り出し中」のLeeではあるが、ブランドの路線というか、持ち味はどういったものなのだろう? と、思っていると杉坂さんがドカッと机の上にLee商品を積んでくれた。
おおっ、かわいい。でもって「良品感」というか、ちょうどいい上品さがある。さらにヘビーデューティーな雰囲気も感じる。古き良き正統派のアメカジというか。あれ? これって自分が一番欲しいタイプの服なんじゃ……と、思わず仕事を忘れそうになる。
「いいでしょ? これ、飲食やサービス業で売れてるんですよ。特にエプロンが人気です。ほぼ全商品がレディース対応なのも事務服メーカーだから。Sサイズのみレディースシルエットというのはよくありますが、サイズが合わないとモッサリしちゃうんでね。女性にヒアリング調査して美しく見えるウェアをつくる。これが『女性にやさしいボンマックス』としてのこだわりです。まあ、会社のユニフォームとして大口納入というタイプの商品ではありませんが、カフェなどのお店で恰好を男女そろいにしたいケースなどで、よく採用していただいていますよ」
●「カジュアル作業着に殴り込み」
「ただ一方で……」と、杉坂さんの表情がやや曇った。ちょうどエプロンやシャツなどのサービス業向け商品を披露したあと、ツナギや作業服を出してもらったときだ。
「作業服の方は、正直いって苦戦しています。事務服メーカーが作っただけあって、ちょっと他社のカジュアル作業服の雰囲気とは違うんですね。『もっとトンがったデザインじゃないと売れないよ!』とショップから言われたりします。それでも、今やどこでも細身のカジュアルワークウェアを見るようになったこともあって『ほかにもっと違ったヤツないの?』というお客さんにはウケています。先日、納入した従業員50人くらいの水道屋さんはそういう『ちょっと変わったウェアが欲しい』というニーズでした」
たしかに、他社カジュアルワークウェアのヤンチャでギラギラした雰囲気と比べると、Leeはずいぶん大人しい。レディース事務服メーカーであるボンマックスの遺伝子がLeeの商品にも表れているというか……。こういう路線は男性ホルモンの強い職人にはウケないのかもしれない。だが、話にあった水道屋さんのように戸別訪問して接客することの多い仕事なら、この品の良さも活きてくるのではないか。
さらに、同社では3年ほど前からLeeに加えて第2の作業服ブランドROCKY(ロッキー)もスタートさせている。これもまた細身やストレッチ素材を使ったカジュアルワークウェアの路線だ。Lee、ROCKYと相次ぐ作業服ブランドの立ち上げ。事務服メーカーに一体何が起きているのだろう? 杉坂さんは「LeeとROCKYでカジュアルワークウェアに殴り込みですよ!」と笑いながら、その背景を語ってくれた。
「やはり将来を考えてのことですよね。レディースの事務服や制服の市場は、どう見たってこれから広がっていくことはない。銀行や役所も制服を作るのをやめる流れになってきています。じゃあ代わりに何を売るのか、と考えたとき、作業服はとても魅力的なんです。旺盛な需要があるし、熱心なファンを獲得しているメーカーもある。そこで当社としては得意のレディース作業服を軸にニッチなところを取っていけたら……と考えています。ROCKYはロードサイドのお店などで個人向けに売っていこうとしているわけですが、そこでも、『人気のアレじゃなくてもっと違うのが着たい』というニーズに応えていこう、と」
ROCKYに関してはカタログを見ただけだが、やはり巷のカッコいい系ワークウェアの中では異彩を放っているというか、なんとなくシックな印象。この路線、他人とカブりにくいし意外とアリだと思うんだけど……。
●「農園系」だけじゃない
話をLeeに戻そう。昔ながらの「ザ・作業服」でも、近ごろ流行りのカジュアルワークウェアでもなく――。Leeブランドの方向性の言葉にするなら、こういう感じだろう。
そういったニッチな方向性を物語っている商品に、「ユニオンオール(型番:LWU39001)」、「オーバーオール(型番:LWU39002)」がある。簡単に言えばデニムのツナギとオーバーオールだ。ひと目見て「女の子が着たら絶対かわいいヤツだ!」と思う。と同時に「これって普通のアメカジ服なのでは?」という疑問も出てきてしまう。
「見た目はオシャレでカジュアルウェアみたいですが、耐久性などはワークウェア基準で作ってあります。あとツナギの左袖にペンポケットがあったり、ハサミやカッターを入れても大丈夫なポケットもある。しゃがみやすいようにアコーディオンプリーツがあるのも作業服の証ですね。ツナギは畜産や農園、果樹園といった現場で、オーバーオールはカフェや花屋さんでも使われています」
なるほど。お尻の上のプリーツなんかは、機能的に必要でありながら付けるとダサくなりがちな要素だが、まったく違和感なくスマートにまとまっている。カジュアルウェアにしか見えないのは、それだけ完成度が高いということでもあるのだ。
農園などに支持されるニッチな商品の一方で、オーソドックスな作業着としては「ジップアップジャケット(型番:LWB06001/LWB03001、LWB06002/LWB03002)」がある。シルエットの男女別・素材別・7種のカラーバリエーションと、ユニフォームとしても採用しやすいストレッチ生地の上着だ。ややゆったりした懐かしいデザイン。それでいてスッキリした雰囲気もあるのがおもしろい。
「ひとことで言えば、街中でも着られるワークウェアですね。特徴的なカラー展開は女性ウケを意識しました。飲食・サービス業でウケているLeeをなんとか作業服の方にも、と頑張った甲斐あって引き合いも増えています。水道や電気といった中小企業のユニフォームのほか、大手企業でも冬のジャンパー代わりに使われるケースもありますね。大手メーカーのブルゾンより値は張るけれど、それでもほかと差別化したい。そういうニーズです」
取材中、何度も出た言葉は「これから」。育成中のブランドとして、今後は飲食・サービス業ウェアと作業着の両面でアイテムを増やしていくという。事務服メーカーの持ち味を生かした“ひと味違うカジュアルワークウェア”として、Leeはこれからも新風を吹かせてくれるだろう。
ロゴには「WORK WEAR」の文字が入る
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オーバーオールはカフェや花屋さんにも人気
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まさにワークウェアだけが持つ機能美! 「Leeと言えばコレ」なツナギ&オーバーオール ジーンズブランドLeeの原点を思い出させるツナギとオーバーオール。街着としても使えるファッション性がありながら、作業着としての耐久性も兼ね備えている。動きやすさに配慮したストレッチ素材に加えて、腕の付け根にはアクションプリーツ、腰部分にはアコーディオンプリーツを採用しており、激しい動きやしゃがみ作業も快適。カラーはインディゴネイビー・ホワイト×ブルー・ブルーの3種類。 |
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人とカブらないカジュアルワークウェアを求める貴方へ。事業所ユニフォームにも使えるデニム風シリーズ ジーンズの伝統的な雰囲気を意識した作業着の上下シリーズ。すっきりしたシルエットながらストレッチ素材採用のため動きやすい。デニム風のルックスは安心感があるので接客もOK。ファッション性がありながらポケットなど機能面には妥協なし。デニム風カラーリングはジャケットとパンツが4色、シャツは2色。 |
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