【中国産業】困ったときのCHUSANimage_maidoya3
どれだけ取材を重ねても初訪問の会社というのは興奮するものである。「おもしろい話が聞けるかも!」という期待と「迷惑がられるんじゃないか」という不安。それに他人の家の玄関から中がちらっと見るときのようなドキドキ感がある。こんな複雑な気持ちを抱えて10月の初めに向かったのは、倉敷市児島の中国産業。「中国」に「産業」。中国地方のメーカーであること以外、何もわからない。こういうときはネット検索などせず、あれやこれやと想像をふくらませてみる。社名からして間違いなく老舗なんだろう、木造平屋の縫製場があって、ロングセラー商品には職人の根強い支持があり、地元で有名な名物社長がいて――と、タクシーが止まったのは一階が倉庫になったわりと新しいビルだった。内線で取材の旨を伝えてエントランスを見回す。そこには「CUC」のロゴ看板と共に細身のカジュアルワークウェアを着たマネキンが。おお、中国産業は「カッコいい系」だったのか! 感心しているとアパレル店スタッフのようなオシャレな男性が前を通っていった。この人は取材担当ではないようだが、内装からスタッフまで洗練されたビジュアルに否応なく期待が高まる。このメーカー、実はかなりイケてるのでは!

中国産業
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児島駅から車ですぐの本社ビル
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営業部の鈴木強さん
●「ユニフォームも獲りたい!」
 
  対応してくれたのは営業部の鈴木強さん。会議室での取材を想定していたら、通されたのは同社ウェアやヘルメットを身につけたマネキンがカッコよくレイアウトされたホールだった。こ、これは展示会場?
 
  「7月に開いた展示会をそのまま残してあるんです。わかりやすくていいでしょう?」
 
  たしかに、ズラリ並んだウェアを見れば中国産業がどういう会社か、なんとなくわかってくる。カジュアルワークウェアでありながら、ギラギラしすぎない大人っぽさもあるというか……。
 
  「うちは長年、店頭売りのカジュアルワークウェアを得意としてきたメーカーなんです。代表的なブランドはDOGMAN(ドッグマン)。要はショップで個人買いしてくれるお客さんに支えられてきたわけですね。しかし、ここ数年は『DOGMAN一辺倒じゃダメだ!』という掛け声のもと、商品構成の改革を進めています。つまり、これまで少なかったユニフォームの受注も取れるようになりたいな、と。具体的に言うと、ここ3年はカジュアルの流行を意識したHOP-SCOT(ホップスコット)、ベーシックなアイテムが多いC's CLUB(シーズクラブ)という2つのブランドにテコ入れして、納入向け商品の強化を進めているところです。先日もユニフォームとして300着の注文をいただきました。100人の従業員に3着支給で300着。それで気に入ってもらえたら『同デザインで秋冬物もほしい』となる。今のところ他社の後塵を拝してはいるものの、納品向けアイテムをそろえておくのはすごく大事ですね」
 
  多くの作業服メーカーのように、昔ながらの「ザ・作業服」から今風のカジュアルワークウェアへ、という流れかと思いきや、中国産業の場合は完全に逆。「カジュアルワークウェアからユニフォームにも採用できるベーシックなものへ」というわけだ。
 
  「要するにどの会社も“ないものねだり”なんですよ。ベーシックな作業服をたくさん納入している大手は、個人買いが多いカジュアルワークウェアの市場をもっと取りたい。うちはその逆で、もっとユニフォームを取りたい。どの会社も自分に欠けたピースがほしいんですね」
 
  ●社長が語る“スキマ狙い”
 
  と、ここでふらりと部屋に入ってきたのが、さっきロビーで見かけたシュッとした人である。「社長です」と鈴木さん。えっ、この方が!
 
  小橋徳久社長は就任1年目。若々しい雰囲気ながら社歴25年のベテランだ。鈴木さんが語ってくれた「商品構成の改革」の旗振り役であり、「CHUSAN」カタログのリニューアルと編集の指揮も執っている。さらには、あちこちで「カッコいいショップ」として名前が挙がる作業服店「ワークハウス」のプロデューサーでもあるというから驚きだ。
 
  「ウチの会社? ワークウェアLOVEって感じかな? 秋冬のイチオシ商品? うーん、そういうのはウチらしくないよね……。CHUSANの商品ってひとことで言えば『スキマ狙い』なんですよ。大手には大手の、中手には中手の役割があって、それぞれの役割を果たすのが大事。で、ウチはそのどちらもやってないスキマを狙って商品展開する。こういうのがあったらなぁ、という声に応えられる商品をね。キャッチフレーズっぽく言えば『困ったときの中国産業』というわけ」
 
  リラックスした語り口ではあるが、今後のビジネスに関しては強い危機感を持っていることもうかがえる。
 
  「作業服メーカーってなんだろう? とよく考えますよ。で、最終的には『在庫を備蓄しておく』というのが一番の特徴なんじゃないかと。いつ注文があっても答えられるように、できるだけ商品を継続させ、品切れさせないようにする。これが一番大事なことであり、アパレル業界と大きく違うところ。近年のカジュアルワークウェアは売れ出すのも売れなくなるのも一瞬で、メーカーとしては非常にリスクが大きいんだけど、それでも大量の在庫を抱えながら辛抱強く注文を待つ。そして、この基本を押さえた上でメーカーとしてどんな提案をしていくか、ですよ。ウチの場合は児島で洗い加工したデニムやレディースウェアに力を入れたりしていますけれど、まだまだこれから。目標としては、たとえば若いリーダーがユニフォームを通じて会社に変化を起こしたいとき、選ばれるメーカーでありたいな、と」
 
  ●ポイントは「出番の多さ」
 
  そんな「スキマ狙い」な姿勢は秋冬ウェアにもしっかり表れている。新商品の2815シリーズはCHUSANらしいカジュアルな雰囲気がありながらユニフォームとしても使える。そんな絶妙なラインを狙った商品だ。5色のカラーバリエーションにレディースシルエットもそろっているので、上下を色違いにしてカジュアル感を出したり、女性も含めた事務職のユニフォームにしたりもできる。
 
  さらに、冬のアウターとしては1805シリーズが登場。裏地フリースの防寒着だが薄手なので活躍の機会は多そう。上下それぞれ6色のカラーを組み合わせてツートンカラーのユニフォームにすることもできる。
 
  再び鈴木さんに解説してもらおう。
 
  「どちらも得意とするカジュアルワークウェアをユニフォームらしく見えるようにアレンジしているのが特徴です。意識したのはパフォーマンスの良さですね。2815シリーズは作業現場から事務所まで使える汎用性があるし、1805シリーズは軽防寒なので、寒さが本格化する前から春先までなにかと出番が多い。さらに上下カラーの組み合わせによってはオシャレな雰囲気も出せる。コストパフォーマンスを求める人に加えて、いかにもユニフォームですというウェアは嫌だという人にこそ選んでほしい商品です」
 
  ショップ売りのカジュアルワークウェアだけでなく納入向けのベーシック系ウェアにも注力。それでいて大手とイメージがカブらないようにユニフォームらしさをあえて抑え、中小事業所からの受注をめざす――。この細心かつ一筋縄でいかない思惑に、小橋社長が語った「スキマ狙い」の神髄を見た気がした。
 
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小橋徳久社長も登場!
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CHUSANを支える本社縫製場

    

ちょうどいいスタンダード感にほどよい主張性! 「CHUSAN」新定番の2815シリーズ

CHUSANが「新定番」の自信をもって送り出したドビーストレッチT/Cシリーズ。機能繊維テックスブリッド採用でストレッチなのに型崩れしにくく、なおかつ長寿命。機能性に加えて事務スタッフのウェアとしても使える汎用的なデザインもウリ。ブルゾンとパンツはレディースシルエットも用意。カラー展開は全5色。上下色違いでツートンカラーにするのもオススメ。


ありそうでなかった「出番多い系」! 薄手・冬物アウターの1805シリーズ

北国でなければこれで充分? 冬の初めから春先まで登場機会の多そうな軽防寒ウェア。防寒用に見えないほど薄手だが、裏フリースは体温を逃さず屋外作業での動きやすさも損なわない。さらに表面の撥水エンボス加工でオシャレ感も演出。カラーは全6色。上下色違いでツートンカラーのユニフォームにしてもOK。