【タカヤ商事】「新定番」を創り出すimage_maidoya3
JR福塩線の、ってこういう導入多いなぁ……、と思いながらも書かずにはいられない。正直、ワークウェアの取材がここまで地域的に偏っているとは予想してなかったです、ハイ。というわけで今回も、初訪問のタカヤ商事へ福山駅から福塩線で向かう。この路線は停車駅を覚えてしまいそうなくらい乗っているが、油断してるとあっという間に終点の府中に行ってしまうから要注意である。気を引き締めたまま、神辺駅で下車。タクシーを探そうと思ったとき、取材アポの時間まで1時間ほどあることに気が付いた。「歩いても30分くらいで着くな。途中に喫茶店でもあれば休憩したらいいし」と歩き出す。ところが、そんな生易しいものがあるはずもなく、道はどんどんハイキングコースの様相を呈してくるのだった。旧街道だろうか、あちこちにお地蔵さんや石碑が残っている。掘削して道をつけた小さな峠を越えると、丘の上にタカヤ商事のビルが見えてきた。玄関口のロビーには、ハロウィーンのデコレーションとともに商品が展示してある。チェックのスカートに秋物の薄手コート……って、ええ! 完全にカジュアルファッションじゃないっすか!?

タカヤ商事
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丘の上にある本社ビル
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新作ジャケット(TW-A103)の売りは「アクションプリーツ」
●“ジーンズ屋”のワークウェア
 
  と思ったら、奥の方にワークウェアもしっかり展示されていた。ベーシックなカーキ色の作業服に「いやー、こういうの見ると安心しますね」とこぼしたら、ワークウェア事業部の後藤靖史さんがその背景を語ってくれた。
 
  「ワークウェアは、アパレルメーカーであるタカヤ商事の一事業なんです。昔からジーンズをはじめ洗い加工した綿のウェアを得意としていたこともあって、今でもジーンズ系のカジュアルファッションやワークウェアに強い、と。そもそもジーンズってワークウェアですからね」
 
  おおー、としか言えない解説である。オシャレ着を作っているアパレル企業がワークウェアに手を出したのではなく、“ジーンズ屋”としてごく自然にファッションアイテムも作業服も作ってきた。カジュアルだ、ワークだと勝手に分類しているのはあんた達じゃないか、うちはそんなの関係ないね、と。これってめちゃくちゃクールじゃないか。
 
  とはいうものの、同じ会社がカジュアルもワークウェアもというのは、やはり珍しい。最近は両者の違いがほとんどなくなっているという話もあるし、そのあたりの棲み分けはどうなっているのだろう?
 
  「たとえば、近ごろ力を入れている女性用のワークウェアでは、女性の体形に合う型をつくるときなんかにジーンズ事業部のノウハウをもらったりしてますよ。またワークウェアでもカジュアル衣料のように売り場でのインパクトのある魅せ方が求められる時代ですから、あちらを参考にしたりもします。ただ一方で、やっぱり作業服ってたくさん在庫を抱えて何年も同じ商品を売っていく商売ですから、違いは歴然とありますね。カジュアル部門の人からは『えー、なんでこんなに在庫あるの?』と言われたりしますよ(笑)」
 
  ●20年ぶりのリニューアル
 
  そう語りながら後藤さんがカタログを開いて見せてくれたのが、型番GC-2000の長袖ブルゾンである。「わが社の定番です」というこのモデルは、なんと20年以上売れ続けているロングセラー。にもかかわらず見た目は「ザ・作業服」ではなく、綿の色落ち加工でナチュラルな雰囲気。いまどき珍しいゆったりしたシルエットも「1着持っておきたい」という安心感を放っている。さすがのレジェンド商品である。
 
  「これ、発売したときは『こんなの作業服じゃない!』とかさんざん言われたんですよ。カジュアルすぎて。それが今や定番商品になり、何百人も従業員がいる会社のユニフォームとして普通に入ってますからねぇ。ズボンがツータックになってるのが時代を感じさせるでしょ? それで今や20代の若い子たちの間ではツータックのハイウェストが流行ってたりするんだから、面白いもんですよね」
 
  「GC-2000」は現在も売れ続けているが、タカヤ商事では昨年、この定番商品のリニューアルを敢行。後継モデル「GC-5000」を発売している。せっかくのロングセラーを旧モデルに追いやるのは、もったいないような気もするが……。
 
  「次の20年を見据えたリニューアルです。ただ後継のGC-5000を出したからといってGC-2000を廃番にするわけではなく、当分は二重展開することになるでしょう。というのも、世間で言う『ベーシックな作業服』も、徐々にではあるものの時代の流れとともに確実に変わってきているからです。カジュアルワークウェアがいずれベーシック作業服になっていくなら、主力の定番商品であろうとやはり変えなければいけません」
 
  GC-5000は、綿の起毛感というGC-2000の基本路線を踏襲。その上でシルエットも細身にし、生地はより色落ちしにくくなっている。旧モデルと見比べて、残すところはしっかり残しているという印象をうけた。
 
  ●作業服の「ニュー・ベーシック」として
 
  ロングセラーの後継モデルであるGC-5000に続いて、今シーズンはさらに新作が登場した。後藤さんが「今後のユニフォーム向け商品の主力にしたい」と語るブルゾンとズボンだ。上下それぞれに以下の次の2タイプがあり、それぞれ5~6色のカラーバリエーションとなっている。
 
  ・エクスパンション……EXジャケット(TW-A103)/EXカーゴパンツ(TW-A113)
 
  ・スタンダード……ジャケット(TW-A100)/デザインパンツ(TW-A111)
 
  エクスパンションとスタンダートの最大の違いは動きやすさ。エクスパンションシリーズの上下には、肩や肘、腰、膝部分にアクションプリーツが施されており、曲げ伸ばしがしやすい。耐久性のアップに加えて在庫時の劣化がないように、あえてポリウレタン配合のストレッチ生地ではなく、コストのかさむ「メカニカルストレッチ」を選んだという。機能的にはかなりアクティブでありながら、役所などでも使えそうなお堅い雰囲気も感じる。
 
  「この商品は、“ちゃんとしてます感”というか、仕事中の大人らしく見えることをかなり意識しています。カジュアルとはちょっと違った方向性ですね。別注しなくても上下カラーの組み合わせでオリジナリティが出せるし、デスクワークの人はほぼ同じデザインのアクションプリーツなしタイプを選ぶこともできる。そういう点を強みに、よくあるユニフォームとはちょっと違ったものを求めるユーザーに提案していこうと考えています。つまり、今でも大きな会社ではよく使われている例の作業服に代るような、ニュー・ベーシックという位置づけですね。このシリーズは夏物も出すので期待していてください」
 
  得意のジーンズカジュアルを生かしたロングセラー商品を20年ぶりにリニューアルしたかとと思えば、「ザ・作業服」に代わる真面目な印象のワークウェアで「ニュー・ベーシック」を提唱――。明るくてさばけた雰囲気のメーカーながら、その商品からはすさまじいまでの深謀遠慮ぶりが垣間見えるのだった。
 
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反射材を使ったウェアも得意
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「ニュー・ベーシック」を目指す

    

このアクションプリーツ使いはシブすぎる! 高耐久のメカニカルストレッチ採用シリーズ

巷のカジュアルワークウェアと一線を画す「ちゃんとしてます感」のある定番作業服。肩・ヒジ・ヒザ・腰のアクションプリーツが激しい動きもサポート。高耐久性のストレッチ機能が長時間の作業も快適にする。今風なのに子供っぽさのないスッキリしたスタイルはユニフォームにも最適。カラー展開はジャケット5色にパンツ6色。サイズによりレディースシルエットもあり。


ありそうでなかった定番感に高機能! 事務ユニフォームにも最適なスタンダードシリーズ

落ち着いた印象でさまざまなシーンで使えそうな上下ウェア。エクスパンションシリーズ(TW-A103/TW-A113)と違ってプリーツなしのため見た目は一層スッキリ。おとなしい印象なので事務スタッフのユニフォームとしてもよさそう。カラーはジャケット5色にパンツ6色。小さめサイズはレディースシルエット採用。