【山田辰】ツナギで働き、ツナギを作るimage_maidoya3
 レーシングウェアの革ツナギに、整備用の作業ツナギ、暴走族キャラだった頃の島田紳助もそういえばツナギをコスチュームにしていた――。そう、ツナギと切っても切れない関係にあるのがバイク。では「オートバイ印のツナギ」と言えば? 答えはもちろん「山田辰」である。創業108年。主力のブランド「AUTO-BI」はもうすぐ90年を数える老舗ワークウェアメーカー。さぞかし頑固一徹なものづくりをしているのだろう、ツナギへの理解が足りないと塩でもまかれて追い返されるかもしれない……、と少し緊張しながら大阪は城東区の本社を訪ねる。女性スタッフに通された会議室では、たくさんのツナギが用意されていた。もちろんツナギ専用(?)の背の高いハンガーラックである。さすがツナギメーカーだ、と感心していると、「お待たせしました」の声とともにラックの奥から作業服の男性が現れた。いや作業服ではない、ツナギだ! 当然のようにツナギ着用だ!

山田辰
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夏モデル「1-6310」着用の藤井さん
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高いデザイン性も魅力の「1-1070」
●ロッカーにツナギ30着!
 
   登場したのは大阪生産グループの藤井大輔さん。ツナギ着用は個人の趣味ではなく仕事の一環という。山田辰の企画担当者は日ごろから自社ツナギを着て1日を過ごし、身をもって着心地や耐久性、機能性などを試すことになっているのだ。自社ウェアをユニフォームにしているワークウェアメーカーはよくあるが、ツナギは初めて。しかも非常にサマになっている。2018年モデルの夏用ツナギ(1-6310)とのこと。それにしても、そのツナギ、いいですね!
 
  「いいでしょう? ジーンズ風のステッチ使いが特徴のカジュアルな雰囲気のモデルです。涼感のあるサラッとした生地で、腕や肩も動かしやすい。カーゴポケットも付いています。同デザインの3シーズン用(1-6300)もありますよ」
 
   一着にペンや手帳、スマートフォンまで収納できて、しかも上から下まで調和の取れたルックス。見ているうちに、オフィスでツナギを着るのもアリかも? という気すらしてくる。
 
   ところで、いつもそのツナギなんですか?
 
  「いえ、毎日違うツナギを着ています。いろんなツナギを着用して、ポケットの位置はどのへんがいいか、突っ張るのはどういう動きをしたときかとチェックしたり、あとは通気性、耐久性なんかも体験して開発のヒントにするんです。会社には私のロッカーが4つあって、合計30着くらいツナギが入ってますよ」
 
   オフィスでのツナギ着用について、藤井さんはこう語る。
 
  「ウエストの締め付けがないからラクでいいですよ。デスクワークに限らず、掃除でせまいところに潜りこんだりしても引っかからない。けっこう便利です」
 
   着用感について語るときは、すっかりツナギ愛好家の顔になっている藤井さんだった。
 
  ●「汚れている方がカッコイイ」
 
  「ツナギ愛」を語ってもらったところで、話を同社の基幹ブランド「AUTO-BI」に移そう。ごぞんじの通り、作業服の世界ではいわゆるカッコいいウェア、そのまま街に行けるようなカジュアルなデザインが流行っているけれど、こちらのツナギの世界では一体どんなトレンドがあるのだろう?
 
  「昔よりはカジュアルなデザインにはなってきましたし、近年は猛暑もあって通気性や涼感を高めた商品も増えています。しかし、まだそこまで劇的な変化はありません。クルマの整備や建設機械のメンテナンスなど、潜り込んで汚れる作業をするときの作業服という点は変わらない。AUTO-BIでも、引き裂きに強い丈夫な生地で、耐久性があって、という機能を前面に出しています」
 
   ワークウェアでは、カジュアルから波及したストレッチ素材が人気を集めているのはごぞんじの通りだが、ツナギではまだ求める声は少ないという。
 
  「ツナギはある程度ゆとりを持たせたデザインにしているので、そのままでもそれほどツッパリ感はないんです。それに、あまり細身になるとツナギらしく見えないという事情もあって普段ストレッチを着ている人でもツナギは普通の生地のものを好むケースが多い。やはりツナギには、整備士だ、メカニックだ、というプロフェッショナルな雰囲気が求められるんですね。昔気質な人だと『だんだん汚れていくのがいい』と真っ白のものを着たりするくらいで。今後、ファッション性が高くなっていっても、プロのための『仕事に没頭できるウェア』という軸がブレることはありません」
 
   ツナギもファッションの一部である以上、必ずトレンドの影響は受ける。ただし、普通のアパレル衣料のような”キレイ目志向”も感じられる作業服と比べれば、ツナギは独特だ。いわば、「そのまま街に出られる普通さ」のが現代の作業服なら「汚れているのがカッコイイ」のがツナギ文化。今でも西部開拓時代のジーンズやサロペットのごとき「ヘビーデューティー感覚」を色濃く残しているのだ。
 
  ●イノベーションが止まらない
 
   前述のように、ルックスの面ではあまりトレンドの影響を受けないのがツナギの世界。しかし、快適性や動きやすさといった機能面では着々と進歩を重ねている。そんな一例として藤井さんが見せてくれたのが「腰割れ式」のツナギ(1-6900)。ウエスト部に水平ファスナーが付いており、上を脱がずにトイレで用を足せる。女性でも安心して着用できるツナギだ。
 
  「このウェストファスナーは女性をターゲットに開発したものですが、男性でも意外とおすすめですよ。私もトイレに入ってツナギの上を脱ぐことがありますが、冬になるとけっこう寒い(笑)。まずはこのモデルのレディース対応サイズを増やして、それから普通のツナギにもこの機能を付けていきたいですね」
 
   と、普段からツナギを着ている人でないと絶対わからないトイレ事情を語る藤井さん。続いて「さらに機能面ですごいのは……」と、つなぎ服(1-1280)を取り出す。うん? 普通のツナギじゃないですか、と思ったら、なんと肘と膝にプリーツが隠れていた。動かなければ普通のツナギだが、腕や膝を曲げるとプリーツがニュッと出てくる。関節の動きを妨げない「らくらくプリーツ」搭載モデルだ。
 
  「ストレッチ性のある生地に関節プリーツが付いているので、めちゃくちゃ動きやすい。ゴムだと引っ張られると戻る力が発生してしまうんですが、プリーツならそういう不快感もありません。ちょっとメカニカルな雰囲気でおもしろいでしょ? これが最近ではいちばんの革新モデルでウチの意欲作です」
 
   ほかのツナギでも腕の突っ張りがないようカッティングなどを工夫しているが、この曲げやすさは別格。肘や膝の切れ目から見える赤いプリーツがデザイン上のアクセントとしても効いていて、なんというか「近未来」な雰囲気のある斬新なツナギだ。
 
  ●「空調ツナギ」は山田辰だけ!
 
   さらに山田辰の機能性モデルの極みを挙げるなら「空調ツナギ」で決まりだろう。ツナギで唯一のファン付きモデルである。空調服は上モノとしては既におなじみだが、ツナギになると一体どうなるのか。気になる!
 
  「クルマの運転するときに邪魔にならないようにファンを横に付けたりと、(ファンユニットを生産する)空調服さんと一緒に考えて最初に発売したのが、上半身だけ風が通るモデル(1-9810)です。ウエストにゴムがフィットするようになっているので、下半身に風は入りません」
 
   え? せっかくツナギなのに?
 
  「そうなりますよね(笑)。ユーザーさんから『下半身にも風を送りたい』という声がありまして、次に全身タイプ(型番:1-9820)を発売しました」
 
   これでツナギならではの全身空調服が誕生したわけだが、この夏はさらに、新作の半袖タイプ(1-9850)、綿100タイプ(1-9821)をラインナップに加えた。
 
  「袖が膨らむと作業しにくいとおっしゃる方もいるので、マイナーチェンジして半袖モデルを作ってみました。さらに『素材は綿がいいんだけど』というお客さんの声もありまして……。綿100%なのに空気を逃がさない素材を探すのにずいぶん苦労しました。空気を送り込むためには軽い生地じゃないとダメだし、一方ですぐ破れるようじゃダメだし、というわけで、空調服の素材選びは難しいんですよ」
 
   普通の夏用ツナギは通気性が大事なのに対し、空調服は逆で空気を閉じ込めなければならない。普段のツナギ開発とはまた違うノウハウが必要になるのだ。
 
   そんな空調服の苦労を語りつつも、はやりツナギについて語るとき、藤井さんの笑みは絶えないのだった。
 
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マジックテープでフィット感を調整
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山田辰だけの「空調服ツナギ」

    

通気性MAX! 極上のクール感! 夏の相棒「涼感ツナギ」シリーズ

「これ以上薄くできない」と開発者も語る涼感素材の生地は、通気性バツグン。汗をかいてもすぐ乾き、体にこもった熱を素早く逃がす。薄くて軽いのに作業服としての丈夫さも兼ね備えているのは、さすが山田辰だね。同デザインの3シーズン用(型番:1-1270)も用意されているので、ユニフォームとしてもオススメ。

  • image_maidoyaつなぎ服
    ■型番:1170
    ■定価:\13,600
    ■販売価格:\7,350
  • image_maidoya半袖つなぎ服
    ■型番:1070
    ■定価:\12,500
    ■販売価格:\6,750
  • image_maidoyaつなぎ服
    ■型番:1270
    ■定価:\14,400
    ■販売価格:\7,780

伝統と革新の融合! メカニックの腕を引き立てるデニム風モデル

羽ばたくように腕を広げても突っ張らない「メカバード」仕様のデニム風ツナギ。背面カッティングの工夫によって作業時の腕の動きもスムーズ。プロ仕様の機能を盛り込みつつも、ジーンズを意識したステッチワーク、金属製のドットボタン、カーゴポケットなど、親しみやすいカジュアル感も魅力だ。

  • image_maidoyaつなぎ服
    ■型番:6310
    ■定価:\15,700
    ■販売価格:\8,480
  • image_maidoyaつなぎ服
    ■型番:6300
    ■定価:\17,600
    ■販売価格:\9,510