【ジーベック】「新定番」を超える航海へimage_maidoya3
関西人から見て「福山」というのは絶妙な土地だと思う。新幹線で約1時間という近さに加えて、街の雰囲気も広島市ほどの"アウェー意識"がなく、兵庫や岡山からの連続性がしっかり感じられるのだ。タクシー運転手の話によれば、福山駅は瀬戸内観光だけでなくビジネスマンの利用者も多いので、地元では「福山駅に停車する新幹線の本数を増やすべきだ」との声も上がっているという。と、そんな活気のある福山駅から歩いてすぐのオフィス街に本社を構えるのが、ごぞんじジーベックである。取材でしょっちゅう福山を訪れる編集部は、何度もこの本社ビルの前を通っているが、じつは中に入るのは今回が初めて。立ち並ぶ幟に「作業服」「現場服」「安全靴」といった言葉が躍るジーベック本社は、改めて見ればなかなかの威容である。やっぱり保守的な作業服メーカーなのかな? と思いつつエントランスで用件を告げる。しかし、受付の女性に通されたショールームは、白を基調とした"近未来調"のまぶしい空間だった。

ジーベック
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幟が立ち並ぶジーベック本社ビル
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「1800シリーズ」を紹介する村田さん
●カジュアルワークもユニフォームも
 
  「当社の特徴ですか? うーん、総合メーカーですからね。作業服からカジュアルウェアまで幅広くやってきて、今は各種ワークウェアと安全靴が名物、といった感じでしょうか。JSAA規格の安全スニーカーをいち早く始めた会社ですから。あと、企業への納品が多いのは特徴ですね。基本的にはユニフォーム採用されるようなウェアが得意な会社と思っていただければ」
 
  こう語るのは、企画部の村田鋼平さん。ワークウェアの企画を担当して10年になるベテランだ。このプロフィールに、営業部の稲葉勝利さんが次のように付け加える。
 
  「ユニフォーム採用が多いのは、継続性と在庫体制という土台がしっかりしているからですよ。制服になると毎年まったく同じものをユーザーの望む数だけ用意しておかないとダメですが、うちは在庫が強いから大丈夫です。また、レディースのワークウェアや女性向けアイテムも充実しているので、女性の進出が進む職種や現場でも、男女でユニフォームをそろえることができる。こういった面でも評価をいただいています」
 
  このように基本に忠実な同社の商品構成は、「ジーベック」「現場服」という2系統のブランドに支えられている。オーソドックスで定番感のあるジーベックに対して、現場服はショップ売りを狙った「イマドキ感のあるワーキングカジュアル」(稲葉さん)。やはり、ユニフォーム採用されるようなド定番の作業服からオシャレなワークウェアへ、という流れがあるのだろうか?
 
  「いや、一概にそうとも言えないんです。中小企業だと、若い社長に代わったタイミングでユニフォームも今風のカジュアルワーキングに一新、というケースもよくあるんですけれど、一方で大手は依然として定番のデザインというか、オーソドックスな作業服を好む傾向があります。ただ細身シルエットやストレッチ素材など、トレンドの移り変わりは確実にあって、たとえ"ド定番"であってもデザインの変化は求められていますね」(村田さん)
 
  ●"定番感"のコントロール
 
  「定番モデルなら、たとえばこれ」と村田さんが示すのは、「1260」「1280」のシリーズ。20年近くも売れ続けている"怪物商品"という。昔ながらのアースカラーの作業服なのだが、不思議と古さはまったく感じない。細身でもストレッチでもないものの、背中にプリーツもあるから動きやすさも充分。もし自分が会社のユニフォームを決める立場だったら「いろいろおもしろいのはあるけど、ま、これがいちばん確実かな」と選んでしまいそうだ。
 
  さらに村田さんは「1620」シリーズを紹介してくれた。これも5年近く売れ続けているロングセラーだ。背中のアクションプリーツや立体裁断、使いやすく収納力のあるポケットといった機能性、さらにすっきりしたルックスが息の長い評価を得ており、2018年には新色を追加している。
 
  「これは『現場服』として好評だった商品を、ユニフォーム納入向けにアレンジしたモデルです。特にパンツ(1622)との組み合わせが人気ですね。ウェストは内装ゴムになっていてシャーリングがないから、スッキリして見えるんです」
 
  「1260」「1280」のような正真正銘のオーソドックス感はない。だがユニフォームとしての安心感はちゃんとある。"定番ワーキングカジュアル"ともいうべき、ちょうどいい塩梅が魅力と言えそうだ。
 
  このような"定番感"の巧みなコントロールに感心していると、村田さんが再び口を開いた。
 
  「こういう新定番を超える"次の定番"を作っていかなきゃいけないわけですよ」
 
  こう言いつつ取り出したのは、今シーズンの新商品「1720」シリーズだ。なるほど、大定番の作業服から定番感のあるカジュアルワーキングと来て、その次は……って、えええ? なんだ、これは?(岡本太郎風に)。いや、決してヘンな服ではなく、むしろカッコいい。企業ユニフォームに大事な"きちんと感"もある。なのに、なぜこれほど心がざわめくのだろうか……。
 
  ●これが「NEXTスタンダード」だ!
 
  村田さんはゆっくりと「1720」シリーズについての説明を始める。
 
  「これはジーベックの"NEXTスタンダード"として企画した意欲作です。近未来系ユニフォームというか、従来の定番モデルに満足できない人に向けた提案ですね。たとえば、新しい社長が制服を一新しようというとき『もっとほかに何かないの?』と言われたりする。そんなケースで、デザイン性が高くてしっかりとしたユニフォーム感もあるこちらをどうぞ、というわけです。もちろんデザインだけでなく、耐久性・ストレッチ性・撥水性といったスペックも高レベルですよ、と」
 
  なるほど、たしかに「新味」を求めるユーザーは多いし、ユニフォームにも「ほかと同じようなのはイヤ」という声は確実にある。このウェアならはっきりと会社のアイデンティティーを表す制服となるのは間違いないだろう。ただ一方で、「目立つ」とも言える。これを欠点と捉えるか、利点と捉えるか、着用者の意識が試されるワークウェアだ。
 
  「正直、評価は分かれます。お客さんに見せると、だいたい『何これ!?』と言われる(笑)。でも、そのあと『これはない』という人もいれば、『おもしろい!』と言ってくれる人もいるんです。この商品のターゲットは後者のような違うことに価値を感じてくれるユーザーですね」
 
  ユニフォームの趣旨は、みんな同じ恰好をすることである。しかし、その「同一化」はあくまで会社やチームの中での話であって、「働く人がみんな同じような定番の作業服を着なくてはならない」というわけではない。たとえば、私立学校の中には、公立とまったく違うテイストの制服を着ているところもあるが、ユニフォームとしての機能はじゅうぶん果たされている。「独自性があって目立つユニフォーム」というのは、決して矛盾ではないのだ。
 
  チャレンジ作「1720」シリーズを通じて、村田さんは今後の商品展開のテーマを次のように語る。
 
  「カジュアルワーキングの波は続くので、まずデザインを重視した意欲的な商品を作ること。その上で、撥水や帯電防止などの機能性を追究し続けること。このデザインと機能性という2点でレベルの高いものを作っていきたいですね。昔は『高くても良いものを』というニーズがあったけれど、今は良いものでも安くないと売れない傾向があります。そういう時代だからこそ、ジーベックの信条である品質第一を基本に、お金をかけても欲しいと思ってもらえるようなワークウェアを作っていかなければ」
 
  安定性に優れた帆船にあやかって社名を決めたというジーベック。新定番を超える"次の定番"を求めて、航海はこれからも続いていく。
 
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ナチュラルな素材感が魅力の「2240シリーズ」
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意欲作「1720シリーズ」の前で

    

新定番を超えるNEXTスタンダードへ! ジーベックの"近未来系"ユニフォーム

「定番はイヤだし、流行りのアレもつまらないんだよなぁ……」という声に応えて登場した新感覚ユニフォーム。新開発のストレッチ素材は耐久性も高く、制電・撥水といった機能面も万全。定番カラーで安心感を演出してもいいし、上下別のツートンカラーで着るのもオススメ。フルハーネス対応モデル。


「軽い」は正義! 企業イメージまでアガる軽快ストレッチワークウェア

スポーツウェアをイメージした新感覚のワークウェア。着ていることを忘れるほどの軽さに、ストレッチ素材で動きやすさもバツグン。ポリエステル100%のため耐久性が高く、繰り返しの洗濯にも強いところは、さすがのユニフォーム品質。オーソドックス系から派手な色まで選べるカラーバリエーションもうれしい。