【アイトス】優等生で何が悪いimage_maidoya3
「不良の方が先生に好かれる謎の現象」という記事をネットで見かけて、思わず読み込んでしまった。問題を起こさず授業もすんなり理解する生徒より、授業中に騒いだりして勉強もできない生徒の方を教師は明らかにかわいがる、という話である。デキの悪い子の方が教育者としての腕を発揮できるというのもあるかもしれないが、そもそも人間というのは、調和のとれた平均点の人より、どこかいびつで欠落のある人を好む傾向があるのではないだろうか。つつがなく暮らす善男善女より、芸人やアウトローの方がモテるし、映画やマンガの人気キャラだって必ず何らかの弱点を抱えている。この構造は会社にも当てはまるだろう。みんなの好みに合わせた「最大公約数」的な商品を作るメーカーは、往々にして「××はつまらない」と言われ、逆に作りたいものを作るメーカーは「△△はトンがってる!」と支持を得る。しかし、あえてこの損な役回りを引き受けることに意義を感じるタイプもいる。不良の美学ならぬ「優等生の美学」である。

アイトス
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堺筋本町のアイトス本社
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「AZ-2501」を語る柴田さん
●アパレルではなくユニフォーム
 
  〽愛とスマイル♪ 愛とスマイル♪ 愛とスマイルで飛び出そう~♪
 
  柴咲コウが歌う「愛とスマイル愛とスマイル(※誤植ではない)」をパソコンで再生しながら、二人の男が体を揺らしていた。大阪は堺筋本町、繊維問屋街に立地するアイトス本社ビルである。この歌は同社がローカル局で提供していた番組「AI(アイ)とTOZ(トス)のLOVE働く体操」のテーマソング。さまざまな事業所を訪問して、働くことの魅力を発信する番組だった。ここ会議室には番組にも登場していた同社の公式キャラ、アイちゃんとトスくんも鎮座している。
 
  「見ての通り総合ユニフォームメーカーですよ。作業服や安全靴からメディカル、飲食店ウェア、事務服まで何でもあります。会社しての特徴は、納入が多いことでしょうか。ショップより安定して売れる企業納入をメインにしているメーカーで、作業服でいえば建築や土木より製造業や電気設備、運輸などの現場でよくユニフォーム採用していただいています」
 
  商品部門リーダーの柴田剛史さんは淡々と語る。なるほど、と言いながら分厚いカタログをペラペラめくってみると、たしかに「ザ・作業服」「ザ・ユニフォーム」の世界。ショップ売りを重視するイマドキのワーキングカジュアルとは明らかに一線を画している。しかし、旧態依然というわけではなく、そこには「あえてこの路線を選んでいる」という主張がほのかに見える。
 
  「私たちは、ただペン差しとカーゴポケットを付けた服を作っているわけではありません。企業用ユニフォームにおいて大事なことは、作業服としてのクオリティーの高さに加え、何年後であろうとまったく同じものがいくらでも手に入る『恒久生産と安定供給』なんです。企業からの発注に対して『去年とはちょっと色が違うんですが』『そのサイズは切らしていまして』『ロゴが去年より詰まり気味になっちゃいました』というのでは話にならない。アパレルではなく、ユニフォームメーカーですから。ただ安くてカッコいい服を作るのではなく、高くても機能的で企業が誇りを持てるユニフォームを継続供給しながら作っていく、コレが肝心なんです。だからうちは自社工場で製造しています。いまどき珍しいですよ」
 
  ●企業イメージと制服
 
  つまり、ユニフォーム会社は、ウェアを売ると同時に「まったく同じウェアがいつでもいくらでも手に入る権利」も売っているというわけだ。提供するのは商品とその将来におよぶ供給体制。こう考えてみると作業服メーカーというのはただの製造業ではなく、かかりつけ医や顧問弁護士のような一種のサービス業と言ってもいいかもしれない。
 
  さらに、柴田さんによれば、そんなユニフォームメーカーのサービスは「供給」だけでなく「回収」にまでおよぶようになってきているという。ウェアのリサイクルプロジェクト「BRING」への参加もそのひとつ。アイトスが使用済みユニフォームを回収し、協力工場でプラスチック原料へとリサイクルするサービスだ。
 
  「ユニフォーム屋として、売りっぱなしじゃなくて使用済みウェアの面倒まで見るべきではないか、そうすることで企業の社会貢献をサポートできるのではないか、というわけです。ただウェアからポリエステルのペレット(原材料)を作るだけじゃなく、来年からは、さらにそのペレットを使ったワークウェアの生産も始める予定です。この服から服へのリサイクルは、アパレル業界ではすでに行われています。ユニフォームの場合は品質基準が厳しくテストに時間がかかっていたのですが、ついに満を持してスタートといったところです」
 
  企業に毎年、ウェアを納入していけば、確実に一定量の排出が見込める。普通の服と違ってユニフォームは均一なので分別コストも抑えられる。ユニフォームのリサイクルは非常に理にかなった話なのだ。また、CSR活動というとやや仰々しい気もするが、考えてみれば、そもそも「企業のイメージアップ」はユニフォーム屋の得意分野でもある。
 
  「作業服で外を歩いている姿を見て『あ、××運送さんだ』となれば、スタッフの意識も高まりますよね。その結果、おのずと仕事への誇りや地域への愛着も深まっていくのではないでしょうか。ただ仕事をするだけならどんな服でもいいわけですが、『その分野のプロである』ことを体現するのは制服を含めた『身なり』だと思いますよ。このようにユニフォームには企業イメージを定着させる効果がありますから、単にカッコいいだけじゃダメなんです」
 
  ●ユニフォーム道を行く
 
  「見られる服」としてのユニフォーム。そんな企業イメージを作り上げる商品を作るアイトスのキーワードと言えるのが「最大公約数を目指すものづくり」だ。
 
  「ユニフォームって着る人が自分で選ぶわけじゃないので、そもそも100点の満足はありえないんです。会社には老若男女がいて体形もさまざま。その上で誰にでも似合うデザインを、ということになれば、『会社支給の作業服が自分の体にピッタリで見た目も最高』なんてことはまずない。ただ、それでも60点以上はクリアできる商品を作ろうという意識でやっています。支給されたウェアに袖を通したとき、誰もが『まあ気に入った』と言ってくれるような。こういうのが最大公約数を目指す、ということです」
 
  この話も、ユニフォームとアパレルはまったく違うビジネスである、という先ほどの話につながっているようだ。一部のユーザーから圧倒的な支持を得る"トンがった商品"を作るメーカーがあれば、一方で、アイトスのように「いかにもなユニフォーム」を作り続けるメーカーもある。多くのメーカーが前者を目指すようになっていけば、逆に後者に徹することで存在感を高めることができる。
 
  「ショップ売りの今風ワークウェアか、企業納入のユニフォームか、作業服メーカーはどちらかに特化していかざるを得ないと思います。で、アイトスは会社のユニフォームを選んだ。それでも、昔と同じものを作り続けていけばいいわけじゃなくて、素材や機能、カラーリングなどは今の時代に合ったものにしていかねばなりません。見た感じは『ザ・ユニフォーム』であっても、やはり特色やオリジナリティーは求められるんです」
 
  同社にも、細身ストレッチの「AZ-60601」シリーズをはじめ、いかにも若者ウケしそうなワークウェアのラインナップはある。しかし、一見ワイルドな印象のウェアであっても、"ギラつき"は感じない。威圧感を与えないような"味付け"が上手くなされているのだ。
 
  「アイトスは優等生でありたい」
 
  柴田さんは最後にポツリと言った。そう、不良だけじゃ教室は成り立たないのである。
 
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「ラングラー」は2年目に
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アイちゃんとトスくんの前で

    

「動きやすさ」の常識を打ち破る! ウルトラスーパーストレッチ「2501シリーズ」

新素材「ライトフィックス」を使用したストレッチのワークウェア。ストレッチ機能を持つウェアの素材として一般的な混ポリウレタン生地の代わりに、バネのような形状に加工したポリエステル生地を使うことで、軽さと伸縮性、耐久性を高レベルで実現した。動きやすさだけでなく快適性も文句なしのハイスペックウェア。


細身シルエットで軽快にキメろ! アジトのヘリンボーン「60601」シリーズ

中空繊維によって軽さと保温性を両立させたヘリンボーンのワークウェア。やや細身のシルエットは若々しい雰囲気。素材はストレッチ性があり、腕の動きを妨げない。電気設備などの作業で必要な帯電防止機能に加えて、吸水速乾素材の屋外作業向けモデル。ワイルド感ありつつもギラつきひかえめで、ユニフォームにもオススメ。