【旭蝶繊維】トレンド逆走の重防寒!image_maidoya3
編集部がやってきたのは福塩線の鵜飼駅。ごぞんじワークウェアの総本山、福山・府中エリアの中心である。駅前通りには作業服メーカーが立ち並ぶほか、紳士服の全国チェーン「洋服の青山」の創業地としても知られている(お店もちゃんとある)。つまり作業服からスーツまで、あらゆる働く人の服を作ってきたのがこの土地というわけだ。今回の訪問先である旭蝶繊維もこのワークウェア・ストリートに立地する創業80年以上の老舗メーカー。社屋に入るやいなや「ようこそ!」と、営業部の森田征治さんがハイテンションに迎えてくれた。さっそく最新の秋冬ウェアの展示を見せてもらうと……、おお、カッコいい! 「なんつーか、もっと昔っぽいウェアを作ってる会社だと思ってました」と正直に感想を述べると「あはは、意外でしょ! でもね、ただカッコいいだけじゃないんですよ……」。そう言いながら森田さんの目がギラリと光るのを編集部は見逃さなかった。

旭蝶繊維
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広島県府中市の旭蝶本社
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冷凍庫内作業などで使う極寒仕様ウェアも
●誰もやらないことをやる
 
  「ウチの特徴は、国内生産の割合が4割と高いこと。広島と山陰にある自社工場と協力工場で作っています。自社工場だと人も雇わなきゃいけないし、さまざまなコストもかかるわけですが、やはりストック体制が大事な商売なので。国内工場のおかげで、別寸のリクエストなんかもクイックに対応できますよ」
 
  森田さんは、旭蝶の強みについてこのように語る。ワークウェアに限らず、現代では服飾雑貨の生産は中国やベトナムなどの工場に依頼する海外縫製が主流になっているが、同社は「日本製」にこだわった生産体制を維持している。過去には地元(備後地方)のデニム生地メーカーとタッグを組んで「ALL MADE IN JAPAN」「国内生地・国内縫製」を謳ったデニム作業服を発売。郷土愛あふれるワークウェアは、大きな反響を巻き起こした。
 
  「デニムの作業服を始めたのはウチが最初です。せっかく備後には有名なデニムの生地屋さんがあるんだから、作ってみよう! というわけです。カッコいいという評価がある一方、こんなのワークウェアじゃないと言われたりもしましたが、チャレンジングな企画の方がおもしろい。『コレが売れてるから同じようなものを作ろう』じゃなくて『誰もやってないからやろう』と。新しいものをどんどん発信していくのが旭蝶というメーカーなんです」
 
  ●ポケットレスに熱い支持
 
  「ほかにも他社に先駆けた商品といえば」と、森田さんは一着のウェアを取り出して机の上に広げる。暖かそうな防寒アウターだが、何か違和感というか……あっ、ポケットがない! 胸も脇もツルンとしているのだ。えっ? いや、これ不便でしょ? 作業服なのに!? と混乱する編集部のリアクションを満足げに眺めると、森田さんはゆっくりとその意図を語り始めた。
 
  「これが旭蝶発の『ポケットレス』シリーズです。このアウター(14100ポケットレスブルゾン)には、外部のポケットはもちろん内ポケットすらない。収納力はゼロ。ところが、これが意外と売れるんです。たとえば、危険物を扱う工場やピッキングの現場などの場面。ポケットに入れっぱなしになっているライターが事故につながったり、お客さんに発送する段ボールにカッターやペンなどの異物が入り込んだり、といったケースを事前に防ぐことができます。また、このような『持ち込み』だけでなく、事務所から従業員がUSBメモリを持ち出したりといった『持ち出し』もポケットがないことで防げる。つまりは企業のコンプライアンスの面で重宝されるウェアなんです」
 
  ワークウェアといえば、誰もが胸ポケットや左腕のペン差し、パンツのカーゴポケットを思い浮かべるだろう。ここ数年はスマホや電子タバコなどのガジェットが増えたことで「ポケットを増やしてほしい」というユーザーが増えている。ところが、旭蝶ではこのような世の中の流れとは正反対に「ポケットをなくす」という選択をしていたのだ。では、そんな発想に至るきっかけとは何だったのか?
 
  「後加工で『ポケットを潰してほしい』という注文がけっこうあったんです。そういうリクエストを何度も受け付けているうちに、これは案外ニーズがあるんじゃないか、と思って商品開発に踏み切りました。これも売れないかもと心配していたけれど、意外とウケた。いわば逆転の発想ですね」
 
  ワークウェアの生命線であるポケットをなくす――。この大胆な発想が新境地を拓いたのだ。
 
  ●MASCOTが初上陸!
 
  さて、続いて「旭蝶らしい商品」として森田さんが、紹介するのは、持続撥水+防水防寒の「65600」シリーズ。同社の防寒ラインナップには、漁業や冷凍庫内作業で使われる「極寒モデル」があるが、それよりややスペックを下げて街でも使えるような「お手ごろ高機能アウター」に仕上げた。最大の売りはその撥水性能だ。
 
  「ただの撥水加工じゃなく、表面に特殊加工糸を使うことで『水滴転がり性』を持たせています。ウェアに水が付いてもハスの葉のように転がり落ちるので、悪天候や北陸地方のベタ雪でも快適に過ごせる。しかも素材の形状による撥水なので、洗濯しても機能が落ちにくい。もちろん防水もバッチリなので、長時間の雨からも着用者をしっかり守ります」
 
  いわば全天候型アウター。一方で、ここまでの機能は要らない人には新作の「65900」シリーズも用意している。スポーツテイストのライトな見た目に防水機能をプラスした、ありそうでなかったアウターだ。
 
  「これはカジュアルな見た目に反して意外とハイスペックという路線です。中綿は少なめですが防風仕様なのでけっこう暖かい。それに裏地までしっかりストレッチするから、とても動きやすいんです」
 
  このように充実した防寒ラインナップに、今シーズンからはさらに新ブランドが加わった。デンマークのワークウェアメーカー「MASCOT」シリーズだ。洗練のヨーロピアンデザインに独自のレイヤーシステムで、防寒ワークウェアの新たな世界を提示する。
 
  「MASCOTはこれがアジア初上陸。数年前からコンタクトを取ってやっと今回から輸入販売することができるようになりました。寒さのレベルに合わせて重ね着するシステムも合理的だし、カラーリングも特色があってすごくカッコいい。けっこういい値段がするので大口納入は厳しいかなと思うのですが、5~10人程度の会社とか、みんなと違うワークウェアが欲しい会社に提案していきたいですね。近年は比較的スペック低めの軽防寒が流行っているように見えますが、高いけれど高機能なものも支持されるんです、意外と!」
 
  軽防寒のカジュアル路線とは一線を画して、防水防寒や持続撥水といった「本格仕様」の道を突き進む旭蝶繊維。MASCOTという強力な援軍を得たことで、この独自路線はさらに際立ったものになりそうだ。
 
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スポーティーでもしっかり防水防寒
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独特のカラーも魅力的なMASCOT

    

見た目を裏切る本格派アウター! ストレッチ防水防寒65900シリーズ(NEW)

イマドキのカジュアルウェアのような見た目に反して、高い性能を誇る防水防寒アウター。特筆すべきはそのストレッチ性。裏地が糸で縫い付けないエンボスキルト仕様なので、ストレッチの妨げにならず全方向によく伸びる。上着のカラー展開も、定番色からビビッドまで豊富。冬季のユニフォームにするのもオススメ。


雪国ワーカーの命を守る! 反射機能がうれしい防水防寒65000シリーズ

スポーティーな見た目が魅力の防水防寒アウター。水の浸入は防ぎつつも透湿素材のおかげで着用感はサラッと快適。肩の前後と両膝のプリント+パイピング部は反射仕様。夕暮れや夜間の視認性もバツグンで、とことん雪国ワーカーの安全を追究。SSサイズのみレディースシルエット。