【コーコス信岡】五感で味わう極上スペックimage_maidoya3
広島県福山市と三次市をつなぐ福塩線――。特に景観がいいわけでも、鉄道マニアに人気があるわけでもないローカル線だが、ワークウェア好きなら一度は乗ってもらいたい路線である。もし福山から乗車する機会があれば、ぜひ運転席の近くに座ってじっくりと街並みを眺めてほしい。市街地を離れ、神辺駅を過ぎたあたりから××被服、△△繊維、○○白衣などなど、ユニフォーム系のメーカーや問屋が次々と現れるのに気づくはずだ。やがて線路は「つ」の字を描きながら北上。芦田川に近づいたあたりから大手メーカーが登場する。自重堂本社ビルの真横、上戸手駅で下車すれば、そこは中国地方が誇る繊維産業のメッカ。「ワークウェアの約束の地」である。無人駅の回収箱にキップを入れて向かうのはコーコス信岡。敷地をぐるりと回ってみると、ビル裏手の物流センターでは、スタッフが慌ただしく段ボールを運び出していた。季節はいよいよ秋から冬へ。繁忙期の真っただ中だ。

コーコス信岡
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コーデュロイがインパクト大な「GA-3910」
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ディテールにも小技が光る
●グラディエーターに注力
 
  建設土木から工場系の作業服にアメカジ系の「ディッキーズ」、鳶服の「関東鳶」、飲食サービス業向けユニフォーム、と手広い商品展開がウリのコーコスだが、意外にも「個人買い」を狙った商品はさほど多くない。その中で異彩を放つのが、多くの有力ショップの店頭に並ぶ主力ブランド「GLADIATOR(グラディエーター)」。古代ローマの剣闘士にあやかって「戦う男の鎧」とのキャッチコピーで、作業服のカジュアル化を進めている。
 
  今シーズンは、従来の総合カタログに加えて、初めて「グラディエーター」単独のカタログを刊行。モノクロ写真でヒゲ面のモデルを大きくあしらった表紙は、コーコスが漂わせている優等生的なイメージを覆そうという意気込みがうかがえる。このような「カッコいい作業服」にかける姿勢について企画部の小峯紳之介さんは次のように語る。
 
  「グラディエーター自体は2008年ごろからあったんですが、もっとブランディングに力を入れていこうというわけで、今回からカタログを独立させることにしました。冒頭にも『戦う男の鎧』『ワーカーの誇り』といった言葉を入れて、コンセプトをより際立たせています。グラディエーターが大事にしているのは『男っぽい感じ』。ただカジュアルで今風なデザインにするだけじゃなく、ミリタリーやアウトドアのテイストを取り入れることで、ワイルドな雰囲気や男らしさを前面に打ち出していこう、と」
 
  グラディエーターの中にはさらに、Gカーゴ、Gスポルト、Gガイアといったサブカテゴリがあり、ワーク以外のスポーツやアウトドアの場面でも活用できることをアピールしている。街でも着られるカジュアルな作業着は、今やどこのメーカーでも出しているが、コーコスの場合は、職人に好まれる派手でワイルドなデザインだけでなく、機能性を前面に打ち出した「ギア」として売り出していこうといった考えのようだ。
 
  「ひとことで言えばワーキングと多ジャンルのクロスオーバーですね。作業服の丈夫さや機能性をさまざまな場面で活かしてもらいたい。と言ってもただ『ポケットがたくさんあって便利』とかだけじゃないんです。たとえば、普通のアウトドアウェアに見えるこの商品(G-1016・フィールドジャケット)は、肩から腕にかけて黒い生地の切り替えを付けています。しかも6色の多色展開で、派手な赤やカモフラ柄もある。だからキャンプやハイキングに着ていくだけじゃなく、コーポレートカラーでそろえたりすればユニフォームとしても使えるわけです」
 
  ●デニムよりコーデュロイ!
 
  そんなグラディエーターの中で小峯さんが特に思い入れのある商品として挙げるのが、オールシーズン向けの上下モノ「GA-3910」シリーズ。ストレッチコードピケジャケットというネーミングからはイメージしにくいが、要はコーデュロイ素材のストレッチ作業着だ。やや細身のシルエットに男らしいルックスは、カタログの言葉を借りれば「着映え最強」。ワイルドさの一方で綿のやさしい風合いもあるので着用シーンを選ばない。活用度の高いアイテムと言える。
 
  「これは、デニム作業服のブームを受けて企画した商品です。ごぞんじの通り、近ごろの若い職人さんはみんな細身でストレッチ素材のウェアをカッコよく着こなしているわけで、うちでもああいうのを出したいな、というのはあった。しかし、さすがにストレッチデニムで作ったら他社とまったく一緒になっちゃうよね……、と。じゃあデニム以外の綿素材で何かないかな? と考えて浮上したのがコーデュロイというわけです。ウォッシュ加工することで生地も深みのある表情にすることができました。若い人以外にも似合う細過ぎないシルエットに、ストレッチ性もあるので、着心地はすごくいいですよ」
 
  凸凹のあるコーデュロイ生地は、丈夫で保温性が高いほか、上品なイメージがあるので秋冬物の女性や子供の服によく使われている。一方、コーデュロイのジャケットやパンツは存在感があり過ぎてコーデしにくいと言われるせいか、メンズカジュアルではほとんど見かけない。そんな癖のある素材を上下で合わせようというのは、作業着メーカー以外には出てこない発想だろう。
 
  「デニムは他社とカブるから」という開発意図は、そのまま着る側の「みんなと一緒はイヤ」にもつながる。想像してみてほしい。もし、他の人がストレッチデニム作業着の中で、ひとりだけ上下コーデュロイの「GA-3910」シリーズで固めていたら……。これはかなりの反骨ぶり、いや、まさに「粋」と言っていいのではないか?
 
  ●実感できる高機能を
 
  続いて小峯さんが「これも売れてます」と語るのは「G-3010」ストレッチシェルジャケット。ガテン系の「GA-3910」シリーズに対し、こちらは軽作業や事務所などで使えるソフトワーク系ウェアだ。見た目はよくあるウインドブレーカーやスタッフジャンパーのようだが、ストレッチ素材なので動きやすく着心地もいい。ありそうでなかなかない商品だ。
 
  「すごく普通っぽく見えて実は機能満載、という商品です。中綿なしのジャケットだからオールシーズンで着られるし、ストレッチするからずっと着続けていても疲れにくい。右胸の縦ファスナーポケット、左袖のマルチポケットと収納性もある。袖口もベルクロで調節できるからデスクワークがしやすい。首の後ろには反射テープ。さらにコンパクトに収納できる袋までついてくる。あまりに使い勝手がいいので、当社女性スタッフのユニフォームにも採用されました。価格もお手ごろで、評判いいですよ」
 
  なるほど、聞けば聞くほどコストパフォーマンスのよさがわかる。デザイン面でも、肩や脇に黒の切り替えを入れることで新鮮な味わいを出している。赤・黄・青にカモフラ柄までそろえた全7カラー、SSから5Lまでの8サイズ(Sサイズ以下は女性対応シルエット)といった幅広い展開も、カジュアル衣料にはマネできまい。まさにユニフォームメーカーの面目躍如と言える商品だ。
 
  「デザイン的にカジュアル衣料との差がなくなってきていますからね。やはり、素材や機能で差をつけていかないと……」
 
  そう言いながら小峯さんは、「ニオイクリア」シリーズのソックスを取り出す。よくある消臭加工ではなく、消臭糸を織り込むことで「明らかに違いを実感できる」とアピールしている商品。しかもその防臭効果は半永久的に持続し、酢を使った「酸戻し」で消臭効果を復活させることもできる。このように機能性インナーでも、今後はカジュアル衣料と一線を画した性能をPRしていく考えだ。
 
  「もともとコンプレッションウェアで使っていた技術ですが、普通のインナーにも応用していこう、と。冬場は意外と足が蒸れますから、ブーツを履く女性なんかにもぜひ試してみてほしいと思っています」
 
  ハードな作業着からカジュアルタイプのユニフォーム、高機能インナーまで。今シーズンのコーコスに死角はない。
 
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「ニオイクリア」も続々と新商品が
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「グラディエーターをよろしく」と小峯さん

    

ワーカーの色気はコーデュロイで醸せ! 着映え最強の「GA-3910」シリーズ

コーコスが自信を持って贈る「グラディエーター」本格ワークウェア。生地はストレッチ性のあるコーデュロイをワンウォッシュ加工。やや細身で男っぽいルックスの中に品の良さも漂わせる。上下カラーをそろえればハードワーク風、色違いにしすればカジュアルワーク風、と着回しが効くのもうれしい。


ワイルド&タフに駆け抜けろ! ワークパンツの鉄板「Gカーゴ」シリーズ

ワークパンツにカジュアル感とミリタリーテイストを加えた新定番のカーゴ。生地だけでなくウエストも伸びるストレッチ仕様なので、着心地ラクで足さばきもよし。シルエットはやや細身で、作業のほかカジュアルワークにも違和感なし。裾は通常に加えてジョガーやジッパータイプも。