【ナガイレーベン】感染予防も「耐久性」でimage_maidoya3
神田駅すぐのナガイレーベン本社は、2019年に訪れたときと何も変わっていなかった。相変わらず受付にはナース姿のミッフィーが座っていて、看護の歴史も学べる交流スペース「いとなギャラリー」では個展が開かれている。いたって平穏。だが2021年4月現在、同社ウェブサイトのトップに次の言葉が掲げられているのをごぞんじだろうか。「医療従事者のみなさまへ あなたの勇気、忘れない」「私たちは、ナースへの感謝とリスペクトを心から捧げるとともにナースのさらに身近な存在であるための惜しみない努力を重ねてまいります」。昨年3月、WHOから新型コロナのパンデミック宣言が出ると、同社では4月にリユーザブルマスク4万枚を、続く5月には緊急生産したアイソレーションガウン1万枚を医療機関や自治体に寄付。そして1年経ったいまも医療現場の感染対策をサポートし続けている。毎年恒例の展示会も医療機関での採寸もままならないなか、白衣メーカーもまたコロナと闘っているのだ。

ナガイレーベン
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医療機関に寄付した「リユーザブルガウン」
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首元までカバーできる新作ドクターコート
●「オンライン試着」スタート
 
  取材に応じてくれたのは営業本部の大山祥子さん。製品の試着もできる「ナースルーム」で近況を聞いた。コロナ禍はまだ続いているものの、取材時点(2021年3月末)では、同ルームでの試着や商談などは可能という。ただ、2020年以降、新作ウェアのお披露目となる展示会はほぼゼロ。2021年を迎えた今も展示会はもちろん、病院での採寸などもほとんどできない。医療機関に出入りすることすら難しいのだ。
 
  「オンライン展示会をやりませんか、といった専門業者からの提案もあったんですが、そこまでのコンテンツが用意できるのかという声もありまして……。いろいろ検討した結果、2021年2月からリモート商談のご案内を開始しました。ショールームからzoomなどのオンライン通話で商品のご案内をしています。さらに、この3月から新たなサービス『デジタルフィッティング』もスタートしました。バーチャサイズというサイズ推奨システムを使うことで、Webカタログの画面からそのままウェアが自分の体型に合うかどうか、チェックすることができます。オンライン試着とも呼ばれる技術です。」
 
  そんなことができるのか、と思って実際に使ってみた。ウェブカタログをクリックすると「こちらの商品が試着できます」と表示が出るので、性別に年齢、身長・体重・ブラのカップ数(女性のみ)などを入力すると、おすすめのサイズを提案してくれる。これらの情報に加えて、バスト・ウエスト・ヒップ、肩幅・二の腕・もも周り・股下といった数値も入れて診断してもらうこともできる。過去に買った服があれば、検討中のウェアとサイズ比較することも可能。もちろん、実物に袖を通した方がいいのはいうまでもないけれど、次善策としてはかなり使える。
 
  「展示会で試着してもらったりするのも大事だし、例年ならこの時季、採寸に行った病院で感想をうかがって次の企画につなげたりというのもあるんですけどね。とにかくやれることをやろう、と」
 
  ●衛生ニーズへの対応
 
  一方、昨年から続くコロナ禍は、商品の動きにどう影響しているのだろう。
 
  「2020年の春は全国的にマスクが足りなかったので、まずは洗って再利用できるリユーザブルマスクを4万枚寄付しました。続いて取り組んだのは医療現場の感染対策として必要なガウンの増産です。ほかの商品を作る製造ラインも回して、ガウンに全力を注ぎ、5月にはリユーザブルアイソレーションガウン1万枚を届けることができました」
 
  さらに、コロナ対策で需要が高まったのは、マスクやガウンといった防護用品だけではないという。
 
  「ウイルスの付着などに気を遣わねばならず、洗濯頻度がアップしたことでウェアの注文が増えました。今まで職員が自宅に持って帰って洗っていたような医療機関でも、工業洗濯を利用するようになったりして何かと枚数がいるようになっています。つまり、ガウンだけじゃなく白衣もたくさん作らなきゃいけないわけで、かなり大変な状況でした。それでもなんとか、企業活動を止めずに現場の力にならなければ、という感じですね」
 
  ナガイレーベンのウェアは耐久性が自慢だから、洗濯頻度が増えたところで問題はない。だが、今後の商品展開にはこのような「衛生意識」の変化が影響してくるという。たとえば「抗ウイルス」といったニーズにはどう応えていくのだろうか。
 
  「弊社では現在のところ抗ウイルス素材のウェアは扱っていません。抗ウイルス加工はコットンにはうまく定着するけれど、綿の割合が多い白衣は耐久面で問題がある。だから弊社の白衣はポリ100%から85%程度が多いんです。つまり現状では、素材と加工の相性がよくない。またコットンに抗ウイルス加工をしたとしても家庭洗濯はOKでも、工業洗濯の繰り返しに耐えられるかといえば厳しい。そもそも従来の抗ウイルス加工が未知の部分が多い新型コロナに効果があるのか、といったことも慎重に見極めないといけないと思っています」
 
  コロナ対策においても、カギになるのはやはりウェアの耐久性だ。
 
  「一次消毒といって、いま医療機関では熱湯や次亜塩素酸の消毒液に浸してから洗濯に出すケースが増えています。通常の洗濯に加えて負荷がかかるわけですが、それでも白衣の生地は耐えられるのか、品質が保てるのか。弊社ではこういったことを考えて白衣を選んでいただきたいと提案しています。消毒液に漬けたら穴が空いた、という話も聞きますけど、弊社の製品なら大丈夫です。『消毒液でも色落ちしない』『熱湯でも型崩れしにくい』といったことをどんどん発信していければ、と」
 
  ●感染対策だけじゃない
 
  洗濯や消毒への対応に加えて、商品のデザインにもコロナの影響はでてきている。その代表例といえるのが、2021年の新作「アツロウタヤマ」シリーズのドクターコート(型番:ATX-1000/ATX-1010)だろう。一見すると以前からあるようなブランド白衣に思えて、じつは新型コロナに立ち向かう現場の声を踏まえた画期的モデルなのだ。
 
  「このドクターコートは2通りの襟を使い分けることができます。通常はスーツのように開いているけれど、ボタンを留めれば首元まで詰まった立襟になる。ちょうど歯科医が着ているケーシーのような感じです。患者さんに向き合うとき、飛沫感染などのリスクをできるだけ小さくしたいというニーズがあって、このような2WAYデザインを採用しました。スクラブの上にドクターコートを羽織っていたりすると首元が露出してしまうけれど、これなら着替えずにサッと肌を覆えるわけです」
 
  感染予防を意識した「立襟」デザインは、新作のチュニックやスクラブでも採用されている。
 
  「感染予防に加えて、肌を出さないことで性別を意識させないといったメリットもあります。近年はSDGs(持続可能な開発目標)やジェンダー配慮の観点から男女兼用モデルへのニーズが高まっていて、病院のほか、大学の医学部や看護学部でも、男女でデザインやシルエットが違うことに抵抗を感じるケースが増えてきている。学校制服と共通するような流れです」
 
  コロナばかり注目していると忘れがちだが、以前から、医療の現場は長時間労働や各種ハラスメントなど多くの問題を抱えていた。目下のコロナ対策に加えて、働き方改革やLGBT対応なども同時に進めていくことが求められるだろう。そう考えれば、今後も白衣に求められる役割は増え続けていくに違いない。
 
  「医療機関にとって大変な状況ですが『白衣を着てしまえば、コロナは怖くない』と言ってくれるナースもいるんです。そういう声にしっかり応えられるメーカーでありたいですね」
 
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一次消毒をものともしない耐久性が自慢
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聴診器の持ち歩きに適したドクターコートも

    

首元カバーで感染予防! コロナ時代を生き抜く最強ドクターコート

新型コロナなどの飛沫感染を防ぐためにデザインされた最新モデルの診察衣。「ATX-1027」はシャープな印象のスタンドカラー。ごく普通の白衣に見える「ATX-1000」「ATX-1010」も、首元のボタンを留めることで「立ち襟化」可能。2WAY仕様で日常業務から感染リスクの高い診察までバッチリ。


もう聴診器は落とさない! プロフェッショナルための専用ポケット付き診察衣

聴診器がしっかり収まる専用ポケット付きドクターコート。左右の腰ポケットはチューブだけでなく、耳管まですっぽり収納。肩にかけた聴診器も左胸の固定具と右胸のチェストピース専用ポケットで安全確実にキープする。聴診器が手放せない呼吸器や循環器、消化器系ドクターに捧げる逸品。