【バートル】異端から王道へ!image_maidoya3
「バートルと言えばカッコいい。バートル着てればカッコいい」--。初めてバートルを訪ねたときの大崎社長の言葉をよく覚えている。派手な柄ものスーツに身を包んだ社長は、こう言ってニッコリと破顔したのだった。あれから数年、本誌の取材以外でもショップで売れ筋の作業服を見たり、プライベートでもさまざまなウェアを身につけてたりと、ワークウェア経験を重ねてきた。取材者として、なるべくメーカーが偏らないようにしているが、鏡に映った姿にグッとくるのは、やはりバートルが多い。ほかにも横断歩道で待っているとき、横に作業服の人がいて「いいウェアだな」と思ってチェックしたらやっぱりバートルだったり……。「バートル=かっこいい」は伊達じゃなかった、と思い知らされる日々だ。そして今回のバートル訪問は、じつに1年ぶり。広島県府中市の本社に近づくと、おなじみの巨大ロゴが登場した。さあ、酔いしれようじゃないか、暗い世相を吹き飛ばすバートルの圧倒的世界に!

バートル
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府中市のバートル本社ビル
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新作について語る森近さん
●新作は「絶妙路線」
 
  取材に応じてくれたのは営業部の森近さん。2021年2月にカタログ掲載された春夏コレクションはこれから今まさに出荷のピークを迎えているという。では、さっそく今シーズンのバートル商品について、たっぷりと魅力を語ってもらおう。
 
  「今回のテーマは、強いて言えば『ユニフォーム回帰』ですね。ワークマンがテレビの情報番組で特集されたり、ワークショップに普段着を買いに来るお客さんが増えたりした影響もあって、作業服はどんどんカジュアルでスポーティーになっていく。カッコよくなるのはいいことだけど、このままアパレルと一緒になってしまっていいのだろうか、というのはありました。僕らはユニフォームメーカーですから。たとえば、近頃はデニムの作業服が流行っていて、差別化のために激しい脱色やダメージの加工をしたりしていますが、その流れはユニフォームとしてどうなのか、と。しかも集団で着るわけですから。このまま威圧感がエスカレートしていくと、制服として受け入れてもらえなくなるかもしれない。でも、従来のデザインのままじゃユーザーはついてきてくれない。そんなわけで、今回のラインナップは今時のカッコよさに加えて、ユニフォームとしても採用できる絶妙なところを狙いました」
 
  バートルがプロショップやホームセンターの売り場で人気なのはご存知の通り。だが一方で、近年は物流や軽作業といった現場のライトな制服としても注目されるようになってきている。ガテン系な空気を抑えたカジュアル作業着は、建設や土木だけでなく、さまざまな事業所で活用できるのだ。しかし、制服として考えたとき、ストレッチデニムはやや問題がある。2、3人ならともかく、数十人の作業員がダメージ加工のデニム上下でぞろぞろ歩いて来るのは企業イメージ的に問題がある。早い話、コワイのである。
 
  ●「デニムの壁」を越える
 
  「というわけで、今回の目玉はこれですね」と森近さんが紹介するのは、新作の「1811シリーズ」。そんなこと言って結局デニムじゃん、と思いつつよく見てみると、おなじみのカジュアルユニフォームのニュアンスも感じる。新規軸なのに定番感もたっぷり。なんとも不思議な感じのするウェアだ。
 
  「デニムのように見えてデニムほどカジュアルではない。こういうテイストを作り出すために工夫しました。まず生地は、ムラ糸を片サイド染めして作ったもので、霜降りのような感じになっています。さらにミソといえるのがカラーリングで、4色ある中でイチオシはミルスグリーンです。青系だとけっこうデニム感ありますけど、このカラーだとほとんど感じられない。それでいて、今風のスタイリッシュな雰囲気もある。バートルといえば、キャメル系カラーのイメージがあるかもしれませんが、最近はこのミルスグリーンがすごく売れているんです」
 
  デニムの作業着は、もともと「人と違うウェアを着たい」というニーズから生まれたジャンルだ。そんな異端アイテムが次第に普及し、デニム作業着は今や「定番」となった。ところが、先ほども述べたように「デニム制服」はありえない。「定番作業服」と「ユニフォーム」の間には、まだ大きな乖離がある。1811シリーズはその“壁”を乗り越える戦略商品と言えるのかもしれない。
 
  「やはりユニフォーム採用となると数字も大きいですから。デザインやカラーに加えて価格帯なんかも意識して、積極的に狙っていますよ。先日もこの1811シリーズを300人くらいの会社に採用していただきました。今やけっこう大きい事業所でもカジュアル作業着を制服にしたりする。ただ一方で、ショップでの個人買いも大切です。『機能美とカジュアルの融合』とよく社長も言っていますが、『プロフェショナルのためのウェア』という基本を忘れちゃいけないし、着心地や耐久性に満足してもらえないとリピート購入もないですから。あと、個人買いは企画にもすごくプラスになっています。お店で買った職人さんがバートルの公式インスタグラムにコメントをくれるんですけど、『こうならよかったのに』『もっとこうしてくれたら』といった声が、商品開発のヒントになるんです」
 
  新作のデニム作業服「5011シリーズ」も、そんなユーザーの声から生まれた商品だ。「デニムは弱くて困る」「もっと丈夫な生地にできないか」との声を受けて、コーデュラ系を編み込んだ「耐久性特化モデル」として開発した。
 
  バートルの強さの秘密は、ユーザーとの信頼関係なのだ。
 
  ●エアークラフトがまた進化!
 
  さて、バートルの夏物といえばファン付きウェア「エアークラフト」である。毎年バージョンアップを重ねる人気アイテムだが、今年は一体どんな進化を遂げているのか。
 
  「フルリニューアルした2021モデルの売りは『風量』です。新型のリチウムイオンバッテリー(型番AC260)のパワーは13ボルトと、昨年モデルと比べて1ボルト上がっただけ。しかし、風量は最大で毎秒70リットルと、前年モデルと比べて約10リットルもアップしています。秘密はこの新型ファン(型番AC270・AC271)。羽根を6枚から5枚に減らすことで、大量の空気を取り込めるようになりました。このようにデバイスは大幅にパワーアップした一方、音はやや静かになっています」
 
  エアークラフトのデバイスは京セラI.T.とのコラボ開発。電子機器メーカーの専門力を活かして、今年も大幅なパワーアップを実現させた。毎年、風量は各メーカーの中でも最高クラスだが、今年はもはや独走態勢の感がある。なお、新型ファン・バッテリーともに旧モデルとの互換性があるので「新デバイスを買って去年のバッテリーを予備にする」といった使い方も可能だという。
 
  では、一方のウェアはどうか。エアークラフトの新作ウェアの中から、森近さんのオススメを聞いた。
 
  「イチオシは、ミリタリー風の『1154シリーズ』とアウトドア風の『1084シリーズ』。ファン付きウェアって、デザイン的にシンプルでカラーも単色のものが多いんですけど、そういうイメージを覆すアイテムです。両方ともベストと半袖の2タイプ展開。見た目のカッコよさもすごいんですけど、個人的にはフードが気に入っています。耳の部分をメッシュにしてあるので、フードをかぶっていても音が聞こえづらくならない。こういうのは作業者の安全にも関わってきますから、ユニフォームメーカーとして今後もこだわっていきたいですね」
 
  今年も猛暑が予想される。風量アップした最新版エアークラフトが切り札となりそうだ。
  *編集部注:1154シリーズは生産が遅れているため、7月中旬の入荷予定です。
 
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エアークラフトも絶好調!
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本社ビルのロビー前で

    

これがバートル流“フォーマル・デニム”だ! 制服としてもイケる「1811シリーズ」

人気のデニムテイストとユニフォームらしい「きちんと感」を両立させたストレッチ作業服。ムラ糸を片サイド染めして作った生地は、ナチュラル感がありつつ上品な風合い。伸長率20%のストレッチ素材は動きやすさもバッチリなので、デニム系ユニフォームをご検討の方は要チェック。上下ともSサイズ以下はレディース対応シルエット。


デニム作業服へ、バートルからの最終回答! 耐久性MAXの「5011シリーズ」

高強度ナイロン「コーデュラ」混紡糸の生地で作った最強デニム作業服。コットン100%のデニムと比べて耐久性は4倍以上。しかもストレッチの伸長率は27%と着用感もピカイチ。フロントジッパーは腰袋などのアクセスを考えたダブルジップ仕様。上下ともSサイズ以下はレディース対応シルエット。