【桑和】ついに価格破壊!image_maidoya3
桑和について語るのはなかなか難しい。まず、作業服からツナギ、サービス用ユニフォームまで作るメーカーなので何を取り上げるべきか悩む。で、価格帯はお手頃だからシンプルかと言えばそうでもなくて、意外と凝ったデザインが多い。じゃあ、ユニフォームにできる優等生なウェアが多いかと思えば、かなりヤンチャな“ワル顔”アイテムも取りそろえている。おまけに夏の目玉であるファン付きウェアは「独立系」で、ブルゾンやベストでは飽き足らずツナギやサロペットにまでファンを取り付けてしまう。しかもそのデバイスにも2種類あって……と、このへんでやめておくが、とにかく桑和は「なんでもあり」だ。コンセプトやブランディングといったビジネス界のセオリーを嘲笑うかのように、次から次へと、あれもこれもと、好き放題にアイテムを繰り出してくる。受け止める側も大変だ。しかし、この「奔放さ」がけっこうクセになったりするのである。

桑和
image_maidoya4
新商品のデニム作業服
image_maidoya5
「カジュアル寄せ」のカーゴパンツ
●人気商品の「夏バージョン」
 
  今回、取材に応じてくれたのは、洲脇さんをリーダーとする企画チームのみなさん。2021年春夏物のカタログは1月に発表されたものの、コロナ禍で展示会ができなかったので、最近はYouTube動画の作成などに力を入れているという。さっそく今シーズンのラインナップについて総論から聞いていこう。
 
  「まず、メインはもちろんファン付きウェア。次にそれに合わせるパンツもの。あとは、2020年の秋冬物で好調だったアイテムの夏バージョンというか、薄手の生地で作った商品です。つまり一年中、同デザインのユニフォームとして着られるようにしたわけです」
 
  そんな「秋冬商品の夏バージョン」の代表的なモデルが「3088シリーズ」だ。もはや定番と言える細身ストレッチ素材のカジュアル作業着だが、デザイン上の工夫は意外と多い。
 
  「カッコよく見せるために、ポケットの見た目を小さくしています。でも中身は広くて大容量。おすすめはアーミーグリーンで、これまでのユニフォームではあまりなかったカラーリング。緑っぽい生地に茶色のステッチを入れることで、カジュアル感を出しました。形としてはド定番なんだけど、新しい印象も受ける。そんな路線を目指しています」
 
  さらに、秋冬物の夏バージョンであり、定番感のある商品として「5048シリーズ」も登場。こちらの謳い文句はなんと「業界初の防汚ストレッチ作業服」だ。
 
  「綿100%なのにストレッチする画期的なウェアです。溶接や製鉄など、火を扱う現場向けに作りました。動きやすいストレッチ作業服を着たいんだけど、化繊だと熱で溶けちゃうからダメ、というニーズです。綿100%だから肌触りも優しいし、通常のストレッチ作業着よりはゆったり目なので、長時間着ていても疲れにくい。しかも、防汚加工されているからお手入れもラクです。綿のウェアが必要なハードワークの現場でぜひ使ってほしいですね」
 
  ●パンツ企画の発展系?
 
  以上のような「秋冬物の夏バージョン」のほかにも、既存商品から派生して登場した商品がある。新作の長袖ブルゾン(型番1092-00)は、対応するカーゴパンツ(型番1092-08)の“後追い“で生まれたデニムジャケットだ。近年は夏にファン付きウェアを着るのが普通なので、夏用ウェアは「上下もの」をやめてパンツだけの企画をするケースが多い。このシリーズも、もともとは「ファン付きウェアに合わせるデニムパンツ」という提案だったのが、今年から「上下もの」に化けた。
 
  「パンツが好評だったので『上も作っちゃおう』と。当社のデニム作業着としては、583シリーズに続く二つ目です。583はステッチの入り方が派手で、こだわった商品だったのに対して、この1092シリーズはいろんな人に刺さるようデザインを心がけました。シルエットもそこまで細身じゃないから、ワーカーだけでなく普通の人も着こなせる。それでも、機能面はしっかりワーキング仕様です」
 
  確かに、12オンス糸の生地はナチュラル感があって、昔ながらの古き良きジーンズといった印象だ。色落ちはハードだけれどイカツさは控え目。ブルゾンの裾はアジャストボタンで広げられるようになっており、腰袋やベルトへのアクセス性も考えられている。そしてペン差しは胸や左袖だけでなく、カーゴパンツの右太ももにもある。いかにも真面目な桑和らしい。
 
  「人気のワークマンプラスの影響もあって、ワークショップで普段着を探す人が増えてきているんです。そうなるとワークウェア感がありすぎる商品は売れないから、カジュアル感に寄せて行かなきゃいけない。一方で、キャンプやアウトドアで使うお客さんは機能性を求めているわけだから『カジュアルウェアのワーキング寄せ』といった路線も求められる。うちはその両方をやっていきます」
 
  この「両立路線」の象徴とも言えるのが、二つの新作パンツ。ペンキを散らしたようなド派手な迷彩柄が目を引くカーゴパンツ「2582-08」は、ワーキングのカジュアル寄せ。モンベルや好日山荘で売られていそうなクライミングパンツ「0298-08」は、カジュアルのワーキング寄せ。もちろん、前者を現場で着こなしてもカッコいいし、後者を普段着にするのもアリだ。
 
  ●「コンプリートセット」登場!
 
  では、いよいよ本丸のファン付きウェアについて聞いていこう。桑和は「空調服」でも「空調風神服」でもなく、独自デバイスのEFウェア。それもまだ初登場から3年目だから、かなり後発だ。しかし、後発には有利な点もある。先発グループの商品を研究しながら、じっくり商品展開ができるのだ。
 
  「先行する他社製品など、すでに職人さんの間ではかなり普及しているという事情もあって、当社では一般人も含めていろんな人に刺さるような企画を考えています。ウェアをカジュアルなデザインにしたりというのもあるんですけど、価格面の差別化でもかなり一般ユーザーを狙ってます」
 
  こう言って洲脇さんが取り出したのは、「コンプリートセット(型番19009)」。ウェアとファン2個、バッテリー、スイッチケーブルをひとつの箱に収めたEFウェアシリーズの廉価版だ。驚くべきことに実売価格は「1万円以下」。他メーカーでファン付きウェアを買いそろえると2万円はかかる上、服を選ぶ手間もかかる。とにかく安く、手軽に導入したいユーザーにとって魅力的な商品と言える。
 
  「コンプリートセットは、いわば“入門用”です。ワーキングウェア人気もあって、いま普通の人までファン付きウェアに興味を持つようになってきている。『なんかよくわからないけど、良さそうだな』と気づき始めたんです。このセットはそんな層に訴える商品として企画しました。他社の最新モデルと比べてパワーは劣りますが、エントリーモデルとしては充分。スマホ用として市販されているモバイルバッテリーも使えるので運用面でも便利ですよ」
 
  ウェアの商品展開も先発グループの隙間を狙っている。今年は長袖・半袖のブルゾンやベストの新作に加えて、ツナギ(型番7789-20)やサロペット(型番7789-24)が登場。酪農や造園といった「農」の分野にファン付きウェアをアピールしていく。
 
  価格破壊の「コンプリートセット」で度肝を抜いたかと思えば、ツナギやサロペットで新天地を開拓……。やはり桑和は「なんでもあり」だった。
 
image_maidoya6
新作のEF用ベスト
image_maidoya7
「コンプリートセットをよろしく!」

    

ワーキングからワークアウトへ! 仕事でもスポーツでもイケる「0188シリーズ」

作業からジョギングやサイクリングまでこなせる動きやすさMAXの作業服。スポーツ用品のような高いデザイン性を、縦・横に伸びるストレッチ素材で実現。生地はひんやりした肌触りの接触冷感タイプだから夏でも快適。オススメは足さばきのよい「ジョガー」タイプ。足元スッキリなので高所作業もバッチリ。


ハードな色落ちは現場の華! SOWAのストレッチデニム作業着「1092シリーズ」

ジーンズの街・児島のSOWAだから実現できたスタイリッシュなデニム作業服。ストレッチ性のある12オンス生地は、デニムの伝統を感じさせながらも、動きやすくて着用感もラクチン。腰袋との兼ね合いを考えた裾アジャストボタンやパンツのペン差しなど、生真面目すぎるほどワーキング仕様。