馬喰町は東京でも一二を争うユニークな地名だろう。初めて耳にしたときはなんか辺鄙な場所かと思ったが、東京駅の目の前で驚いた。江戸時代には奥州街道の起点として牛や馬の取引で栄えたという。そして今は、繊維製品や雑貨の問屋が立ち並ぶ問屋街として有名だ。8月初旬、久しぶりに訪れたボンマックス本社は、あい変わらず華やいだ雰囲気。ロビーには『キネマの神様』『おかえりモネ』『マスカレード・ナイト』など、同社が衣装提供した映画やドラマのポスターが、ところ狭しと貼られている。ここ1、2年、展示会や商談会など“表舞台”から遠ざかっている感のあるユニフォームだが、女性用オフィスウェアは映像作品の中でしっかりとその“仕事”をしているのである。
ボンマックス
伊川さん(右)と佐々木さん
新作のベストは自信作
●春夏スキップ!
「いやぁ、いいタイミングで来てくれましたねー!」
のっけからこう語るのは営業の伊川さん。コロナ禍の企業訪問は何かと気を使うけれど、これ以上ないほどの歓迎ぶりだ。事務服はただでさえ「斜陽」と言われている上、感染拡大で展示会や商談もままならない。それなのに何なんだ、この明るさは?
「実はいまwebでの事務服の販売がすごく好調なんですよ。コロナ禍でサービス業が大ダメージを受けたのに加えて、オフィスもテレワークが広がったこともあって『事務服ってもうダメなんじゃ……』といった見方もあったんですが、フタを開けてみれば2020年も21年もボンオフィスには熱い支持をいただきました。残念なことに飲食店やホテルでの需要は低調ですけれど、オフィスの方は意外とダメージがなかった。そもそもテレワークできるような職種じゃなかったわけですね。事務服を着る人たちというのは」
おもしろい指摘だ。オフィスのIT化によって一般職の女性が減ったのに加え、服装のカジュアル化もあって日本独特の「事務服」というのは消えゆくものと見られていた。新型コロナのパンデミックが始まってからは、テレワークを活用することでオフィスを縮小させる会社も出てきている。しかしその結果、逆に「職場に行かなきゃできない仕事」にスポットが当たり、その働き方やファッションに注目が集まっているのだ。要するに事務服は業務に欠かせない「現場服」だったわけだ。
「いま事務服を支えているのは、小口のお客さんですね。特にコロナ禍で暮らしを支えるために奔走している農協、信金、そして病院です。去年の緊急事態宣言のときには展示会もなかったので買い控える動きもあったようですが、今年になっても同じ状況が続いていることもあって『もうwebで買っちゃおう』と。じつは、ウチもある程度こうなることを予想して商品を用意していたんです。それが今ご覧になっている21年秋冬物の新作というわけです」
デザイナーの佐々木さんが、待ってましたとばかりに語り出す。
「春夏物を企画している段階で、21年は秋冬物メインで行こうと決めたんです。春夏物の新作も進めていたんですけど、コロナのせいで海外工場の稼働状況や物流事情は悪くなる一方。話し合った結果『もう下手に新作を出すより、既存商品を売ることに力を入れよう』と。で、春夏をスキップすることにしたわけですが、秋冬も通常進行だとコロナの影響を受ける。というわけで前倒しで開発し、例年よりひと月早くカタログを出すことができました。懸念していた通り、感染拡大でベトナムの工場がストップしたり海上コンテナが止まったりしてしまったけれど、早めに量産しておいたおかげで切り抜けられました」
感染の波はある程度、予測できる。見通しを立てればあらかじめ対策しておくことができる。どこかの政府に教えてあげたい危機管理能力だ。
●制服でSDGs推進
コロナ禍の営業では、展示会の代わりとして行った内見会に手応えを感じているという。
「展示会の方が勢いはあるんですが、商品をゆっくり見てもらってじっくり説明して……というわけにはなかなかいかない。せっかくデザイナーが直接お客さんに説明できるのに、そんな時間がなかったり。東京の展示会なんかお客さんの回転がすごいから名前を覚えるのも大変。一方、内見会は商品をひとつひとつ紹介できます。21年の春夏物に新作を出さないというのも、発表だけだとネガティブな印象になると思うんですが、お客さんに直接話せば理解してもらえる。本当にやってよかったです」
春夏に新作を出さなかったぶん、秋冬物はじっくりと戦略を練り、納得のいくラインナップを打ち出すことができた。
「内見会でお客さんの反応なども踏まえて研究した結果、たどり着いたのは『制服ってこうだよね』という感覚です。ごぞんじの通り、事務服ってなんか時代遅れだし、接客やサービスに特化させる方向で生き残っていくしかないのかな、と思っていたんですが、コロナ禍で逆にオフィスに注目が集まった。今さまざまな企業がSDGsのメッセージを発信しているわけですが、制服が表現している『清潔』『誠実』といったイメージがプラスになるんです」
2015年の国連総会で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)は17の目標からなる。貧困や飢餓、ジェンダー差別、水資源の管理、気候変動といった問題の解決を目指すもので、その根本には倫理がある。要するに誠実を心がけ「世界のために正しいことをしよう」というわけだ。制服というのは組織の士気を高め風紀を保つためのツールだから、まさにSDGsにはもってこいなのだ。
「制服らしさのあるいいデザインに加えて、今の時代に欠かせないのは付加価値です。今回の秋冬物の新作では、『新しい生活様式への対応』と題してすべての商品が抗菌防臭加工付きに。さらに廃棄繊維を服に生まれ変わらせたサスティナブル素材の採用など、高い倫理性を求める企業のお役に立てるように心がけました。繊維のリサイクルなどはまだ不十分ですが、たとえ少しずつでも続けていくのが大事だと思っています」
●アパレルの流行を取り入れ
では、そんな「渾身の秋冬コレクション」の中からイチオシを聞いていこう。
いきなりテーブルに広げられたのはカーディガンである。定番のベストやジャケットかと思ったら、なんと羽織りものアイテム。「KK7125 ニットベスト」と「KK7124 カーディガン」の2タイプとなっている。
「地味にこれ今回の目玉アイテムです。一見ふつうのニットなんですが、とにかく軽い。長袖カーディガンなのに80gを切っているからものすごく肩がラク。しかもカサ高で暖かく、毛玉も出ないしチクチクもしない。ケバが落ちないから飲食店でも使っていただけます。しかも抗菌防臭加工『ポリジン・バイオスタティック』採用で、汗や部屋干しの臭いも抑えます。再生原料でできたエコ率100%のウェアなので、環境に配慮したい事業所にもおすすめです」
カーディガンといえばオフィスの冷え対策の必須装備。あまり持ち帰って洗濯する機会がないアイテムなので、抗菌防臭加工はありがたい。その上、リサイクル素材というから恐れ入る。一方でデザインはそんなスペック面を感じさせないエレガントさがある。オフィスのほか病院でも活躍しそうだ。
一方、定番フォーマルのおすすめは「ロイヤルトラッド」シリーズ。品格と深みのある杢調カラーが特徴となっている。「AJ0276 ジャケット」を筆頭に、2タイプのベスト、3タイプのスカート、テーパードパンツと、着こなしパターンは計算できないほどだ。
「この新作は『シルエットがいい』『バランスがうまい』といった評価をいただいています。ファッション性の高い制服を選びたいけれど、職場の年齢層が広すぎて……といったケースでも組み合わせで対応できる。『どんな人が着てもOKな商品作り』がウチのモットーですから。といってもただスカートもパンツも揃えたという話ではありません。アパレルの流行を意識して、スカートの丈は従来より長めにしてあるし、アシンメトリーのプリーツスカートも用意しました。一般服でおなじみのテーパードパンツは裾上げ不要でお手軽という点でもオススメです」
ボンマックスでは公式YouTube「BONチャンネル」でも商品情報を発信中。女性社員がユーザー目線で語る人気のコンテンツだ。
「コロナのおかげで動画での発信はかなり進みました。ネット世代の子がやっているのでトークも上手い(笑)。ただ生地の肌触りや光沢感なんかは実物じゃないとわからないので、ぜひ商品を触ってみてほしいですね」
「いやぁ、いいタイミングで来てくれましたねー!」
のっけからこう語るのは営業の伊川さん。コロナ禍の企業訪問は何かと気を使うけれど、これ以上ないほどの歓迎ぶりだ。事務服はただでさえ「斜陽」と言われている上、感染拡大で展示会や商談もままならない。それなのに何なんだ、この明るさは?
「実はいまwebでの事務服の販売がすごく好調なんですよ。コロナ禍でサービス業が大ダメージを受けたのに加えて、オフィスもテレワークが広がったこともあって『事務服ってもうダメなんじゃ……』といった見方もあったんですが、フタを開けてみれば2020年も21年もボンオフィスには熱い支持をいただきました。残念なことに飲食店やホテルでの需要は低調ですけれど、オフィスの方は意外とダメージがなかった。そもそもテレワークできるような職種じゃなかったわけですね。事務服を着る人たちというのは」
おもしろい指摘だ。オフィスのIT化によって一般職の女性が減ったのに加え、服装のカジュアル化もあって日本独特の「事務服」というのは消えゆくものと見られていた。新型コロナのパンデミックが始まってからは、テレワークを活用することでオフィスを縮小させる会社も出てきている。しかしその結果、逆に「職場に行かなきゃできない仕事」にスポットが当たり、その働き方やファッションに注目が集まっているのだ。要するに事務服は業務に欠かせない「現場服」だったわけだ。
「いま事務服を支えているのは、小口のお客さんですね。特にコロナ禍で暮らしを支えるために奔走している農協、信金、そして病院です。去年の緊急事態宣言のときには展示会もなかったので買い控える動きもあったようですが、今年になっても同じ状況が続いていることもあって『もうwebで買っちゃおう』と。じつは、ウチもある程度こうなることを予想して商品を用意していたんです。それが今ご覧になっている21年秋冬物の新作というわけです」
デザイナーの佐々木さんが、待ってましたとばかりに語り出す。
「春夏物を企画している段階で、21年は秋冬物メインで行こうと決めたんです。春夏物の新作も進めていたんですけど、コロナのせいで海外工場の稼働状況や物流事情は悪くなる一方。話し合った結果『もう下手に新作を出すより、既存商品を売ることに力を入れよう』と。で、春夏をスキップすることにしたわけですが、秋冬も通常進行だとコロナの影響を受ける。というわけで前倒しで開発し、例年よりひと月早くカタログを出すことができました。懸念していた通り、感染拡大でベトナムの工場がストップしたり海上コンテナが止まったりしてしまったけれど、早めに量産しておいたおかげで切り抜けられました」
感染の波はある程度、予測できる。見通しを立てればあらかじめ対策しておくことができる。どこかの政府に教えてあげたい危機管理能力だ。
●制服でSDGs推進
コロナ禍の営業では、展示会の代わりとして行った内見会に手応えを感じているという。
「展示会の方が勢いはあるんですが、商品をゆっくり見てもらってじっくり説明して……というわけにはなかなかいかない。せっかくデザイナーが直接お客さんに説明できるのに、そんな時間がなかったり。東京の展示会なんかお客さんの回転がすごいから名前を覚えるのも大変。一方、内見会は商品をひとつひとつ紹介できます。21年の春夏物に新作を出さないというのも、発表だけだとネガティブな印象になると思うんですが、お客さんに直接話せば理解してもらえる。本当にやってよかったです」
春夏に新作を出さなかったぶん、秋冬物はじっくりと戦略を練り、納得のいくラインナップを打ち出すことができた。
「内見会でお客さんの反応なども踏まえて研究した結果、たどり着いたのは『制服ってこうだよね』という感覚です。ごぞんじの通り、事務服ってなんか時代遅れだし、接客やサービスに特化させる方向で生き残っていくしかないのかな、と思っていたんですが、コロナ禍で逆にオフィスに注目が集まった。今さまざまな企業がSDGsのメッセージを発信しているわけですが、制服が表現している『清潔』『誠実』といったイメージがプラスになるんです」
2015年の国連総会で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)は17の目標からなる。貧困や飢餓、ジェンダー差別、水資源の管理、気候変動といった問題の解決を目指すもので、その根本には倫理がある。要するに誠実を心がけ「世界のために正しいことをしよう」というわけだ。制服というのは組織の士気を高め風紀を保つためのツールだから、まさにSDGsにはもってこいなのだ。
「制服らしさのあるいいデザインに加えて、今の時代に欠かせないのは付加価値です。今回の秋冬物の新作では、『新しい生活様式への対応』と題してすべての商品が抗菌防臭加工付きに。さらに廃棄繊維を服に生まれ変わらせたサスティナブル素材の採用など、高い倫理性を求める企業のお役に立てるように心がけました。繊維のリサイクルなどはまだ不十分ですが、たとえ少しずつでも続けていくのが大事だと思っています」
●アパレルの流行を取り入れ
では、そんな「渾身の秋冬コレクション」の中からイチオシを聞いていこう。
いきなりテーブルに広げられたのはカーディガンである。定番のベストやジャケットかと思ったら、なんと羽織りものアイテム。「KK7125 ニットベスト」と「KK7124 カーディガン」の2タイプとなっている。
「地味にこれ今回の目玉アイテムです。一見ふつうのニットなんですが、とにかく軽い。長袖カーディガンなのに80gを切っているからものすごく肩がラク。しかもカサ高で暖かく、毛玉も出ないしチクチクもしない。ケバが落ちないから飲食店でも使っていただけます。しかも抗菌防臭加工『ポリジン・バイオスタティック』採用で、汗や部屋干しの臭いも抑えます。再生原料でできたエコ率100%のウェアなので、環境に配慮したい事業所にもおすすめです」
カーディガンといえばオフィスの冷え対策の必須装備。あまり持ち帰って洗濯する機会がないアイテムなので、抗菌防臭加工はありがたい。その上、リサイクル素材というから恐れ入る。一方でデザインはそんなスペック面を感じさせないエレガントさがある。オフィスのほか病院でも活躍しそうだ。
一方、定番フォーマルのおすすめは「ロイヤルトラッド」シリーズ。品格と深みのある杢調カラーが特徴となっている。「AJ0276 ジャケット」を筆頭に、2タイプのベスト、3タイプのスカート、テーパードパンツと、着こなしパターンは計算できないほどだ。
「この新作は『シルエットがいい』『バランスがうまい』といった評価をいただいています。ファッション性の高い制服を選びたいけれど、職場の年齢層が広すぎて……といったケースでも組み合わせで対応できる。『どんな人が着てもOKな商品作り』がウチのモットーですから。といってもただスカートもパンツも揃えたという話ではありません。アパレルの流行を意識して、スカートの丈は従来より長めにしてあるし、アシンメトリーのプリーツスカートも用意しました。一般服でおなじみのテーパードパンツは裾上げ不要でお手軽という点でもオススメです」
ボンマックスでは公式YouTube「BONチャンネル」でも商品情報を発信中。女性社員がユーザー目線で語る人気のコンテンツだ。
「コロナのおかげで動画での発信はかなり進みました。ネット世代の子がやっているのでトークも上手い(笑)。ただ生地の肌触りや光沢感なんかは実物じゃないとわからないので、ぜひ商品を触ってみてほしいですね」
ウエストゴムで着心地よし
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「秋冬コレクションをよろしく!」
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「きちんと感&女性らしい見映え」の新定番 組み合わせも楽しめる「ロイヤルトラッド」シリーズ 品格と深みのある杢調カラーが誠実な印象を与える女性用オフィスウェア。しなやかな風合いの生地はストレッチ性があり着心地も抜群。ジャケット、ベストに加えて3タイプのスカート、パンツとアイテム展開も豊富で幅広い職種に対応できる。裏地には抗菌防臭加工「ポリジン・バイオスタティック」を採用。汗や部屋干しの臭いを抑える。 |
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ウールブレンド生地が醸し出す高級感! 誠実おしゃれな「ラスターチェック」シリーズ 温かみのなかにラグジュアリーな雰囲気をまとわせるウール混素材の女性用オフィスウェア。ミニチェックにカラーウィンドウペーンを重ねた生地は抜群の存在感。ジャケット、ベストに加えて2タイプのスカート、パンツとアイテム展開も豊富で幅広い職種に対応できる。裏地には抗菌防臭加工「ポリジン・バイオスタティック」を採用。汗や部屋干しの臭いを抑える。 |
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