自重堂のイメージってどうなんだろう? と思うことがある。ショップで商品に触れたことがある人は「Jawin」や「Z-DRAGON」といった今時のカジュアル作業着を思い浮かべるだろう。そして、カタログを見た人なら公式モデルで日ハム監督の「新庄剛志」だ。一方で、会社支給のユニフォームを着るワーカーにとっては「おなじみの作業服」であり、普段スーツやジャケットで仕事しているビジネスマンにとっては「新幹線で広告しているアレでしょ?」といった話になる。商品数も膨大だから、自重堂といえばコレ! といったアイテムも思い浮かばない。強いて言えば水道局や建設局などの自治体ブルゾンだろうか? しかし、そんな状況にも変化の兆しがある。当レポートを読めば「これこそ自重堂!」という萌芽を感じるはずだ。
自重堂
“ヤンチャ系”ライダース「53400」
“クール系”ミリタリー「53500」
●「守り」を重視
まずは、旧「月刊まいど屋」でおなじみのK氏に、新作コレクションの全体像から聞いてみよう。
「まあ、今回はどちらかというと『守り』のラインナップですね。いま物価高の影響で消費マインドも冷え込んでますし、ショップで新しいアイテムを試したり、新規のユニフォームを導入したりする感じはない。今は攻撃のタイミングじゃないだろう……。というわけで、今季の新作は春夏モデルの秋冬バージョンを主軸に展開しました。前シーズンで気に入ってもらったお客さんに、秋冬も同デザインでどうですか? と。残念ながら、新提案をガンガンしていく雰囲気じゃないんで」
大手メーカーらしい大局観のこもる市場分析である。今シーズンのJawinやZ-DRAGONの新作はなぜか既視感がある……、と思っていたが、それも当然。まるっきり同デザインなのだ。
「もちろん同型で戦えるのも、春夏モデルの評判が良かったからですよ。新デザインのものより、生地厚にした秋冬バージョンを新作として、自信を持って提案していく。ちょっと意外に感じるかもしれませんが、長年やっているとこういう時期もあるんです。ジタバタせずに、固く守って次のチャンスをうかがおう、と。これまでになかった見た目や素材、機能をドーンと打ち出すだけがユニフォームじゃないって話ですね」
言われてみればそうだ。自重堂のカタログは「制服百科」。昔ながらのワークウェアや定番化したカジュアル作業着を網羅的に展開しながら、継続的に売っていくという点は、まったくブレがない。市場に衝撃を与えるようなアイテムを追究するメーカーからはなかなか出てこない言葉だが、忘れてはいけない感覚である。
「とはいうものの、地味だけど“新機軸”はありますよ。ひとつひとつ商品を見ながら発表していきましょう」
●デザインにも“新庄効果”
まずは、目玉と言えるJawinから。新作のデニム風「53400シリーズ」と綿がメイン素材の「53500シリーズ」である。前述したように、それぞれ春夏モデルの「57400」「57500」に対応しており、一年を通じて同デザインを楽しめるようになった。
「53400は襟高ライダース風でギラギラしたシルバーファスナーが目印の“ヤンチャ系”。53500はミリタリーテイストでワッペンやプリントなどの小ワザが効いた“クール系”。わかりやすいでしょ? この対照的なアイテムの打ち出し方がよかったんでしょう。春夏モデルでもウケが良かったので、このまま確固とした人気を築いてほしいですね」
新規デザインではないけれど、改めて目にすると確かに巧妙なデザインだ。両アイテムとも、形としてはオーソドックスな作業着でありながら、アイキャッチ的なファスナーやボタン、ロゴのワンポイントなどの“脇役”がいい仕事をしている。おかげでワークウェアとしてのキッチリ感や定番テイストの中にちょうどいい遊び心をアピールできた、という印象だ。絶妙な塩梅である。
「モデルの新庄さんの功績も大きいですね。とくに53400の高襟デザインは、新庄監督が就任会見で見せた襟を立てたファッションの影響じゃないか、と思ったり。派手派手のビッグファスナーもなんとなく新庄イズムを感じますよね。そして53500のポイントは前面に4つもポケットがあるのに野暮ったく見えないこと。これ実はスゴイことなんですよ。カーゴポケットもでっかくてマチ付きなのに、洗練されたカッコよさがある。支持されるわけがわかるでしょう?」
デザインの完成度に唸りつつ、素材の優秀さにも感心した。53400はストレッチ仕様なのにポリウレタンを使っておらず、膝や肘がポッコリ出るといった経年劣化を抑制。また53500では、綿98%の生地がナチュラルで豊かな表情を演出し、機能性ゆえの冷たくなりがちな印象をほどよく中和している。
●仕様変更あります!
続いて登場したのは、新作の「72800シリーズ」。古き良き工場作業着とカジュアル系ワークウェアの中間といったデザインで、正直いって目新しい感じはない。だがこの「変哲のなさ」こそ、この商品の狙いだという。Z-DRAGONのわりに大人しい見た目だけれど……、あれ? このロゴは!?
「72800は新機軸『Z-DRAGON GREEN』の第1号モデルです。要するに環境配慮に特化したラインナップで、生地からファスナーや背ネーム、商品タグ(商品説明の札)、包装に至るまで、すべてSDGsを意識したエコ素材で作っています。これからCSR(企業の社会的責任)活動を始めようという会社はもちろん、すでにグリーン購入法の認定商品やエコマーク付きの作業着を使っている事業所でも、このユニフォームを導入することでさらにSDGs対応を推進できるわけです。建設現場だけでなく工場やオフィスなど、どんな場面にもマッチするように、定番感のあるデザインにしています」
素材は植物由来の原料に廃糖蜜などの再生資源をブレンドした「PLANTPET」。製造過程のCO2排出量を抑えた上に、化石燃料の使用量も削減している。ファスナーやラベルの素材も再生原料だ。昨今、エコ素材のワークウェアは珍しくもないが、ここまで徹底した商品はちょっとお目にかかったことがない。
「当企画は、エコ作業着を買ってもらって終わりじゃないんです。このシリーズが目指しているのはさらなる環境負荷の低減ですから、今後、CO2排出や化石燃料の使用をもっと削減できるなら、素材や仕様はどんどん変えていきます。つまり、型番はそのままなのに再生材の使用率がアップしたり、一部に新たな植物由来の素材が使われるようになったりする。だから、このユニフォームを採用するだけで、環境技術のアップデートに合わせてSDGsを進めていけるわけです。同じ仕様を何年も継続していくことを重視するワークウェアの世界では、画期的なことだと思います」
今季は守りのラインナップ、雌伏の秋……かと思いきや、着々と次なる攻めに備えて布石を打っている。やはり自重堂、恐るべし!
まずは、旧「月刊まいど屋」でおなじみのK氏に、新作コレクションの全体像から聞いてみよう。
「まあ、今回はどちらかというと『守り』のラインナップですね。いま物価高の影響で消費マインドも冷え込んでますし、ショップで新しいアイテムを試したり、新規のユニフォームを導入したりする感じはない。今は攻撃のタイミングじゃないだろう……。というわけで、今季の新作は春夏モデルの秋冬バージョンを主軸に展開しました。前シーズンで気に入ってもらったお客さんに、秋冬も同デザインでどうですか? と。残念ながら、新提案をガンガンしていく雰囲気じゃないんで」
大手メーカーらしい大局観のこもる市場分析である。今シーズンのJawinやZ-DRAGONの新作はなぜか既視感がある……、と思っていたが、それも当然。まるっきり同デザインなのだ。
「もちろん同型で戦えるのも、春夏モデルの評判が良かったからですよ。新デザインのものより、生地厚にした秋冬バージョンを新作として、自信を持って提案していく。ちょっと意外に感じるかもしれませんが、長年やっているとこういう時期もあるんです。ジタバタせずに、固く守って次のチャンスをうかがおう、と。これまでになかった見た目や素材、機能をドーンと打ち出すだけがユニフォームじゃないって話ですね」
言われてみればそうだ。自重堂のカタログは「制服百科」。昔ながらのワークウェアや定番化したカジュアル作業着を網羅的に展開しながら、継続的に売っていくという点は、まったくブレがない。市場に衝撃を与えるようなアイテムを追究するメーカーからはなかなか出てこない言葉だが、忘れてはいけない感覚である。
「とはいうものの、地味だけど“新機軸”はありますよ。ひとつひとつ商品を見ながら発表していきましょう」
●デザインにも“新庄効果”
まずは、目玉と言えるJawinから。新作のデニム風「53400シリーズ」と綿がメイン素材の「53500シリーズ」である。前述したように、それぞれ春夏モデルの「57400」「57500」に対応しており、一年を通じて同デザインを楽しめるようになった。
「53400は襟高ライダース風でギラギラしたシルバーファスナーが目印の“ヤンチャ系”。53500はミリタリーテイストでワッペンやプリントなどの小ワザが効いた“クール系”。わかりやすいでしょ? この対照的なアイテムの打ち出し方がよかったんでしょう。春夏モデルでもウケが良かったので、このまま確固とした人気を築いてほしいですね」
新規デザインではないけれど、改めて目にすると確かに巧妙なデザインだ。両アイテムとも、形としてはオーソドックスな作業着でありながら、アイキャッチ的なファスナーやボタン、ロゴのワンポイントなどの“脇役”がいい仕事をしている。おかげでワークウェアとしてのキッチリ感や定番テイストの中にちょうどいい遊び心をアピールできた、という印象だ。絶妙な塩梅である。
「モデルの新庄さんの功績も大きいですね。とくに53400の高襟デザインは、新庄監督が就任会見で見せた襟を立てたファッションの影響じゃないか、と思ったり。派手派手のビッグファスナーもなんとなく新庄イズムを感じますよね。そして53500のポイントは前面に4つもポケットがあるのに野暮ったく見えないこと。これ実はスゴイことなんですよ。カーゴポケットもでっかくてマチ付きなのに、洗練されたカッコよさがある。支持されるわけがわかるでしょう?」
デザインの完成度に唸りつつ、素材の優秀さにも感心した。53400はストレッチ仕様なのにポリウレタンを使っておらず、膝や肘がポッコリ出るといった経年劣化を抑制。また53500では、綿98%の生地がナチュラルで豊かな表情を演出し、機能性ゆえの冷たくなりがちな印象をほどよく中和している。
●仕様変更あります!
続いて登場したのは、新作の「72800シリーズ」。古き良き工場作業着とカジュアル系ワークウェアの中間といったデザインで、正直いって目新しい感じはない。だがこの「変哲のなさ」こそ、この商品の狙いだという。Z-DRAGONのわりに大人しい見た目だけれど……、あれ? このロゴは!?
「72800は新機軸『Z-DRAGON GREEN』の第1号モデルです。要するに環境配慮に特化したラインナップで、生地からファスナーや背ネーム、商品タグ(商品説明の札)、包装に至るまで、すべてSDGsを意識したエコ素材で作っています。これからCSR(企業の社会的責任)活動を始めようという会社はもちろん、すでにグリーン購入法の認定商品やエコマーク付きの作業着を使っている事業所でも、このユニフォームを導入することでさらにSDGs対応を推進できるわけです。建設現場だけでなく工場やオフィスなど、どんな場面にもマッチするように、定番感のあるデザインにしています」
素材は植物由来の原料に廃糖蜜などの再生資源をブレンドした「PLANTPET」。製造過程のCO2排出量を抑えた上に、化石燃料の使用量も削減している。ファスナーやラベルの素材も再生原料だ。昨今、エコ素材のワークウェアは珍しくもないが、ここまで徹底した商品はちょっとお目にかかったことがない。
「当企画は、エコ作業着を買ってもらって終わりじゃないんです。このシリーズが目指しているのはさらなる環境負荷の低減ですから、今後、CO2排出や化石燃料の使用をもっと削減できるなら、素材や仕様はどんどん変えていきます。つまり、型番はそのままなのに再生材の使用率がアップしたり、一部に新たな植物由来の素材が使われるようになったりする。だから、このユニフォームを採用するだけで、環境技術のアップデートに合わせてSDGsを進めていけるわけです。同じ仕様を何年も継続していくことを重視するワークウェアの世界では、画期的なことだと思います」
今季は守りのラインナップ、雌伏の秋……かと思いきや、着々と次なる攻めに備えて布石を打っている。やはり自重堂、恐るべし!
ストレッチでウエストも楽チン
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新機軸の「Z-DRAGON GREEN」
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夢にキラめけ、欲にギラつけ! “野獣系”デニム「53400シリーズ」 ギラギラ感のあるシルバーファスナーが特徴的なデニム風の作業服。ライダースジャケットを思わせる端正なデザインに高めの襟もインパクト大。ストレッチ性のある生地はコットンとポリエステルの混合で、ナチュラルな着心地と表面のハリが味わえるほか、ヘタリや経年劣化を抑制できる。 |
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気分はもう最前線! 凛々しさ溢れるミリタリー系「53500シリーズ」 ミリタリー風のデザインとワッペンやロゴプリントなどの装飾がウリの上下作業服。ストレッチリップストップの生地は耐久性と伸縮性に優れており、動きやすくて着心地バツグン。ジャケットは内ポケットあり。パンツはスマホの出し入れに便利なマルチポケット付きで収納力も◎ |
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