月刊まいど屋 --特集-- 2010年5月号[ビッグボーン]1ページ

ビッグボーンの服づくりのポリシー。それは、妥協のない品質へのコダワリである。「作業服は毎日着るもの。この服で良かったと思ってもらえる服づくりをしなければ、お客さまに申し訳がない」。そう語りはじめた奥永さんからは、作業服に対する強い想いが伝わってくる。「毎日着ても、何も違和感がない服。それが正しいと、私たちは考えています。特別に機能に特化している、またはデザインに優れているというニュースは、確かに消費者を食いつかせるためのインパクトにはなるでしょう。しかし、本当に必要な機能なのかどうかは、お客さまの立場にたってよく吟味しないといけない。また、この不景気の中で、作業服の売上げが価格勝負になっている側面は否めません。しかし、それもまた一時的なインパクトに過ぎないと思うのです。安かろう悪かろうでは、いつかは不満に思われてしまいますから。いつも、自然と着ることができる。お客さまにとって本当に必要な機能性が、必要なだけ備わっている。そんなクオリティを追求していきたいのです」。
具体的な例を挙げながら、奥永さんがさらに続ける。「多くのヒット商品は、そんな私たちのコダワリが凝縮されたものが多い。例えば『タップガード』という防汚加工の商品は、ナノレベルの加工が必要なため価格は割高でも、販売数を伸ばしています。通常のコーティング加工では洗濯を重ねる度に防汚機能が低下しますが、この商品は糸の１本１本にコーティングを施すため機能の低下がほとんど見られない。さらに、生地の風合いもしっかり生きている。そんなコダワリが、ちゃんと消費者に届いたことが販売数という結果に結びついたのだと思っています」。
この春・夏の新商品も、コンセプトは非常に明快だという。「『シャミラン』という素材を採用して通気性を高めながら、防汚機能はしっかり保ちました。新商品を開発するときは、その価値やストーリーが目で見える商品をつくればヒットするのではないかと考えています。ユーザーにはどの商品もほとんど同じに見えるわけですから、その特徴が目で見えると強い。この新商品も、展示会で水を使って防汚機能を説明すると、大変な反響をいただいた。作業服業界は、狭いシェアの奪い合いになっています。そんな中で私たちにできることは、自社の良さをしっかりと伝え、ファンを大事にすることだけ。そんな想いを具体的な形にして、作業服という作品に落とし込んでいきたいですね」。シーズンごとに発表される新商品の数々には、ビッグボーンの品質に対する真摯な思いが必ず埋め込まれている。それは、日ごろの作業をより快適にする機能性であったり、ユーザーが心地よいと感じるデザインであったり。変幻自在に形を変えていくが、全ては「違和感のない着心地」という最大のコンセプトを表現した結果である。
我々ユーザーには、そんな同社の思い入れを読み解く楽しみがいつもある。