まいど通信
まいど!まいど通信編集長の田中です。早いもので、もうすっかり秋になりました。秋は人を詩人にします。秋特有の空気感と近づいてくる冬の予感が心に少しずつしみこんでいき、知らず知らずのうちにセンチメンタルな気分になってきちゃう。あの最後の一葉が散ってしまったら、自分の命も消えてなくなるんだ、みたいな。このまいど通信だって、そんな秋の物悲しげな気配から逃れることができそうにないです。読者の皆さんまで巻き込んでしまい申し訳ないけれど、心の内に閉じ込めていたはずの女子高生的気質が、陶酔感を伴って感情を高ぶらせ、やがて彼女が胸に抱えていた言葉で文章を書き始める。そしてそれは例外なく切なくて、自己犠牲的で、誰にも理解されないんだと甘酸っぱい感傷に酔いながらも無意識のうちに読者の皆さんの共感を求めているみたい。特に深夜になって誰もいなくなったオフィスで書いた原稿は。
そして何を隠そう、まさに今、このまいど通信は静まり返った真夜中のデスクで書いています。きっと翌朝読み返してみたら赤面しそうな文章が出来上がるんだろうなぁ。もしもまいど屋で編集業務をしていなければ、私は何を、してたでしょうか、平凡だけど、楽天に入り、普通の暮らし、してたでしょうか。あれ、なんでテレサテンになっちゃうんだろ。ここは替え歌満載の特ダネコーナーじゃないのに。教えて、悲しくなる、そのわけ、原稿に行き詰っても、信じること、それだけだから、月刊まいど屋をこれ以上、書きつづけるなんて、私には、できない。秋は人を詩人にします。そして誰にも理解できない原稿が出来上がります。それとも意味わかりますかね、これ。
今月のテーマは安全スニーカー
お待ちかねでしたよね、きっと。安全スニーカーの特集は、多くても年に一回しかやらないので、今か今かと首を長くして待っていた読者の方も多かったと思います。本当はもっと頻繁に特集すればいいのでしょうけど、なかなかそうはいかないんです、これが。理由はいくつか。まず、安全靴はほかのアイテムと違って、定期的に新商品が出ることが約束されていないんです。作業着なんかでしたら各メーカーが春と秋に必ず新作を出してくるんですけど、シューズの場合はその時次第、気分次第。気分と言って語弊があるなら、メーカーの企画担当者に新商品のアイデアの天啓がひらめいてから、数々のテストと改良を繰り返したのち、やっとカタチとして出来上がり次第。大間漁港でマグロ漁船の帰りを待っている母ちゃんみたいに、気長に海を眺めて待っているしかないんです。ときどき連絡を入れてみて、そろそろ大物上がった?なんて聞いてみるけど、まったくのゼロ釣果なんてこともしょっちゅうある。だけど明日は大漁旗が揚がるかもしれない。それはそのときになるまで誰にもわからない。予定が立てづらいから、編集部としてもなかなか思い切って企画を立てられないんです。
理由その二。安全スニーカー特集は読者の皆さんのウケが非常にいいから。人気がない特集だからじゃないですよ。逆です。皆さんが待ち望んでるのを知っているから。正直に言うと、編集部としてはこっちの方が真の動機かもしれないです。だって、読者の皆さんもおいしいものばかりしょっちゅう食べてたら飽きるでしょ。水戸黄門だって(ちょっと古いですかね)最初から印籠は出さない。10分おきに控ええと叫んでたら、きっとすぐに番組は打ち切りになる。最初から紋所を見せとけば悪人も悪事を働かず、話はこじれずに皆がハッピーになれるのを知っていながら、最後の最後になってようやく葵のご紋が画面にアップになる。待たせるだけ待たす。じらす。期待が高まるまでほっておく。長寿の秘訣はこれですね。月刊まいど屋も末永く続けていきたいですからね、正直な話。
お詫びと訂正
先月号の月刊まいど屋特集記事の中に誤りがありました。穴があったら入りたいくらい恥ずかしいのですが、運悪く編集部には人が入れる穴がないので、穴には入らずに、こうして生身をさらしたまま読者の皆さんにお詫びします。おっと、ふざけている場合じゃないですね。すみません。間違っていたのは、DICプラスチックさんの「SAY-WV」というヘルメットの商品説明です。掲載当初はどういうわけか説明文が「耐電」となっていたのですが、通気孔付きなので耐電であるわけがありません。耐電と思って電気工事などに使用したら、感電する恐れがありますので、十分にご注意くださいませ。
なお、編集部が誤りに気付いたのは自らのチェック体制が危機管理のお手本のような働きを見せて機能したのではなく、読者の方からのご指摘のおかげであったことをここに告白しておきます。「些細なことですが」と題されたメールには、ついにベンチレーション付きの耐電ヘルメットが開発されたのかと喜んでメーカーのホームページまで確認したと記されていました。本当に、本当にごめんなさい。そして、ご連絡いただきまして、ありがとうございました。いつか、耐電仕様で空気孔付きのヘルメットができたらいいですね。メーカーにも申し伝えます。だけど、電気を通さないベンチレーション孔って、いったいどうやったら作れるんだろ。
ユニフォーム販売のつかれた
なにかというと疲れたって口癖のようになっているひとがいます。傍で見ていてあまり気持ちのいいもんじゃありません。疲れた疲れたって、そんなに疲れたのなら、家に帰って寝てればいいのに。男子たるもの、疲れていたって口には出さない。疲れている時こそ、涼しい顔して余裕の態度を見せるべきじゃない?
などとエラそうに書き始めましたが、そのあとの文章が続かないので、ここで方針転換してやっぱり素に戻って話をします。こんなひと、いるんだよねえっていう話はかなりの確率で自分のことを話しているっていう法則がありましたよね。確か。なかったとしたら、ここで今、編集部がその法則を制定するので、とりあえず、そんな法則があるとしておきます。そしてお察しの通り、疲れたを連発しているのは、はい、すみません、紛れもなく自分です。我ながら、家に帰って寝てればいいのにって思うけど、編集部にはそんな時間的余裕もなく、なおかつ日本男児のお手本とはとても言えないヘタレのため、必然的に疲れた疲れたのつぶやきが大量生産されて周囲に垂れ流されることになる。最近ではそれが他の編集部員にもうつってしまい、まるで核燃料が高速増殖炉で拡大再生産されるがごとく、編集部内に疲れたが積み上げられていく。10月号の原稿、チェック済んでる?疲れた。あ、それもう終わってます、疲れた。疲れた?そんなに疲れたのなら今日はもう帰りなよ、疲れた。ではお疲れ様です、疲れた。はい、また明日、疲れた。疲れた疲れた疲れた。
きっと傍から見ていて、あまり気持ちのいいもんじゃないと思います。できれば早めにやめたいのだけれど、この疲れたは結構生命力が強いんです。根絶やしにしようとしても必ずどこかで息を吹き返す。デング熱みたいに、油断をすると思わぬところに感染者が現れる。まだ患者は編集部内だけですが、警戒を怠るとお客さまと接するオペレーターチームにもきっとうつる。そしてオペレーターを通じてお客さまにも感染する。お電話ありがとうございます、疲れた、本日お探しの商品はなんですか、疲れた。秋冬用の作業着を探してるんだけど、疲れた、何かおすすめありますか、疲れた。そのうち日本中に疲れたが蔓延する。アメリカにも飛び火して、ブロンクスあたりの若者が、ワッツアップ・メーンの代わりに、YO・疲れたといいながらハイタッチしてたりして。当然、その頃まいど屋は社名を改め、ユニフォーム販売のつかれたインターナショナル。小欄は月刊つかれた。なんだかとりとめのないアホ話になりました。なんで疲れたの話がこんなに長くなっちゃったんだろ。それにしても、あー疲れた。