【福山ゴム】疲れ知らずのスゴ技ソールimage_maidoya3
ラバーインジェクション。耳慣れない言葉だ。別に横文字を使って読者をケムにまこうっていうわけじゃない。今回のインタビューのキモになるキーワードだから、食わず嫌いをせずにはじめにしっかりとその意味を咀嚼してから話を進めていくことにする。
  読者の皆さんは、仕事で一日安全靴を履いて、疲れてしまうことはないだろうか。あったとしたら、まいど屋で買った靴でないことを祈るばかりだが、実際、そういうことはしょっちゅうある。一般的にシューズのソールは金型に固体のゴムを入れ、温度と圧力をかけてプレス成型することが多い。安価な設備で生産できるために用いられているが、製品がどうしても硬くなりがちで、出来上がりの精度もそれほど高いとは言えない。業界的にはそれが常識だし、どうせ仕事用の靴だからって言ってしまえばそれまでだけど、知らずに買ったユーザーは後々、不快感を募らせることになる。なんかこの靴、歩きにくいなぁ。しっくりこないから体も疲れてくる。さてはまいど屋、粗悪品を売りつけやがったな。災難に遭った当人にしてみれば、そう思うのが人情というものだろう。いや、それはプレス成型だからって説明したところで納得するひとはまずいない。まいど屋も、業界の常識をいったん脇に置いて、ユーザーの感覚で考えてみればそうだよなぁと素直に思う。
  さて、そこでラバーインジェクションである。日本語に訳すと射出成型。液状化したゴムを金型に注入してゴムソールを直接成型する。ゴムの配合に工夫を凝らせば、軽くてしなやかなソールが出来上がる。ユーザーは長時間でも気持ちよく仕事ができる。そしてまいど屋も不安を感じることなく販売できる。そんないいことずくめの製法を使って多くのシューズをラインナップしているのが、これから紹介する福山ゴムなのだ。さあ、能書きはもうこれくらいにしておこう。セーフティーシューズのスペシャリストである同社開発部の光田さんに、ラバーインジェクションの安全靴の魅力について、たっぷりと語ってもらおう。
 

福山ゴム
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プレス成型のラバーソール(左)とラバーインジェクションソール(右)
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左からマジックタイプの#68、つま先革補強の#67、紐タイプの#66
「屈曲性でいうと、やっぱりコレ!ラバーインジェクションソールです。今の主流は、軽くてクッション性のいいEVA(樹脂発泡素材)の加工底ですが、この屈曲性は絶対に出せません。特に高所では、ソールの返りの良さは作業性からも安全面からも非常に重要ですからね」。開発部の光田さん、そう言うとセーフティースニーカーのつま先とカカトに手を添え、「ほらね」とばかりにソールをギュンと曲げて見せてくれた。
  光田さんによると、ラバーソールの成型には2種類の方法があるのだそうだ。ひとつは、金型に固体のゴム(板ゴム)を入れ、温度と圧力をかけてプレス成型する方法。もうひとつは、金型に液体のゴムを注入して成型する方法。つまりインジェクションである。この成型法の違いが同じラバーソールでも性能に大きな違いをもたらす。「まず、曲がりの良さですね。インジェクションのほうがしなやかで屈曲性に優れている。それに軽い。もちろん、ソールの設計に負うところも大きいですが、プレス成型ソールより2割ほど軽くできる。また、摩擦に対する耐久性も強くなります」。
  では、それほどメリットのある製法が、なぜなかなか普及しないのだろう。そんな素朴な疑問に、光田さんが笑って答える。「高いからです。インジェクションはプレスに比べて設備投資費用がかなり大きい。大量生産向きの製法ですから、たくさん作れば逆にプレスよりもコストは下がりますけどね」。なるほど、ある程度の数量を販売できる見込みがなければ、メーカーとしてはどうしても二の足を踏むということだ。商品力に自信がないと、なかなか思い切って採用できない製法なのだろう。
  さて、そろそろ本題に移る。そんなラバーインジェクションソールを数多く採用しているのが、同社の人気ブランド『アローマックス』シリーズだ。以下、初代ラバーインジェクションソールモデル『アローマックス#60』に遡って、順に紹介していこう。「『#60』は、安全靴をスニーカーのように軽やかに履きたい!との想いで開発したローカットです。インジェクションソールの軽さを活かし、さらに軽くするために樹脂先芯にして片足400gに仕上げました。当時としては画期的です。さらに、このモデルは安全靴の履き心地を左右するもう一つの要素である先芯についても試行錯誤を繰り返しました。樹脂で鉄芯のような強度を持たせようとすると、どうしても厚みが必要になり、幅も高さもあるポッテリとした先芯になってしまうんですね。そこを何とか設計で工夫してスッキリ見えるようにできないものかと。開発にあたっては、その点でかなり苦労しました」。
  この『#60』の好反響を得て、マジックタイプの『#61』が誕生する。さらにローカットからハイカットへと、ラバーインジェクションソールは活躍の場を広げていく。「『#66』はボクサータイプのハイカットモデル。2012年の新商品です。当社製品の中でもサイドに4本ラインを配したローカットは特に人気がありまして、その流れでデザインは4ラインにしました。鉄製先芯入りで片足460g。おかげさまで好評で、高所作業でもよく履いていただいています」。
  この後、つま先を本革で補強した『#67』、マジックタイプの新商品『#68』とハイカットモデルを立て続けに送り出し、ラインナップを拡充。光田さんは苦笑する。「紐タイプを出すと、マジックタイプはないの?となる。マジックをやると次はハイカットないのと。そうやってお客さまに応えていくと、おのずと横広がりの商品展開になってしまうんです」。
  さて、ここでとっておきの新商品をご紹介しよう。ラバーインジェクションソールモデルでローカット、ハイカットときたら、次なる必然は長編みタイプ。ホールド感もバッチリのセーフティーブーツの登場である。「『アローマックス#89』です。内側に長めのカーブファスナーがついていて、胴部がガバッと大きく開くので脱ぎ履きが非常にラクです。ラバーインジェクションソールですから、よく曲がって耐摩耗性にも優れ、何より路面の状況が足裏に伝わりやすい。アッパーはPVC(ポリ塩化ビニル)とナイロンオックスで軽く仕上げていますが、足先に本革を使って、溶接の火花にも燃えにくいようにしています。それと、うしろには反射材もね。鉄製先芯で重量は片足520g。え、お客さまの反応ですか?まだ取り扱い店が少ないのですが、採用いただいているお店では好評です。ともあれ、これからじっくり育てていく商品ですので、期待をもって見守っているところです」。
  以上、福山ゴムのラバーインジェクションソールモデルを一気に紹介してきたが、同社のラインナップはこれだけじゃない。軽くてクッション性のあるEVAソールの『セーフティージョグ』、アッパーもソールもカラフルでカッコイイ『アローマックス#65』など、ワーカー必見の安全スニーカーがまだまだズラリと揃っている。福山ゴムでは、どのモデルに対しても1サイズ5人以上の社員さんが実際に試し履きしてチェックと改良を重ねているから、足入れ感の良さも折り紙つき。さてさて、どんなセーフティースニーカーが揃っているのか、以下の商品紹介でご確認いただきたい。
 
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ソールの屈曲性に優れた『アローマックス#89』
 

    

今度のハイカットは、足馴染みのよさに自信アリ!軽くてしなやかなアウトソールが足取りを軽快にしてくれるアローマックス68

スポーティーなデザインで人気の4本ラインシリーズから、待望のハイカット・マジックタイプが登場。鉄製先芯入りで片足480g(中心サイズ)。軽量で屈曲性に優れたラバーインジェクションソール採用。アッパーはPVC/PU。24.5~28.0cm、ウイズ3E。


手軽に履けて、スタイルよく見える!爽快感のあるデザインとお手頃価格が魅力のアローマックス61

軽くてソールの屈曲性もあってカッコよく履ける『#60』のマジックテープバージョン。アッパーはPVC。アウトソールはラバーインジェクション。450kgの静止圧迫荷重に耐える樹脂先芯入りで片足400g(中心サイズ)。24.0~28.0cm、ウイズ3E。