【力王】足袋屋の意地で作った極上スペックimage_maidoya3
力王の安全靴は、いつも唐突に現れる。前触れというものがない。いや、注意して耳を澄ませていればきっといろいろな前兆というものがあるのかもしれないが、いつもバタバタと忙しくしていて、注意力散漫な編集部の目には、そんな事前の変化など、察知することなどできやしない。
  今回の新商品発表もそうだった。つい先日、まいど屋担当の営業マンがブラリとオフィスを訪ねてきた。手に見覚えのないチラシの束を持って。まいど。ハイこれ、新商品です。まいど屋さん、当然、扱いますよねえ。もう発売してますから、ご注文はどうかお早めに。有無を言わせない力強さに、こちらはただうなずくしかない。まるで友人が企画した誕生日のサプライズパーティーみたいに突然に、否応なくそれに巻き込まれていく。
  ホンネを言えばこっちは誕生日でもなんでもないから、嬉しくもなんともない。心の準備ができていないから迷惑ですらある。もう出たの?マジで?どうして事前に教えてくれないの?こんなにたくさん、すぐに画面にアップしなきゃいけないわけ?眉間にしわを寄せてささやかな抗議を試みても、相手は意に介さない。それだけ商品に自信があるのだろう。なんだかんだと文句を言っても、まいど屋さん、ウチの新商品を待っていたんでしょ。どうせ販売するなら、グダグダしてないでさっさと作業を始めなよ。口にこそ出さないが、顔にはそう書いてある。そして悔しいけれど、まいど屋の気持ちは全くその通りなのだ。
  営業マンが帰ると、すぐに販売開始の準備に取りかかる。しばらく残業が続きそうだが、仕方がない。だって、これはファンが首を長くして待っている力王の新商品なんだから。ともあれ、いつものように編集部員の献身的な努力によって超突貫でアップされた待望の新商品たち。準備は整った。さあ、パーティーを始めよう。力王を待っていた全国のファンの皆さんと共に。

力王
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株式会社力王東京本部 ここでお話を伺った
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安全スニーカー、シューズに対する熱い想いを話してくれた木村さんと長谷さん
もうそろそろいらっしゃる頃だと思ってましたよ。まいど屋さんならウチの新商品を取り扱わないワケないですからね。ここに注文書も用意しておきました。今日はチラシじゃなくって実物を使ってたっぷりと商品説明しますから、話を聞いたら、発注数量を記入してくださいね。ニヤリと笑いながらそう言って右手を差し出してきたのは、営業部の長谷正裕さん。何を隠そう、この人こそ、まいど屋にチラシの束を持って現れた当の営業マン。そして、その隣には営業部第3グループグループ長で部長代理の木村努さん。テーブルにはパーティーの準備よろしく、新商品が所狭しと並んでスタンバっている。チラシで見たのと同じ、いやそれ以上に鮮やかに感じる原色使いの安全スニーカーに目が留まる。デザインも悪くない。写真よりも実物の方が、スタイルのよさがより一層際立って見える。「そうでしょ、そうでしょ、そのへんのブティックで売っていそうでしょ。今度の安全スニーカーは、デザイン性に自信があるんです」。長谷さんがそう言って笑う。
  勧められるままにその安全スニーカー『RS20』を手に取ってみる。長谷さんと木村さんがこちらの反応を楽しむようにじっと見つめている。そして彼らがきっと期待している通りに、思わず声を上げてしまう。チラシに「軽い」と書いてあったけど、確かに軽い。軽いなんてもんじゃなく、むちゃむちゃ軽い。見た目と掌が感じる重量にギャップがありすぎて、適当な褒め言葉が出てこないほどだ。「じゃあ次は、靴底とカカトを手で持って、ソールを反らせてみてくださいよ」と長谷さんが言う。言われた通りに両手で靴底を曲げてみる。凹凸のある特徴的なソールが柔らかくしなってU字型の曲線を描く。まるでヨガの達人が信じられないようなポーズで身体を折り曲げるみたいに。
  無言になってしまったこちらの代わりに、長谷さんが言葉を続ける。「こだわっているのは、デザインだけじゃないんです。力王には地下足袋で培った有形、無形のノウハウがありますから、そいつを安全靴づくりに生かさない手はないですよね。今回ご紹介する商品も地下足袋と同様、軽さ、履きやすさ、足入れの良さ、地面を蹴ったときの感覚等々、言葉では説明しにくい微妙な感覚にとことんこだわって作っている」。続けて木村さん、「だから、製品化までなんやかんやで、ゆうに1年はかかってしまうんです。ソールの型を起こすのに半年。アッパーを作るのに半年。作っては試し、修正しては試しってね。特にソールの型起こしは、地下足袋屋の腕の見せどころですから、意地でもより良いものをと頑張ってしまいます(笑)」。
  地下足袋屋の意地。それは具体的にはどんなカタチをとって商品に生かされるのか。木村さんの説明が続く。「『RS20』とそのハイカットタイプである『RS20H』は力王の新ブランド『RIKIONIS(リキオニス)』のシリーズ商品です。シリーズ名は『力王』の『リキ』と近代ギリシャの建築家『ピキオニス』を掛け合わせて名付けました。建築現場で働くひとたちへ敬意を込めてね。ま、それはさておき、特徴は、さっき実際に感じていただいた通り、軽くて屈曲性に優れていることです。それとクッション性。この3つが揃うと、歩行感覚はそりゃあもう、びっくりするくらい違います。シューズでありながら、地下足袋の感覚に近づくんです。詳しくタネを明かすと、正六角形を隙間なく並べたハニカム3D構造のカップインソールがクッション性やフィット性、通気性を向上させて履き心地をよくし、軽量化にも大きく貢献しています。そして屈曲性を左右するのがアウトソール。足裏の動きに合わせて自在に曲がるよう、独自の切れ目を入れました。この切れ目の入れ方と、部位ごとに最適パターンを配した設計がミソなんですよ。履けば瞬時に違いがわかるはずです」。
  リキオニスの説明がだいぶ長くなってしまったので、そろそろ他の新商品についても紹介してもらおう。まずは『HG300』と『HG301』、そしてミドル丈の『MG301』で構成される高所用シリーズ。やはり地下足袋感覚がウリのこのシリーズにも、彼らの意地が存分に詰め込まれている。「高所用ですから足裏感覚が損なわれないようにかなり気を使いました。3モデルともマジックタイプで、滑りにくく屈曲性の高いアウトソールと1トンまで耐えられる鋼製先芯を採用しています。足腰への負担がかかりにくいように、カカトはもちろん衝撃吸収仕様。さらに安全面に万全を期すために、側面と背面には反射材を付けました。ちなみに『HG300』は暑い現場向きのメッシュ仕様です」。
  その他、評判を呼びそうな新商品には、今回の力王パンフレットの表紙も飾っている『アクアネオ(AQUA NEO)』がある。水場に強い定番モデル『アクアゼロ』の進化版だが、パンフレットの表紙を飾るだけあって、力王渾身の自信作だそう。「そんじょそこらの防水とはレベルが違います。何しろ水道管と同じ素材を使っていますからね。それと、耐油性に優れ、滑りにくいソールにも注目いただきたい。プロが真剣勝負の仕事場で、本気で頼りにできる仕上がりだと思っています。デザインもすっきりとしてシャレているでしょ」。手に取ってみると、なるほどモダンで洗練された雰囲気がある。防水タイプの安全靴はまいど屋の中でも人気のジャンルなので、このレポートがアップされれば、きっとかなりの反響があるだろう。
  ここまで機能性の話に偏ってしまったので、最後に、ちょっと変わったトレッキングシューズタイプの『RS10』も紹介してもらう。「アウトドア風でオシャレでしょ。素材や質感、そして色遣いにこだわり抜いた。先芯さえ入っていなければ、スポーツ用品店で売っているトレッキングシューズと見分けがつかないと思います。先ほど、機能面を中心にご紹介したリキオニスもそうですが、今度の新商品は実はデザイン性が隠れたテーマなんです。履き心地のよさや機能性の高さは、実際に履くまではわかってもらえないじゃないですか。こうしてスペックをあれこれ説明しなくても、恰好がいいからという理由で店頭で選んでもらう。そんなデザインを心がけました。これまでは技術屋の意地で、必死になって性能を追いかけてきましたが、時代が変わってきたのかな。高性能だけじゃダメなんですね。最近は宅配便のおにいさん達も安全スニーカーを愛用しています。街で履くとなると、見られることを意識しますからファッション性も重要になってくるんです。だから今回、力王はデザインについてもホンキです。デザインの力王。今は技術の力王のイメージが強いですが、今回の新商品発表を機に、そんな風に言われるようになったらいいですね」。
 
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地下足袋屋のこだわり RS20、RS20Hのインソール&アウトソール
 

    

高所作業で頼りになる!地下足袋で培った力王の実力を余すところなく取り込んだ高所用HG300シリーズ

滑りにくく屈曲性に優れたアウトソール、足腰への負担を軽減する衝撃吸収インソール、1トンまで耐えられるつま先の鋼製先芯など、高所作業でその実力をいかんなく発揮。半長靴マジックタイプ「HG301」、半長靴マジックタイプメッシュ仕様「HG300」、ミドル丈マジックタイプ「MG301」。