まいど通信


        

まいど! 編集長の奥野です。いよいよ夏も終わり、季節は「食欲の秋」へ――。というわけで、やや強引ですが今月は飲食ユニフォーム特集をお届けしました。編集長は、飲食店で働いたことはないものの、じつは毎日のように執筆や打ち合わせをしにお店に行く"飲食店ヘビーユーザー"。今回、取材を通じてフード系ユニフォームの知識を仕入れたおかげで、カフェやレストランをハシゴしながら、今まで気にしたこともなかったユニフォームをチェックするという貴重な(?)体験ができました。ご協力いただいたメーカーの皆さん、本当にありがとうございました!

●専門職はカッコいい!

ワークウェアメーカーの取材をすると、いつも商品が欲しくなってしまうのが悩みです。ヘルメットの取材をしたときは「このハイスペックモデルを買っておこうかな、災害時にも使えるし」とマジで考えたし(なんとか思いとどまった)、安全靴の取材をした後には、我慢できずに一足買ってしまいました。

で、今月の取材で「欲しい!」と思ったのは、なんと「コックコート」です。しかもけっこう高級なやつ。いったい何に使うんだよ! と頭の中に怒号が飛ぶのですが、とにかく欲しいものは欲しい。瀬戸内寂聴先生が最近よく「恋愛は雷みたいなものよ。襲われたらどうしようもないの」といったことを語っていますが、物欲も似たようなものではないでしょうか。さすがに今のところ踏みとどまっていますけれど、将来はわかりません。家でコックコート着てカレーとか作っているかも……。

なぜ、コックコートに憧れてしまうのか? 理由はハッキリしています。シェフがカッコいいからですね。私は簡単な自炊だけで、凝った料理はまったくできません。人間は「自分にできないことができる人」に、何かロマンというか神秘性のようなものを感じてしまうのだと思います。

専門職に感じるカッコよさ――。これを分析しているうちに、そのカギになっているのは「修行」というものではないかと思いました。弁護士や建築士も専門職で「すごい!」とは思う。けれども一流のシェフや寿司職人を目にするときのようなロマンティックな気持ちは起こらない。その差はおそらく「資格」と「修行」との違いから来ているのではないでしょうか。

つまり、私たちはすべてをなげうって修行し、一人前になった人にリスペクトを感じるんですね。実際に今の世の中で、十代から飲食店で何年も修行してついに店を持つことができた、といった苦労人がどれだけいるかはさておき、料理人の世界はまだそういうムードが色濃く残っています。

ちょっと前に、テレビで吉本興業の騒動を見ていたときにも思いましたが、芸人にも近いものがありますね。師匠に弟子入りし、ときに理不尽な扱いを受けながらも、芸を磨いて、いま舞台に立っている――。そんな芸人は「とりあえず見たい」という気持ちを起こさせます。面白いかどうか以前に「どんなヤツなんだろう?」という興味が掻き立てられるのです。対して、今テレビに出ているような芸人はその多くがタレント養成所の出身。養成所からデビューするのも大変な競争があります。けれども、自分を重ね合わせるような対象にはなりにくいのです。「芸人」というより「トークの上手い兄ちゃん」と感じてしまう。

つまり、芸人にしてもシェフやラーメン屋の店主にしても、魅力の源泉は「それ以外できない人」「普通の道から外れた人」という点にあるのではないでしょうか。その潔い生き方が敬意を集め、人におカネを出させるのでは――。

コックコートを通じて、こんなことまで考えてしまいました。

●「空調服」の日常活用?

あ、そうそう、ほかにも欲しくなって買ってしまったウェアがありました。なんと空調服です。こちらは特に憧れたわけじゃないですけど、あまりにも普及しているので「じっくり研究しなければ!」との思いから、この7月に購入してみました。

購入したのはデバイス(バッテリー&ファン)とポリ100%の半袖ウェア。電源をオフにするシーンも多いだろうと考えて半袖にしました。長袖を半袖にするのは難しいけれど、半袖を長袖にするのはアームカバーなどで簡単にできる。どうせなら潰しが利くウェアを選ぼう、というわけです。

商品が届いた頃はあいにくの(?)冷夏だったのですが、8月からぐんぐん気温が上昇。待ちに待った"空調服日和"です! さっそくこの最強の涼感ウェアが日常生活にどう役立つか、身をもって調査することになりました。

そこで発見したことを列挙していきます。

1:家の中は不向き

エアコンをつけなくても快適に暮らせるかも、と思っていたのですが、着てじっとしていても(汗をかかないため)涼しくない。それに椅子やソファに座ったときにもファンが邪魔になります。空調服はやはり作業服の一種。リラックスタイムには向いていません。「冷房のない学校で使う」といったアイデアも非現実的です。

2:行楽や旅行は△

猛暑の週末、街に出かけるときに着てみました。家を出たあたりは「涼しくてサイコー!」と思っていたものの、電車に乗ったり冷房の効いた店でファンをオフにしたりしていると、やはり「邪魔だな……」と感じる。空調服は汗の気化を促進させて体を冷やすので、常に汗をダラダラ流しているようなシチュエーションでないと性能を発揮できない。そんな山伏修行みたいな旅行なんて普通しないですよね? また、バックパックだと背中に風が通らない上、肩ベルトとファンが微妙に干渉するのもかなりのストレスでした。あ、それからエレベーターに乗るとき要注意です。電源をオフにしないと「なにこの音?」って顔をされます。

3:猛暑の用事は〇

意外とイケる、と思ったのは買物です。スーパーに行こうと玄関のドアを開け「うわー、暑い!」というとき、空調服を着て家を出たら涼しく買い出しができました。これも外出した瞬間、汗がダラダラ流れるような猛暑日だったおかげ(?)です。買い物以外でも、洗車や草むしりなど「今から外で××をやる!」という具合に、作業がきっちり決まっている場合こそ、空調服を着るのにふさわしいタイミングでしょう。

4:「ワンサイズ上」が正解

編集長は「空調服用のウェアなんだから、メーカーもちゃんと計算して作っているんだろう」と考えて、いつも着ている服と同じMサイズを購入。これは失敗でした。よく言われるように「空調服はワンサイズ上を買う」が正解です。ボワンと膨らむのがイヤ、という人(私です)でも、歯を食いしばってLやLLを買ってください。で、どうしても気に入らないとなったら、買い直せばいいのです。空調服のデバイスは高価ですが、ウェアは通常の作業服と同じ価格帯。ミスっても大したダメージはありません。

5:貸す、あげるのもオススメ

意外とナイスな活用法は、誰かにプレゼントしたり貸したりすることです。編集長の場合、旅行でしばらく使わないタイミングがあったので、「ま、暑かったら使ってみて」と、実家の父に空調服を預けておきました。すると、何日かして「快適に畑仕事ができようになった。ありがとう!」とメッセージが到着。いきなり空調服をプレゼントされるとほとんどの人は面食らうので、これくらいの"軽さ"がコツかと思います。普通のウェアだと、サイズが合わないと貸し借りや譲渡はできないけれど、空調服なら「デバイスだけ渡す」という手段があるわけです。その際、「ウェアは自分で買ってね」というのもアリでしょう(くれぐれも「ワンサイズ上」をお忘れなく)。ほかにも、とりあえずデバイス(ファンとバッテリー)を1つだけ買い、夫婦それぞれのウェアに付けて使う、といった導入法も非常にクールですね。それじゃあ二人同時に使えないやん、と思ったら、そのタイミングでデバイスを追加購入すればいいんです。

以上、編集長が贈る「空調服活用講座」でした。

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飲食ユニフォームに空調服に……、と話は尽きませんが、今月はこのあたりでお別れしましょう。最後までご一緒いただき、ありがとうございました!