まいど通信


        

まいど! 編集長の奥野です。今回は体験ルポ「パン職人修行」をお送りしました。パンといいつつ、ピザだったり中華まんだったり、やや無理がある気もしますが、そのぶん内容もバラエティー豊かになってよかったかな、と思っています。それに同じようなパンばっかり食べてたら飽きちゃいますから。オーソドックスなパンに加えてイタリアン、中華とみんな大好きなものがそろった今回の特集。みなさんもぜひ体験施設や教室を探してチャレンジしてみてください。その際、エプロンや白衣のご用意は、ぜひ「まいど屋」で!

●男もすなるパン作り

今回の取材ではしょっぱなから大きな壁にぶつかりました。私は想像もしていなかったのですが、実は男が参加できるパン教室って、ものすごーーく少ないんですね。この事実には本当に驚きましたよ。

ネットで「パン教室」と検索すると、編集長の地元・大阪だけでも20も30も出てくる。だから「これだけあれば、どこかは取材させてくれるだろう」と思っていたんです。しかし、どの教室もウェブサイトの要項をよく読むと「参加は女性のみ」との記述がある。え……、とガッカリしたのですが、理由は女性の先生が自宅で教室を開いているからでしょう。それ自体は普通のことだと思います。

ただ、私が調べてみた感覚では、世間の97%くらいのパン教室がこの「自宅教室のため女性のみ」なんですね。男の先生が教えてくれるのは、パン職人になるための専門学校みたいなところだけ。つまり、男性が「趣味でパンを焼いてみたいな」と思っても、××クッキングスタジオなどの料理スクールに通うか、取材させてもらったfroh工房のような激レアな男性可の教室を見つけるかしか方法がないのです。

男が趣味として気軽にパンを学ぶ方法は、ほぼない――。今のようなジェンダーレスな時代に、これって驚愕の事実だと思いませんか?

改めて思い返してみれば、たしかに趣味で蕎麦を打つ男性は地域や職場にちらほらいるのに、パンを焼くおやじには出会ったことがない。パン作りというのは、じつは女性による女性のためのカルチャーなのです。

しかし、見方を変えればこの状況はチャンスとも言えます。「男性可のパン教室」を開いてPRすれば、今や決して珍しくはないパン好きなおじさん(あるいはお兄ちゃん)を取り込める可能性があるからです。たとえば「趣味はバイク。旅先でおいしいパン屋さんを探すのが楽しみ」といったおっちゃんが、男性可のパン教室があることを知ったとしたらどうでしょう。

「なるほど、食べるだけじゃなく作るほうもやってみたら面白いかもしれない……。えっ、自分で薪割りして石窯でピザを焼いたりもすんの? すげー! めっちゃ楽しそう!」

こういうことになるのは間違いありません。生地をこねたり叩いたりするときは、男の腕力がものを言うし、発酵は生物好きにはたまらない「センス・オブ・ワンダー」な現象。成形には陶芸のようなクラフト的な楽しみがあるし、取材で取り上げた米市農園のように石窯に火を起こしたりするのもキャンプやアウトドア好きにとっては垂涎もの。つまりパンというのは「料理」というジャンルに収まらない、ものすごく裾野が広い行為なんですね。

「次はどんなパンを焼くつもりなの?」
「天然酵母はいいよー、分けてあげようか」
「庭に石窯を作りたいってカミさんに言ってみようかな……」

と、こういう会話が飛び交う男のパン教室を想像してみてください。すごくいい! と思いませんか? 男性が化粧をしたり、女性が狩猟を始めたりする時代、ひょっとしたらこんなふうにジェンダーの壁を超えたパン教室も意外と早く実現するかもしれない、と考えている編集長です。

●テレワーク実践中!

ところで私は今、この原稿を一週間前から滞在中の都内某所で書いています。外の気温は20℃以上。今朝は6時から朝日を見るため山に登ってきて、近くの海岸で汗を流して宿に戻ってきました。さすがに海には5分くらいしか入れませんでしたけど。強い紫外線のおかげで寝覚めはいいし、宿にこもっての仕事もはかど……いや、じつは外へと誘う自然の魅力が強すぎて、机に向かう時間が減ってしまうのが悩みです。仕事中なのに「クジラは出てきてないかなー」と、ついついふらりと海を見に行ってしまう……。

さて、ここはどこでしょう? と一応いってみるわけですが、みなさんもうおわかりですよね? もうひとつヒントを出すなら「東洋のガラパゴス」。つまりは島ですね……って、ああ、もっとわかりそうでわからない気の利いたヒントを出したいのに、脳みそが南国モードで働かない!

と、現在の編集長のようにITを駆使してオフィス以外のところで働くことを「テレワーク」というそうです。報道によれば、このテレワークは、東京オリンピック期間中の通勤ラッシュや交通渋滞への対策として、大手企業が導入に本腰を入れ始めているとのこと。企業だけでなく東京都でも郊外に拠点を整備して民間事業者に提供したりする計画になっているそうで、テレワークは今まさに注目を集める「最新の働き方」と言えます。

テレワークの効果は、単に移動にかかるコストを省くだけではありません。いつもと違った環境で仕事をすることでふだんと違った着想を得たり、都合のいい時間を選んで働くことで家族と過ごす時間が増えたり、といった効果もあると言われています。働き方改革の一環としても期待されているわけですね。

編集長の場合、ひとり旅ですから完全に前者ねらい。ライターとしての活動も長くなったせいか、正直、自分の発想に飽き飽きしていまして、何か新しいことを考えるきっかけが欲しいなぁ、というわけです。環境を変えたくらいで新しいアイデアが出てくるなら誰も苦労はしない! というのは重々心得ているんです。それでもわずかでも可能性があるなら藁にもすがりたいのが人情というもの。つまるところ、人間は哀れな迷える子羊なのですね。だからどうか、どうかお許しください……って、いったい誰に謝っているんだろう?

さて、果たして編集長のテレワークに効果はあったのか? この"転治療法"によって本誌「月刊まいど屋」の新たな可能性を切り拓くことはできたのか? その答は、来月号で明らかになることでしょう。

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というわけで、今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。今月に続いて次回3月号もいつものメーカーレポートはお休み。「月刊まいど屋」の独自ネタをお届けします!