【大川被服】容疑者Xをあぶり出せimage_maidoya3
一体これはどうしたことだろう?何かが決定的に間違っていると言うしかない。作業着のネット販売では第一人者を自認し、商品に関する知識の深さだって人後に落ちないと自負するまいど屋だが、この件を考えると、たちまち自信が揺らぎ始める。日々集められる販売データが警告する目を疑うようなファクトとエビデンス。それはセンセーションをウリにする週刊誌のスクープ記事にも劣らぬほど、世にも奇怪なストーリーに思える。○○ってさ、実は△△なんだよ。ここだけの話だけど。普段はそんな話をあっさりと信じるほど素直な心の持ち主ではないが、これだけ不利な状況が続くと安易な結論に飛びつきたくもなってくる。そう、何かが絶対に間違っている。そしてその惨事に対して、誰かが責任を取らねばならない。今のところは誰もが知らぬ存ぜぬを決め込んでいるが、真犯人は必ずどこかに潜んでいる。そいつを探すのが、この取材の目的だ。
  本レポートは大川被服についてのものだから、○○には当然、大川被服が入る。では△△は何か。当の大川被服にも、そしてこれからこのレポートを読まされる読者の皆さんにもこんな話をテーマに選んで大変申し訳ないのだが、それは「予想よりはるかに人気がない」、あるいは、もっとあけすけに言えば、「期待に反して極端に売れ行きが悪い」という不都合な真実だ。なぜわざわざ貴重な時間を割いて、売れない作業着の話に付き合わなきゃいけないのか?読者の皆さんはそう思うかもしれない。忙しいのにまいど屋のタワケ話になんか付き合っていられない。そう言ってこのページを閉じようとするかもしれない。だが、もし私たちが何かに対して少しでも公正であろうとするならば、物事の表面だけを眺めて拙速に判断する前に、その裏に隠れているかもしれないもうひとつの可能性にも一通り目を凝らしておくべきだ。態度を決めるのはそれからでも遅くない。ミステリー風に話を進めるなら、犯人はまだ捕まったわけじゃないのだ。本当に商品が悪いのか、まいど屋のお客さまの見る目がないのか、またはまいど屋の画面構成が、このブランドの真の魅力を伝え切るのには力不足なのか。読者の皆さんと月刊まいど屋編集部は一緒になって、これからその可能性を一つずつ検討していくことになる。何が原因なのか。犯人は誰なんだ?
 

大川被服
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麻混で涼しさバツグンのDAIRIKI『22012』
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まいど屋以外でメチャ売れているkansai『17002』
最初に断わっておくが、どのメーカー・ブランドに対しても中立的なスタンスを維持し、特別なバイアスをかけないことを方針としているまいど屋だから、大川被服が売れても売れなくても、本来は知ったことではない。だが、無実の可能性がある者が冤罪で裁かれそうになっているのを黙って見過ごすわけにもいかない気がする。今回の取材はそんなやむにやまれぬ思い、いや、もっと正確に言えば、しゃちほこばったある種の正義感からまいど屋が急遽先方に申し込んだ。応じてくれたのは大川恭弘(おおかわ・やすひろ)常務。テーマがテーマだけに、初めは取材を拒否されるだろうと半ばダメモトのつもりでアポを申し込んだら意外にあっさりとOKしてくれた。きっと度量の広い人物なのだろう。なぜこんな事態になってしまったんだと思います?御社の『DAIRIKI(ダイリキ)』と山本寛斎ブランドの『kansai』、なぜかくも反応が悪いんでしょう?厚意に甘え、失礼を承知の上で検証に足る材料をいくつか揃え、大川常務にぶつけてみた。以下が、そのやりとりである。
 
  仮説1:品番がわかりにくく、ネット検索で不利? (商品名と品番がまぎらわしい)
  「これね、電話やFAXでやりとりしていた時代のなごりで、ロングセラー商品を持つメーカーのデメリットでもあるんです。たとえば『MAX700』(品番:07002)という商品。電話での注文なら5ケタの品番よりも『MAXの夏物の上着』と言ったほうがピンとくる。当社にはデザインを変えずに30年も売れ続けている商品もあり、商品名がお客さまに馴染んでいるので今さら変えるわけにもいきません。ここ5年くらいの商品は、商品名=品番ですべて5ケタに統一しているんですが、確かにネット検索ではわかりにくいかもしれないです」。
 
  仮説2:デザインが奇抜すぎる?
  「デザインの奥にあるコンセプトがまいど屋さんのお客さまにうまく伝わっていない気がします。おっしゃる通り他社であまり見かけない色使いもあるので画面上で商品一覧となって表示されると、異質な感じがしてしまうのかもしれません。でも、こうした特徴のある商品は汎用性が高いとは言えませんが、特定のワークシーンでなら、逆にぴったりとハマります。そして一度使い始めると、他で代替がきかなくなります。ハマるかハマらないかは、実際に商品を手に取ればすぐイメージできるものなのですが。。。カタログ写真だけでは、お客さまの想像力を喚起する力が足りないのかもしれないですね」。
 
  仮説3:そもそも客層が違う?
  「さっきのお答えと少しかぶりますが、もう少し詳しく説明します。たとえばクロネコヤマトのユニフォーム。今でこそ、パッと見ただけで宅急便とわかりますが、そうなるまでに何年もかかっているはずです。当社は、そんなふうにユニフォームで○○建設、××工業と認識されるよう、継続的に着ていただけるモノづくりをしてきました。対外的にある種のイメージを強く印象付ける商品ですから、個人がファッション感覚で買うものとは性格が異なるのかもしれません。まいど屋さんのお客さまのことはよくわかりませんが、現状、当社のゾーンはそういった(意識的なイメージ戦略を持つ)法人のお客さまが中心となっています」。
 
  仮説4:価格が高い?
  「国産生地を使っているので、それなりに。ウチは、仕事さえできればいい、とか、1シーズン着て汚れたら捨てればいい、という感覚で作っていません。大川被服の作業服は100回洗濯しても大丈夫。なんかイナバみたいでしょ(笑)。まあ、冗談はさておき、去年買ったものと今年買ったものを合わせても、ちゃんと色が合うような品質を作り込んでいるつもりです。着ていただいたら、絶対に気に入っていただける自信があるんです。でも、それが画面ではわからない。一覧にある商品を見比べて、300円違うなら他社さんのを選ぶ。そんな感じだと思います」。
 
  時に頭を掻きながら、時に目を閉じてじっくりと考えながら、大川常務はこちらが用意したぶしつけな質問に一つひとつ真剣に答えを探していく。そしてふと思いついたようにこう続ける。「丈夫=買い替えがない、というジレンマもあります。ウチは、もともと学生服をやっていたので、長く着られるものを作ろうという意識が強い。その昔、ここまでやる?ってくらい丈夫な作業服を出したことがあります。1年目は爆発的に売れました。でも、2年目以降はガタ減り。なぜ?と思って調査したら、5年目でもまだ着ている企業さんがあった(笑)。そういう経験をしているのに、未だに手を抜くことができない」。
  ここまでで言えることは、大川被服は本当に真面目にモノづくりをしているということ。それも、不器用なほど真面目に。そして、その姿勢に共感し、支持するお客さまがちゃんとついている。でも、それは、まいど屋以外で・・・ということだ。どうしたものか?「当社もここ2~3年でずいぶん変わってきています。まず、パッと見て“これいいよね!”と感じていただくことを意識するようになりました。デザイン、シルエット、カラー、すべてにおいて。いくら、着ればわかる、商品には自信がある、と言っても、そもそも着ていただかなければ良さもわかりません。生の肉を見せて、絶対に美味しいから食べて!と言うより、アツアツの湯気を立てているステーキを見せたほうが食べたくなる。多分、それと同じことなんだろうと」。
  そんな、食べてみる前から「美味しそう!」というモノづくりの先頭を走っているのが、雑誌『TIPO』からのオファーでチャレンジ的に始めたというコラボウェア。「雑誌限定ですが、『TASKFORCE(タスクフォース)』というブランド名でミリタリースタイルのワークウェアを出しています。趣味のクルマ雑誌なので、コアな個人向けにね。この先、そういった流れで、パッと見て、カッコイイ!着たい!と思える商品を出して、まいど屋さんのお役にたてればと思っています。きっとそのうち結果が出てくるかと思いますから、もうちょっと辛抱して待っていてくださいね」。
  大川被服を気遣っての取材のつもりが、逆に励まされてしまった。なぜ大川被服が不人気なのか?そうした問の立て方自体が間違っていたのかもしれない。事件など起きてはいなかった。まいど屋があってもなくても、大川被服を愛するひとたちはどこかで大川被服を調達し、一方、大川被服はまいど屋が心配しているようなことはとうの昔に承知していて、着々と未来に向けた布石を打っていたのだ。
  まいど屋では相も変わらず、今日も細々と大川被服を販売している。現在はどこか既存のルートで大川被服を調達しているひと達が、いつかネットで大川被服を購入できることに気付いてくれることを期待して。そしてやがて、大川被服を知らなかったまいど屋のお客さまにもこのブランドのよさをわかってもらえることを信じて。物語は最終的に正しい方向に進んでいかなくてはならない。歩みは遅々としていても、確実でなければならない。そう、まずはこのレポートを読んでくれた読者の皆さんからだ。パッと見て、これいい!着たい!の要素が強まった最近のウェアから、確かな作りで長年の支持を集めるウェアまで、今春夏オススメのアイテムを以下に紹介しておく。まいど屋の販売データはとりあえず脇に置いておき、色眼鏡を外して、虚心に一つひとつのウェアに対して検討を加えてみれば、読後にはきっと、大川被服というブランドに興味を持つことになるだろう。そして意外な結末に驚くことになるだろう。全ての証拠は、本件の事案が結論を急ぎすぎたまいど屋の根拠なき妄想であることを指し示している。賢明な読者の皆さんならもうお気づきだろう。真犯人などどこにもいない。そもそも事件は起きていなかった!
 
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雑誌『TIPO』とのコラボウェア『TASKFORCE』
 

    

ムシ暑い日本の夏には麻が効く!伝統素材のメリットを目いっぱい引き出した22012シリーズ

夏物に迷ったらコレ!と大川常務も太鼓判。コーヒー豆を運ぶ麻袋のように丈夫で通気性に優れた麻混ウェア。帯電防止糸の入った生地は、ポリエステル70%、綿20%、麻10%の日本製。光沢があって通気性、吸水性に優れ、引っ張りに強いのが特徴。さらに水に濡れると強度が増すので洗濯耐久性も超GOOD。


上質の全てがここにある!違いがわかるオトナの男にこそ着てほしい40012シリーズ

洗練デザインとガーゼのような通気性で暑い夏をクールに乗り切る、2014年デビューのkansai最新作。綿20%混の透け感のある生地は、空気の通気量で大川被服No.1。軽量で吸汗速乾性に優れ、高い洗濯耐久性、帯電防止と機能満載。たっぷり収納できるブルゾン脇ポケットや縦ファスナーポケット、長財布対応のパンツ右後ろポケットなど、ディテールもぬかりなし。