【ミズノ】新ソールに勝利を誓う!image_maidoya3
いま「ミズノのユニフォーム」と言えば「ああ、野球チームね」という反応がほとんどだろう。しかし、あと何年もすれば「おお、作業服ミズノにしたの?」「うちの実家もミズノで野良仕事しているよ」といった声が主流になるかもしれない。そう、ミズノは近年、スポーツ用品に加えて作業着や手袋などのワーキング分野へ力を入れ始めているのだ。で、そんなワーカー向け商品の代表選手こそ安全スニーカーの「オールマイティー」シリーズである。テニスシューズや野球用スパイクの開発で培った技術を注ぎ込み、「またスポーツ用品メーカーか」と疑問の目を向けるユーザーを唸らせてきた。ただ、個人的な感想を言わせてもらえば、その活躍ぶりは少し物足りない気もする。鳴り物入りで登場した大型ルーキーのわりには、ちょっと大人しいね、と。もうデビュー5年目なんだし「先行する他社を圧倒!」とまでは言わないが、そろそろ「ある局面では優勢」くらいの実力は見せてほしいもんだ……。そんなモヤモヤを抱えつつ、編集部はさいたま市のミズノ関東支社を訪ねた。

ミズノ
image_maidoya4
この波型がミズノウェーブの証
image_maidoya5
ソールの効果を体感できる模型
●満を持しての「ミズノウェーブ」
 
  取材に応じてくれたのはライフスタイル営業本部の中村卓永さん。さっそく「最近のミズノって……」と水を向けようとしたら、彼は興奮した様子で黒地にオレンジのラインが入ったスニーカーを取り出した。この3月に発売されたばかりの新作らしい。
 
  「長い間、お待たせしました……。ついに登場です。こちらがミズノウェーブ搭載の安全スニーカー『HW』シリーズです!」
 
  あ、あのミズノウェーブが! とリアクションしたいところだけれど、編集長をはじめ読者のほとんどはスニーカーマニアでも陸上競技の経験者でもないから、よくわからないだろう。そんなわけでまずはこの技術について簡単に説明しておく。
 
  ミズノウェーブとはミズノが独自開発したスポーツシューズ用ソールである。人間工学に基づいて開発し、波型のプレートをソールの上下パーツで挟み込むことでクッション性を向上。走行中の安定性、反発性に優れるほか、横ずれやヘタリにも強いため、ランニングだけでなくさまざまな競技用シューズにも使われている。
 
  特許申請は1982年。ソールを横から見るとわかる「~」のラインは、なじみのあるアッパー部の刺繍「ランバード」に匹敵するアイコンとなっている。つまり、もはやミズノウェーブはミズノの代名詞なのである。そんな"奥義"が使われたということは……。
 
  「ミズノが本気で競技用シューズに匹敵するレベルの安全スニーカーを作った、ということです。言い換えれば、HWは初めて本格的なスポーツシューズの技術を使った『フラッグシップモデル』ですね。ミズノウェーブの採用によって、クッション性や安定性の向上はもちろん、疲れにくく履き心地もよくなりました。運動性だけでなく着用感の面でも、これまでで一番ハイスペックなモデルと言えます」
 
  高機能なのはミズノウェーブ採用のソールだけではない。インソール(中敷き)は土踏まずを支えるサポート構造で、長時間の立ち仕事でも足にダメージが蓄積しにくくなっている。
 
  ハイスペックなのはもちろん良いことだ。ただ「スポーツシューズのテクノロジーで作った安全靴」といえば、市場ではアシックスがはるかに先行している。はたして、この新作で天下をうかがうことはできるのだろうか?
 
  「これまでのオールマイティの代表的モデルの価格は7500円くらい。このHWシリーズの販売価格は1万円前後だから2500円くらいアップしてます。けっこういいお値段がしますけれど、スペックの割にはお買い得感があるかな、と。他社さんにはもっと高価なモデルがありますからね」
 
  アシックスの「ウィンジョブ」は12000円くらいからなので、HWはこの手の"ハイテク系安全スニーカー"としては安い方ではある。このプライシングは絶妙なインコース狙い、と言えそうだ。
 
  ●ポイントは"素足感覚"
 
  と、これからの活躍が期待されるHWシリーズに続いて、中村さんが「いま売れ筋の商品」と紹介してくれたのは、オールマイティ「TDシリーズ」。発売された2019年2月から現在まで、安定した人気を集めるモデルだ。
 
  このシリーズの売りは「Dソール」。耐油性のあるラバーソールは踵の上までの「巻き上げ仕様」なので、クルマの運転がしやすく耐久性も高い。……ということは、ユーザーはトラックに乗る輸送業の人? と思ったらそんな単純な話でもないという。
 
  「Dソールは、ただ踵部分を丸くしただけじゃないんです。ソールの前半分が薄めになっていて、ペダルを踏む力の加減がしやすいのもポイント。そのためクルマの運転だけじゃなく、ブルドーザーやパワーショベル、クレーンといった重機の操作にも向いています。あと、この"素足感覚"を活かして高所作業で履くのもいいですね。ハイカットモデルの『SD13H』は、足首までしっかり守りながらも、地下足袋のように足裏感覚で安全が確認できるので、建築業にもオススメです。ソールが薄いと疲れるんじゃないか、という心配もあったのですが、アンケート調査してみたら意外と大丈夫でした」
 
  運転や重機のオペレーションには、足首を固定しないローカットモデル「TD11L(靴ひもタイプ)」や「TD22L(ベルクロタイプ)」を、建築や土木などのハードな現場には、ハイカット(といってもミッドカットよりやや高い程度)の「SD13H」を。ミズノでは、このように幅広いラインナップで新ソールを提案している。
 
  ●「ゴム紐」人気の背景は
 
  さらに「あとは変わったモデルとして、こういうのも」と中村さんが取り出したのは、靴ひもの代わりにゴムを使った安全スニーカー。2019年8月発売の「ES31L」だ。スポーツショップの店頭では、ハイキングやランニング用シューズとしてこういったゴム紐タイプをよく見るようになったが、もうワーキングに入ってきていることにまず驚いた。さらに「よく売れている」というから二重の衝撃である。
 
  「ま、単純に靴ひもよりゴムの方がラクですよね。さらに、脱ぎ履きしやすいだけじゃなく、アッパーはメッシュ素材で蒸れにくい。軽量ソールのおかげで疲れにくく、見た目もカジュアル。スリッポン感覚で気軽に履けるところがウケてるんだと思います」
 
  ゴム紐は交換用のスペアが付属するからヘタレても安心。とはいうものの、そもそもゴム紐では締め付けがゆるいのではないか、という気もする。靴ひもに比べてフィッティングに不安はないのだろうか?
 
  「私の経験から言うと、ワーキングのユーザーってあまりフィット感を求めないんですよね。販促のためショップに行って、オールマイティーを体験してもらったりするのですが、職人さんは普段からワンサイズくらい大きめの安全スニーカーを履いているケースが多い。スポーツ用シューズだったら、みなさんサイズ選択にはすごくこだわるんですけど」
 
  どうやら「ピッタリとフィッティングさせたい」という欲求は、安全靴ユーザーにはあまりないらしい。その気持ちはよくわかる。スポーツは長くても2、3時間だが仕事は8時間。靴ひもを結んできちんとフィットさせたほうがいいのは理解できても、頭のどこかで抵抗を感じるのだ。
 
  スポーツ系メーカーは、仕事で高いパフォーマンスを発揮する「動ける安全靴」を作りたい。一方、ユーザーは何時間も履いていても不快感のない「くつろげる安全靴」が欲しい。両者とも「履き心地のいい靴」という範疇に入るものの、その解釈は微妙に違っているのだ。
 
  理想は「緊張」と「緩和」の融合。ゴム紐モデルはひとつの解答と言えるが、ほかにも両立させる方法はあるかもしれない。これからもミズノの商品展開には注目である。
 
image_maidoya6
意外な人気のゴム紐モデル「ES31L」
image_maidoya7
話を聞かせてくれた中村さん

    

素足感覚で運転しやすい! 「オールマイティ」Dソール搭載モデル

クルマや重機の運転に最適な「オールマイティ」ローカットタイプ。かかとにやや丸みを持たせ、土踏まずより前を薄めにした「Dソール」で繊細なペダル操作が可能。運転の多い運輸業のほか足裏感覚が必要になる高所作業にもちょうどいい。JSAA規格(A種)認定品。


脱ぎ履きの多い職種におすすめ♪ 「オールマイティ」の3本ベルクロモデル

3本ベルクロを採用した「オールマイティ」ローカットタイプ。脱ぎ履きしやすいだけでなく、作業中のフィット調整も楽々。かかとにやや丸みを持たせ、土踏まずより前を薄めにした「Dソール」採用でクルマや重機のペダル操作もバッチリ。JSAA規格(A種)認定品。