【寅壱】これが作業着屋のデニムだ!image_maidoya3
秋も深まりつつある倉敷市児島――。「Go Toトラベル」のおかげで倉敷の美観地区には観光客が来ているようだが、児島に賑わいが戻るにはまだしばらくかかりそうだ。タクシーの運転手は「外国人の若者がハシャぎ回るからうるさくてかなわんかったけど、いま思えばああいうのもよかったねぇ……」とこぼしている。そう、国産ジーンズのショップや工場が軒を連ねることで有名な児島は、日本人より外国人に人気のエリアだったのだ。ところが新型コロナで状況は一変。インバウンド観光客がなくなったいま、駅前名物の風にそよぐジーンズもどこか儚げ。ご当地キャラ「Gパンダ」もマスク着用で感染予防を呼び掛けている。少し寂しい。あの押しつけがましいほど、ジーンズ・ジーンズ・ジーンズ! で、自信に満ちあふれていた児島は、とうぶん見ることができないのか……。しかし、児島がジーンズだけではないことをまいど屋は知っている。観光がダメでも、この街には世界に誇る作業着メーカーがあることを!

寅壱
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児島(倉敷市)の寅壱本社
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新作デニムの展開について語る
●web発信に拍車
 
  「今回の秋冬物はやや少なめです。コロナの影響で展示会も縮小され、オンラインと中四国のみでの開催となりました。実物を手に取っていただけないのは残念なのですが、その代わりに現在はweb発信に力を入れています。寅壱オンラインショップの商品説明に加え、YouTubeの寅壱公式チャンネルでもPR動画をアップしているので、そちらをご覧いただければ。画面上の伝え方にいろいろ工夫を凝らした結果、デザイン面だけじゃなく、素材感や機能、メリットなんかもちゃんとわかるようになってきました。動画を見てもらえれば商品の概要はほぼつかめます」
 
  こう語るのは企画開発部の内藤さん。web上で商品を評価してもらうことに前向きな様子だ。
 
  他の業界と同じように、今回のコロナ禍で作業服・ユニフォームのメーカーもイベントの中止や縮小を余儀なくされた。そこで急に注目されるようになったのが、動画サイトやSNSの活用だ。YouTubeの寅壱チャンネルでは、商品ごとに1分ほどの短い紹介動画をアップしているほか、カタログの巻頭特集との連動企画「ユージが訪ねるニッポンの職人」も登場。テレワークやリモート会議といった世間の流れと軌を一にして、作業服メーカーの情報発信もコロナによって一気にデジタル化が進んだ。SNSでもハッシュタグ「寅壱デニム」や「寅壱女子」をつけた投稿をちらほら見かける。時代は変わったのだ。
 
  「寅壱のユーザーは99%が男性ですから、Instagramとかはなかなか難しいんですけど。とにかくブランドだけで買ってもらえる時代ではないので、品質や機能に加えてトレンドもうまく料理しつつ取り入れる。web上での発信も積極的にやっていく。味のあるブランドとのコラボ商品を出したりして話題も提供する。そんなふうにして需要をうまく取り込んでいくのが大事かなと思っています」
 
  ●圧倒的デニム!
 
  「今回はデニムの新作を2品番、発表しました。人気のストレッチデニム作業服です。もうワークウェア屋なんだかデニム屋なんだかって感じですが(笑)、とにかく今シーズンは圧倒的にデニム推し! です」
 
  と言って内藤さんが紹介するのは、新作の「8910」と「8920」。デニムの長袖ブルゾンとパンツの上下。若い職人の人気を集める細身シルエットで、現在のトレンドに乗った商品と言える。
 
  まずは「8910」から見ていこう。内藤さんが「高価格帯デニム」と位置付けるこのウェアは、デザインに加えて機能面の充実ぶりが特徴。生地は寅壱で初めて縦横に伸びるストレッチ素材「4D MOTION」を採用。袖は3Dパターンの立体仕様となっており、着心地と動きやすさは最上級だ。部分的に堅牢なコーデュラ素材を使ったり、止水ファスナーを開くと蛍光イエローが見えたりといった細かいところもなかなか心憎い。
 
  「ルックス面では、ファッション界で流行している『アスリージャー(アスリート+レジャー)』を意識しています。密を避ける意味でキャンプやアウトドアがブームになっているのに加えて、健康志向の高まりもあってスポーティーな雰囲気も外せません。そういう時代の流れの中で、どのようにトンがった"寅壱らしさ"を出せばいいのか。デニムという枠組みの中で他社との違いを出すのは難しい。そこでこの『8910』シリーズでは、バイオウォッシュ加工+ブラストで独特の色味とこなれた印象を出すことにしました。ファッション界でも最近、90年代によく見たケミカルウォッシュのジーンズが流行り出していますからね」
 
  バイオウォッシュとは、セルラーゼという酵素を使った脱色加工。生地にダメージを与えずにほどよく色落ちさせるのに加えて、酵素に分解された表面が滑らかになり、肌触りが非常によくなる。ジーンズのゴワゴワ感が苦手な人に特にオススメの加工だ。
 
  「ハイエンドなモデルということで品質面にも自信があります。ストレッチ度が高いと伸びるのが心配かもしれませんが、『8910』は11オンス近い太目の糸を使っているのでポリウレタンの糸も太い。ハードに使っていても長持ちしますよ」
 
  デニムのワークウェアが欲しいけど、みんなと同じは嫌。高くてもいいから上質なものを着たい――。そんな人にはぜひ「8910」を、というわけだ。
 
  ●8920は「狙った商品」
 
  一方、新作デニムの2つ目「8920」はどういった商品なのか。まず目につくのは鮮烈な印象を残す色落ち、つまり強いビンテージ加工だが、一体どういう意図があるのだろう。
 
  「こちら(8920)は、すごく"狙った商品"です。ここ数年、デニムのワークウェアが売れている、これからも売れ続ける。そんな中でフツーの商品を出していたら飽きられるし、売り場でも埋没してしまう。そこで、デニムの中でひときわ目立つ商品を作ろう、と。ショップで目を引くだけじゃなく、個性的なルックスを好む職人さんのウケも狙っています。ストレッチ素材に加えて、ブルゾンの袖を3Dパターンの立体造形にすることでスリム感も強調しました」
 
  特筆すべきは、やはり色落ちだろう。部分的にほぼ白になったデニムは斑模様と言ってもいいほどで、近づきがたいほどの"ヤンチャ感"を放っている。細身デニムの作業着はだいたい同じだと思っていたが、こんな手があったとは……。
 
  そんな顔をしていると、内藤さんが裏情報を教えてくれた。
 
  「『8920』の激しいアタリの秘密は、裏地を見てもらえればわかります。普通ジーンズの裏は白でしょ? でもこれは黒。ブラックの先染糸を使っているからこうなるんです。このド派手な色落ち加工によって、ワークウェア臭さを払拭することができた。実際、価格が安いこともあって『8910』より売れてますよ」
 
  「8910」のパンツが、カーゴとジョガーの2タイプ用意されているのに対して「8920」のパンツはカーゴのみ。これもマスを狙った(数が出る)商品だからという。「派手な方がマス向け」というのが寅壱らしい。
 
  デニム以外の新作では、雨や汚れを防ぐ撥水&透湿の「9520」シリーズ、溶接などの現場で活躍する綿のストレッチ作業服「3620」など、いずれも「+α」の機能性がウリとなっている。寅壱といえば縫製などの品質、というのはもはや過去の話で、今や寅壱のウェアは「高品質+高機能」が常識となっているのだ。
 
  「これからもweb発信に力を入れていきますが、品質の高さと機能性はぜひ実際に味わってみてほしいですね。まずは試着して、着心地や動きやすさを体験してみてください!」
 
  「デニムの児島」を支えていくのは寅壱かもしれない。
 
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シリーズごとに紹介するPR動画
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「ぜひ試着してみてください」と内藤さん

    

デニムもやっぱり寅壱だよね! ハイエンド機能満載の「8910」シリーズ

タテ・ヨコに伸びるストレッチ素材「4D MOTION」を使ったデニム作業服。3Dパターンの立体縫製でシルエットはスッキリ。生地はバイオウォッシュ+ブラスト加工で、こなれた雰囲気を演出する。肩や裾のコーデュラ使いや止水ファスナーなど、どこをとってもハイエンド。パンツはカーゴ、カーゴジョガーの2タイプ。


現場&街の視線を独り占め! 激しい色落ちが異彩を放つ「8920」シリーズ

激しいアタリの色落ちが魅力のデニム作業服。ストレッチ素材と3Dパターンの立体縫製のおかげで着心地と動きやすさはパーフェクト。独特のビンテージ加工とユーズド感により、現場だけでなく街の中でも違和感のないルックスに。パンツはカーゴのみ。