毎年恒例のファン付きウェアの取材だと告げると、その男は突然こう切り出した。「空調服は不良率が違います! どこの会社とは言わないけど、ありますよね。すぐ断線したり回収になったりとか」。そう、たしかに空調服はトラブルが少なく、信頼のブランドなのでユニフォーム採用も多い。とはいうものの、近年は他社もがんばっているというか、ただのマネではなく品質面でも追随してきているというか……。「ああ、他社もパワーはスゴイですよね~。今年は20ボルト以上も出てきてますから。まあ、風量が多ければ多いほど涼しいわけじゃない、っていつも言ってんですけど……」。そう語りながら大きなため息を付くと、彼はテーブルに黒い塊を置いた--。「ゴトリ」と重量感のある音が響きわたる。そしてたっぷりと間をとってから口を開いた。「新型の18ボルトバッテリーです」。
自重堂
新型バッテリーはポケットに入る
新型ファンはメンテナンス可能
●106リットルの大風量!
ちょ、空調服は安易なパワー競争には加わらないって話だったんじゃ……。そう言いかけたのを遮るように、自重堂のK氏は新型デバイスの説明を始める。
「“安易な”パワー競争じゃありませんよ。『他社より何ボルト上だ!』みたいな話ではね。でも、ちょっとスゴイと思いませんか、空調服の新デバイスは18ボルトで毎秒106リットルですよ。どうです? よそのメーカーはこんな数値を出せてますか? 20ボルト以上でも80、90ってのが相場じゃないですか。3桁に届く大風量というのは、やはりワンランク上のスペックを求める人には響くと思いますよ~」
と差し出されたバッテリー「BT23211」は、2021−22年モデル(14.4ボルト)ものと比べてかなり縦長。重量は約340gと、50グラムほどアップしている。手に持ってみると「デカい」と思うけれど、ウェアに取り付けてみるとあまり気にならない。K氏によれば、空調服のバッテリー用ポケットは大きめに作ってあるため、昨年までのウェアにも新バッテリーは問題なく収まるという。
では、この106リットルの大風量はどんなシーンで効果を発揮するのだろう。
「私たちは『瞬間冷却』と呼んでるんですけど、暑さキツイなー、太陽ヤバいわー、と思ったらバッテリーのTボタンを長押しする。するとターボモードに切り替わって、106リットルの大風量運転のスタートです。そのまま20秒経つと、自動的に16ボルトに変わって、5分経過後、さらに12ボルトへと移行します。段階的にパワーダウンするとはいっても、平均して毎秒80リットル前後になるので、充分すごい風ですよ」
●メリハリが「涼しさ」を生む
このような「涼感」についての考え方には、少し補足が必要かもしれない。
たとえば、サウナから水風呂に入るとすごく冷たい。だが、しばらくするとあまり冷たさを感じなくなる。これは「熱い肌-冷たい水」という温度差のギャップが徐々に埋まってくるからだ。同じように空調服も、体が火照った状態で大風量モードにしたほうが、ギャップのおかげでより涼しさが味わえる。つまり、ずっと同じ風が続くより、急に風量がアップして、徐々にダウンしていくほうが「主観的な涼感」は強くなるのだ。そんなわけで、たとえ毎秒106リットルの大風量が20秒しか持たなくても、ターボモードは超涼しい! と言えるのである。
「涼しさは感覚的なところがありますよね。たとえば、冷房の効いた部屋より屋外のビアガーデンで飲むほうが、よりビールは冷たい、といった感じでしょうか。空調服のターボモードもこれに近くて『うわあ、涼しい!』と感じる間だけ最大風量にしますよ、と。同じような考え方で『ゆらぎモード』という稼働方式も選べるようになっています。これはバッテリーの出力を、10ボルト、8ボルト、また10ボルト、と交互に自動切り替えするもの。電力の節約によって動作時間が11時間以上になります。これだけの動作時間があれば、仕事中のバッテリー切れやパワー不足の心配もありません。ずっと一定の風が回るより、風量にメリハリがあるほうが、より快適になった気がするわけです」
●ついに「水洗い可能」!
では、続いて18ボルトバッテリーに対応したファンを見ていこう。新型ファン「FA23112」は、有機的デザインのカバーが特徴的だった2021−22年モデルに比べると、かなりおとなしい印象。先祖返りしたかのようにも感じる。
「代わり映えしないデザインだと思ったでしょ? でも、今回のファンは従来モデルとはまったく違う特徴がある。なんと、カバーが開くようになり、羽根も取り外して洗えるようになりました!」
え……、まじで? 空調服といえば「羽根に触らないでください」がおなじみの注意書きだったはず。旧モデルの取扱説明書には、カバーの隙間から綿棒を突っ込むのはもちろん、清掃用のエアーダスターも羽根が折れる可能性があるから禁止、とあったのを記憶している。それが、一体どういう風の吹き回しなのか(空調服だけに)。
「うーん、まあ大風量もそうですけど、他社デバイスを意識しているんだと思いますよ。やっぱりホコリだらけのファンから顔に風が来るのはイヤじゃないですか。私も驚いたんですけど、ただカバーが開くだけじゃなくて、扇風機のように中心のネジを外して羽根を外せるのはスゴイですよね。それなりの値段がするものだから、無理に綿棒とかを突っ込んで壊したりするのも心配だし。水道でじゃぶじゃぶ洗うほうが羽根にも優しくていいですよね」
メンテナンスを考慮すると、カバーデザインがシンプルになったのも納得がいく。歯ブラシなんかでホコリを落とす場合、今回のような直線的な形状のほうがラクだろう。
●目玉アイテムは「半袖」
では最後に、新作ウェアについても聞いておこう。K氏のイチオシは「54160」半袖ブルゾン。自重堂の空調服といえばベスト型のイメージがあるが、今シーズンの本命は半袖だという。
「じつは昨年あたりから、じわじわと半袖の人気が出てきているんです。ベストは軽くて動きやすいけれど、脇の下に風を当てるのが難しい。でも半袖なら肩から脇の下まで風を通せます。脇の下は大きな動脈が通っているので、風が当たるとすごく冷却効果があるんです。せっかく18ボルトの新型デバイスを買うんだったら、ぜひ新作の半袖で最強クラスの涼しさを体感してみてほしいですね」
大風量デバイスに水洗い可のファン、そして半袖ウェア……。去年まで「反パワー競争・メンテ不可・ベスト推し」の考え方を聞かされていたこちらとしては、今までの話は何だったの? と言いたい気もする。
それでも、涼しくなるならすべてよし! こんな宗旨変えなら大歓迎だ。
ちょ、空調服は安易なパワー競争には加わらないって話だったんじゃ……。そう言いかけたのを遮るように、自重堂のK氏は新型デバイスの説明を始める。
「“安易な”パワー競争じゃありませんよ。『他社より何ボルト上だ!』みたいな話ではね。でも、ちょっとスゴイと思いませんか、空調服の新デバイスは18ボルトで毎秒106リットルですよ。どうです? よそのメーカーはこんな数値を出せてますか? 20ボルト以上でも80、90ってのが相場じゃないですか。3桁に届く大風量というのは、やはりワンランク上のスペックを求める人には響くと思いますよ~」
と差し出されたバッテリー「BT23211」は、2021−22年モデル(14.4ボルト)ものと比べてかなり縦長。重量は約340gと、50グラムほどアップしている。手に持ってみると「デカい」と思うけれど、ウェアに取り付けてみるとあまり気にならない。K氏によれば、空調服のバッテリー用ポケットは大きめに作ってあるため、昨年までのウェアにも新バッテリーは問題なく収まるという。
では、この106リットルの大風量はどんなシーンで効果を発揮するのだろう。
「私たちは『瞬間冷却』と呼んでるんですけど、暑さキツイなー、太陽ヤバいわー、と思ったらバッテリーのTボタンを長押しする。するとターボモードに切り替わって、106リットルの大風量運転のスタートです。そのまま20秒経つと、自動的に16ボルトに変わって、5分経過後、さらに12ボルトへと移行します。段階的にパワーダウンするとはいっても、平均して毎秒80リットル前後になるので、充分すごい風ですよ」
●メリハリが「涼しさ」を生む
このような「涼感」についての考え方には、少し補足が必要かもしれない。
たとえば、サウナから水風呂に入るとすごく冷たい。だが、しばらくするとあまり冷たさを感じなくなる。これは「熱い肌-冷たい水」という温度差のギャップが徐々に埋まってくるからだ。同じように空調服も、体が火照った状態で大風量モードにしたほうが、ギャップのおかげでより涼しさが味わえる。つまり、ずっと同じ風が続くより、急に風量がアップして、徐々にダウンしていくほうが「主観的な涼感」は強くなるのだ。そんなわけで、たとえ毎秒106リットルの大風量が20秒しか持たなくても、ターボモードは超涼しい! と言えるのである。
「涼しさは感覚的なところがありますよね。たとえば、冷房の効いた部屋より屋外のビアガーデンで飲むほうが、よりビールは冷たい、といった感じでしょうか。空調服のターボモードもこれに近くて『うわあ、涼しい!』と感じる間だけ最大風量にしますよ、と。同じような考え方で『ゆらぎモード』という稼働方式も選べるようになっています。これはバッテリーの出力を、10ボルト、8ボルト、また10ボルト、と交互に自動切り替えするもの。電力の節約によって動作時間が11時間以上になります。これだけの動作時間があれば、仕事中のバッテリー切れやパワー不足の心配もありません。ずっと一定の風が回るより、風量にメリハリがあるほうが、より快適になった気がするわけです」
●ついに「水洗い可能」!
では、続いて18ボルトバッテリーに対応したファンを見ていこう。新型ファン「FA23112」は、有機的デザインのカバーが特徴的だった2021−22年モデルに比べると、かなりおとなしい印象。先祖返りしたかのようにも感じる。
「代わり映えしないデザインだと思ったでしょ? でも、今回のファンは従来モデルとはまったく違う特徴がある。なんと、カバーが開くようになり、羽根も取り外して洗えるようになりました!」
え……、まじで? 空調服といえば「羽根に触らないでください」がおなじみの注意書きだったはず。旧モデルの取扱説明書には、カバーの隙間から綿棒を突っ込むのはもちろん、清掃用のエアーダスターも羽根が折れる可能性があるから禁止、とあったのを記憶している。それが、一体どういう風の吹き回しなのか(空調服だけに)。
「うーん、まあ大風量もそうですけど、他社デバイスを意識しているんだと思いますよ。やっぱりホコリだらけのファンから顔に風が来るのはイヤじゃないですか。私も驚いたんですけど、ただカバーが開くだけじゃなくて、扇風機のように中心のネジを外して羽根を外せるのはスゴイですよね。それなりの値段がするものだから、無理に綿棒とかを突っ込んで壊したりするのも心配だし。水道でじゃぶじゃぶ洗うほうが羽根にも優しくていいですよね」
メンテナンスを考慮すると、カバーデザインがシンプルになったのも納得がいく。歯ブラシなんかでホコリを落とす場合、今回のような直線的な形状のほうがラクだろう。
●目玉アイテムは「半袖」
では最後に、新作ウェアについても聞いておこう。K氏のイチオシは「54160」半袖ブルゾン。自重堂の空調服といえばベスト型のイメージがあるが、今シーズンの本命は半袖だという。
「じつは昨年あたりから、じわじわと半袖の人気が出てきているんです。ベストは軽くて動きやすいけれど、脇の下に風を当てるのが難しい。でも半袖なら肩から脇の下まで風を通せます。脇の下は大きな動脈が通っているので、風が当たるとすごく冷却効果があるんです。せっかく18ボルトの新型デバイスを買うんだったら、ぜひ新作の半袖で最強クラスの涼しさを体感してみてほしいですね」
大風量デバイスに水洗い可のファン、そして半袖ウェア……。去年まで「反パワー競争・メンテ不可・ベスト推し」の考え方を聞かされていたこちらとしては、今までの話は何だったの? と言いたい気もする。
それでも、涼しくなるならすべてよし! こんな宗旨変えなら大歓迎だ。
今シーズンのイチオシは「半袖」
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サイドファンも登場
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これなら炎天下の高所作業もイケる! 空調服「54160」シリーズ ユニークなプリント柄が目を引くフルハーネス対応の空調服。素材は軽量ポリエステルでライトな着心地。半袖・ベストとも左右の肩にDカン、背中にランヤード取出口付きで、フルハーネスの上から着用できる。ファン脱落防止用のメッシュ付きで高所作業も安心。 |
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銀ファスナーは伊達じゃない! 遮熱加工の空調服ベスト「54180」 シルバーアクセを思わせるギラギラ感のファスナーが特徴的な空調服ベスト。ポリエステル生地は遮熱加工が施されており、直射日光での体温上昇を防いでくれる。保冷剤用のメッシュポケットは3カ所で、ほかの空調服ベストと比べてより猛暑仕様となっている。 |
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