夏の暑い盛りの昼下がり、ひとりの作業員が現場で仕事を続けていた。上着は調達したばかりの空調服、それに最新のデバイスがセットされている。彼はハイパワーの高性能ファンがうなりを上げて送りこんでくる風を浴びながら悦に入っていた。その風圧は、去年に比べて段違いに威力を増しているように思えた。やっぱり違うねえ。彼は自分に言い聞かせるようにそう言った。それからそっと、額の汗をぬぐった。俺は幸せだよ。他の奴らじゃ手が届かない高級品を手に入れ、普通は決して味わえない心地よさに包まれている。男の額から、ぽとりと大粒の汗が滴り落ちた。彼は再び額をぬぐったが、汗はあとからあとから湧き出るように男の首筋を伝っていった。俺は最高の空調服に身を守られている、と男は言った。これ以上を望めば罰が当たるくらい。暑くてたまらねえ、とどこからか声がした。職長に言って早退させてもらいたいくらいだ。男はフラフラとした足取りでフェンス際の木陰まで歩いて行き、そのベンチに腰を下ろした。この涼しさは最高だ。そして俺は幸せ者だ。朦朧とする意識の中、男はそう呟いた。ああ、お前は幸せ者だよ。どこからかまた声がした。いくら暑くても絶対に不平を言わない、典型的な幸せ者だよ。その声は目を閉じた男に囁きかけるようにこう続けた。いいか、ひとりの人間が幸せなのは、当の本人が幸せだと思っているか、幸せだと思い込もうとする強い意志を持っているからに過ぎない。そしてそれは明確な根拠を持たない、不確かな感覚の表れであって、客観的な事実とは必ずしも合致しない。だから幸せは長続きしないんだ。結局、それは願望の裏返しであったことがいずれ明らかになる。真実をおろそかにしたツケを支払う羽目になったとき、幸せが幻想だったことにようやく気付くんだ。そろそろ目を覚ませよ。男はその声を振り切るように立ち上がり、バッテリーのスイッチを最強モードに切り替えた。だが相変わらず、男の額からは汗が流れ続けている。自慢の空調服の内側では、生暖かい風が猛烈な勢いで循環し続けている。まるで冷房機能が故障してしまった車の中で、エアコンの送風ボタンを押したときのように。絶望する男に、また声が囁きかけてきた。いいか、本物の幸せは細部に宿っている。それを見落としちゃいけない。見落としたまま何かを始めれば、失敗するに決まっている。だから小さなことを手抜きせず、準備を整えておくんだよ。あんたは誰だ、と男は呻くように言った。俺はお前だよ、と声は言った。最強デバイスの能力を存分に発揮させるためには、ウェア側にひと手間を。ボディー内側に施したチタンコーティングが太陽光を跳ね返し、ウェア内温度の上昇を防ぐ遮熱モデル。スタイルを極め、タフに働く男が似合う人気のJawinシリーズ商品。*電動ファンと電源は別売りです。別売りの電動ファンと電源は「関連商品」欄をご覧ください。*空調服は(株)セフト研究所・(株)空調服の特許および技術を使用しております。*DIRECT COOLINGロゴは(株)セフト研究所・(株)空調服の登録商標です。
■ メーカー:自重堂
■ 型番:54180
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