月刊まいど屋 --特集-- 2010年6月号[住商モンブラン]1ページ

たくさんの白衣メーカーがある中で、白衣だけを専門にする会社は、実はそれほど多くない。多くのメーカーの場合、白衣はさまざまな商品ジャンルの一部門として取り扱われることが多く、その会社でのウエートもそれほど高くないことが多い。そんな中、住商モンブランは医療用を中心とした白衣専門のメーカーである。他社のような多角的な商品展開を敢えて行わず、白衣の製造・販売だけで実績を伸ばしてきた。同社はなぜ白衣専門という道を選んだのだろう。インタビューに応じてくれた土肥社長はこう答える。「専門性を追求することで商品をより深く理解し、レベルの高い商品を開発することができる。品質を維持できる。そして何より、自分たちの商品を深く愛することができる。白衣は奥が深いんです。白い生地を裁断して縫製すれば出来上がるというものじゃない。浮気をする余裕が全くない」。土肥社長はそう言って笑いながら続ける。
「繊維業界が好景気に湧いていた1950年に設立された、武山繊維株式会社という小さな会社が住商モンブランのはじまりです。創業当初は綿100％の白い生地を製造し、厨房用白衣メーカーに卸していました。1962年頃、ユニフォームの製造依頼を受けて、初めての自社工場を持ちました。そこで、白衣をつくることにしたのが現在の事業を始めるキッカケでした。白衣の製造は偶然のタイミングだったんですね。そんな始まりだったのですが、次第に生地や縫製の確かさが評判になっていったのです。支持してくださるお客さまの声に応える流れで立ち上げた、ユニフォームブランド『モンブラン』が、今では社名にまでなっている。なぜ『モンブラン』にしたのかというと、白衣の分野で頂点をめざしたいという想いを、アルプス山脈の最高峰といわれる白く美しい山モンブランに託して命名したから。そうして本格的に白衣製造に取り組んでいく中で、特に大切にしたことが輸入品との差別化でした。お客さまの満足感をより高めるために、何よりも機能性を重視したウェアを作り続け、1990年頃には生地の販売とユニフォームの販売の売上がついに逆転したんです」。
結果的にこうなったという話しぶりではあるが、同社が白衣に対して注ぎ続けてきた情熱を思えば、現在のモンブランブランドの揺るぎない地位は偶然ではありえないだろう。それは、土肥社長のこんな説明を聞けばよく分かる。「多くのお客さまと取引するようになるにつれ、強い信頼関係が大切だと私たちは考えたのです。そこで、まず取り組んだことが、代理店・ユーザーの意見を吸収していくこと。そして、社内の営業部門と企画部門の連携を強くし、より深くニーズに応える商品の開発に力を注いでいったのです。お客さまの意見を聞きながらウェアづくりを突き詰めていくと、商品力は自ずとレベルアップしていきます。さらに、より厳しい目でクオリティを検査する品質管理室を設立して『繊維製品品質管理士』の資格を有するスタッフを多く配置しました。そんな取り組みが実を結び、多くのお客さまの声に支えられてここまでやってくることができた。これからもお客さまや取引先との信頼関係を深め、どこにも負けない服づくりをめざしていきたいと思います」。そう話す土肥社長の言葉には、強い確信と心意気が漲っていた。