新規開店。皆さま一人ひとりに、誠心誠意尽くします。ポストに投げ入れてあったチラシには、確かにそう書かれていた。手書きのメッセージの横にハートマークが添えてあり、その下には時間無制限の飲み放題との文言もあった。男はチラシの地図を頼りに家を出た。決して気軽に行ってみようと思える料金ではなさそうだったが、若い女性のものと思われる筆跡に、心惹かれるものがあったからだ。店は意外にも、昔通っていた作業服屋の隣にあった。妙に威圧的なオヤジが苦手で、最近は寄り付かなくなっていた店だった。男は作業服のノボリの横をすり抜け、新しくできた店のドアを押した。中は薄暗かった。客は入っておらず、店員すらも見当たらなかった。それで男は店の奥に向かって声を掛けたのだ。誰だ、と野太い声がした。それは天井にぶら下がっているスピーカーからの声だった。それから男が入って来た店のドアが開き、見覚えのある禿げ頭が入って来た。おう、兄ちゃん、作業着か、と禿げ頭が云った。いえ、今日は飲み放題と聞いて。男がしどろもどろになってそう言うと、作業着屋のオヤジは強面を少しだけ崩して笑顔らしきものを作り、そうか、だったらゆっくり飲んでいけとテーブルの用意をし始めた。あなたがこの店のオーナーですか?男は恐る恐るテーブルセッティングをしている大男に訊いた。女の子はどこですか?いないのなら、日を改めたいのですが。禿げの大男が再び顔をゆがめた。それは彼の笑顔に違いなく、今日は機嫌がいいようだった。禿げ頭は鼻歌を歌いながら入り口のドアの方に回り込み、テーブルチャージを払ってから帰れ、と男に云った。こういう店には入店料がある。知らんのか?それで男は逃げ場がないことをようやく悟り、まずはビールを注文した。ビールはない、と禿げ頭が云った。富士の天然水、コーラにファンタ、そしてポカリならたくさんある。ちょっと、話が違うじゃないですか、と男は甲高い声を上げた。恐怖よりも驚きの方が勝り、男を大胆にさせてしまったのだ。誠心誠意って、チラシに書いてあるじゃないですか。ハートマークだってあったじゃないですか。男はチラシを大男に突き付けた。大男はそれを受け取って、しげしげと眺めた。そして、酒を出すとは書いてない、と静かに云った。ハートマークは俺が描いた。人類に誠心誠意尽くす決意を込めたんだ。悪いか?人類?男は素っ頓狂な声を上げた。人類って、何言ってるんですか。チラシを入れたなら、客に尽くしてくださいよ。飲み放題の客に尽くすとは書いていない、と禿げ頭は云った。飲み放題の客が飲む天然水とコーラとファンタとポカリの空きボトルを集めて、作業着を作る。それを隣の店で売る。そういう活動がSDGs、人類に対する貢献だ。だから遠慮をせずに、げっぷが出るまで飲んでいけ。その店で男が飲み干したボトルは、今回発売された新型ウェアの裾になり、袖になり、衿になって、今、この画面に映っている。そしてもしかしたら、先月あなたが口をつけた飲料水の空きボトルも、その一部になっているかもしれないのだ。幅広いシーンに違和感なく溶け込むスマートシルエットの新定番。再生ポリエステルを使用したエコモデル。ハードな動作にもしなやかにフィットしてストレスを与えないストレッチタイプ。ボタンやファスナーが表に出ないスクラッチガードデザイン。胸の縦型ポケットは野帳がすっぽり入る大型設計。腕の上げ下げをスムースにサポートするメカアーム仕様。JIS T-8118対応の高度な制電機能付き。*Sサイズはユニセックス対応です。