この商品を紹介するバートルのカタログには、驚くべき写真が掲載されていた。そしてまいど屋は、ページの片隅にさり気なく置かれたその一枚の写真によって、一見ごく普通の軽防寒に思われるこのジャケットの特異性を知ることになった。無味乾燥なスペックの羅列の右側で、女が口角を上げてポーズを取っていた。両手は電車のつり革につかまるような格好で頭上に上がっているが、もちろん電車内ではない。そんな場所を、イメージ作りにうるさいバートルがロケに使用するはずがない。そこはワーカーの仕事服である作業着が、最も写真映えする確率が高い倉庫街の一角だった。恐らく、カメラマンはマーケティング担当者の要求を受けて、女にある一つの指示を出したはずだ。女は大人しくそれに従った。寒風に吹かれながら女が両腕を上げると、先ほど前ファスナーを外したばかりの前身頃が左右にはだけ、女の透き通るように白いウエストが露わになった。真冬の現場でへそ出しルック。しかも彼女の表情には、苦痛の色さえ浮かんでいない。写真にはその瞬間が収められていた。そしてその構図は、バートルが強い意志を持って狙っていたものだと考えて、まず間違いないはずなのだ。彼らは何を訴えたかったのだろう?今、まいど屋はそれを読み解こうと必死になって、この文章を書いている。艶めかしい女とは対照的に、ほとんど不愛想と言っていいほど素っ気なく印刷された商品特徴欄には、防風性や撥水性に優れたリップ素材を使用していると記されている。平たく言えば、風を通さず、多少の悪天候なら対応できる軽防寒だということだ。太陽エネルギーを熱に変換しながら、発熱作用による遠赤効果も発揮する「ラジポカサーモトロン」搭載モデルだともある。それで保温性にも多少の自信があることがうかがえる。だが、ありふれたように思えるたったこれだけの材料で、バートルは一人のか弱い女のボディーを寒風にさらし、それを我々に突き付けてきた。何がバートルをそこまで強気にさせているのか。その答えは、実際に使用する皆さんにしかわからないのかもしれない。再生糸を用いてSDGsにも対応したエコギア。蛇足ではあるが、そんな文言がやはりカタログにあったことも、ここに申し添えておく。*SとMのレディースサイズはボディーラインをよりキレイに見せるジャストフィットシルエット仕様です。
■ メーカー:バートル
■ 型番:7420
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