朝から小雨が降る肌寒い日のことである。まいど屋の店内をぶらぶらしていたのは、つかみどころのない男だった。仕事柄、相手が何者であるのかについておおよその見当が付くものだが、その男に限っては例外だったのだ。年齢不詳。職業不詳。二時間酒を酌み交わしても、用を足して席に戻ってくれば、初対面の挨拶をしてしまいそうな顔立ちだ。男はつまらなそうに陳列棚を見回した後、レジにやって来てこう云った。ウチにぴったりのチームジャケットをくれ。どんなお仕事ですか、とまいど屋は云った。何人くらいの会社で、何をされているんでしょう?当ててみな、と男は云った。こちらの反応を楽しむような口調だったが、その顔にはやはり表情がなかった。頭が悪いんだ、とまいど屋は云った。便所に行った直後は。そして特にこんな雨降りの日には。雨降りがどうしたって?男は驚いた様子で頓狂な声を上げたが、すぐに落ち着きを取り戻して、ウチらにおあつらえ向きのジャンパーがあるだろう、と繰り返した。なるほど、とまいど屋は云った。それから今度はじっくりと男を観察した。男の上着は雨で湿っているようだった。やや前かがみに背を丸めた体が、その下で小刻みに震えていた。なるほど、君は自分の会社が何をしているかわからない。スタッフの年齢構成や性別、人数もわからない。それじゃあ、こっちも何をアドバイスしていいかわからない。しかしたった一つ、わかっていることがある。君は天気予報を見なかった。雨合羽のコーナーはあっちだぜ。まいど屋はカウンターの右手を指さした。男の表情に、少しだけ変化が現れた。おちょくっているのか、と男は静かに云った。お宅は客の要望に的確に応える店だと聞いてきたが。まいど屋は男が最後まで言い終わるのを待たなかった。男の物言いに、こうしたタイプに特有の強い指導願望を感じ取ったからだ。その通りだ、とまいど屋は云った。この店は客のリクエストに精一杯対応する。そして客は満足し、リピーターとなってまいど屋を支える。それがこの商売の核心だ。しかし、その客はまいど屋が選ぶ。選んでもらって初めて客になる。君は客になりたいのか。男は弱々しく頷いた。ためらいがちに何かを言いかけた男を、まいど屋は再び遮った。よろしい、何らかの事情があって、君は仕事内容を話したくない。それでもまいど屋には提案できる商品があるぜ。晴天でも、あるいは今日のような天候の日であっても、ワークシーンを問わずに活用できる。男でも、女でも、若くても、年をとっていても、要するに仕事をする人間であれば誰でも着られる。そしてそれなりに雰囲気が出る。これがバートルから出た最新のフィールドジャケットだ。異存はないか?異存はない、と男は云った。チームユニフォームとしての着用を想定したシンプルデザイン。ボディー外側は冷たい北風をシャットアウトするマイクロシェル。内側は適度な保温性のあるライニングのホットメッシュ。悪天候にも負けない、耐水圧10000mmの強撥水仕様。フロントファスナーは上下どちらからでも開閉できるダブルジップタイプ。右胸のファスナーポケットは野帳がすっぽり入る大型設計。防風性をさらに高めるラミネート加工付き。*SとMのレディースサイズはボディーラインをよりキレイに見せるジャストフィットシルエット仕様です。
■ メーカー:バートル
■ 型番:3250


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