その電話が鳴ったのは、リビングでくつろぎながらテレビを見ているときだった。受話器を取り上げると、ドスの効いた声が云った。今から来い。現場の門は開けてある。30分以内だ。わかったな。最後の言葉は俺の意思を確認する意味に思えたが、電話の回線は俺の返事を待たずに乱暴に切られていた。もちろん俺に選択肢はなかった。電話など出なければよかったのだが、今さら遅い。俺は無防備状態でリラックスしすぎていた。注意力が散漫になっていて、ついうっかり真夜中のコールを受けてしまったのだ。俺は親方の苗字と4文字のF言葉を交互に繰り返しながら、家を出た。野良猫が塀の上から不思議そうな顔で俺を見ていた。俺は家のはす向かいに借りた駐車場に停めてあるピックアップに乗り込み、エンジンをかけた。そして親方が指定した30分きっかりに、現場のゲートに飛び込んだ。なかなかフットワークがいいじゃないか、と親方が云った。いや、大したことないっすよ、と俺は答えた。こういうこともあろうかと、いつも準備だけはしてますから。いい心掛けだ、と親方は云った。じゃ、あれを片付けてもらおうか。それから俺は、テレビを見ていたときと全く同じ格好で、たっぷり3時間汗を流した。その間、俺の口からは4文字のF言葉が少なくとも1000回はこぼれ出たと思う。まあとにかく、俺はやっとの思いで与えられた作業を終わらせた。そして家に帰り、やはりそのままの格好でベッドに入った。なかなかフットワークがいいじゃないか、と俺は俺に云った。そりゃ、オン・オフ着回せる、村上のフーディーを着てますからね、と誰かが答えた。リラックスもできるし、仕事にも使える、画期的なニットパーカーですからね。その声は、俺の頭の上のどこかで、俺に囁きかけているようだった。すぐ現場に直行できるウェアを開発したのは村上被服ですよ。ファック村上、と俺は云った。着心地上々の綿リッチボディー。ゆったり着られるオーバーサイズシルエットタイプ。小物の収納に便利な各種ポケット付き。
■ メーカー:村上被服
■ 型番:122


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