カタログをめくると、そこには驚くべきことが書かれていた。アスリートとワーカーが求める機能を集約した次世代のワーキングウェア。スポーツとワーキングの融合。何度読み返しても、確かにそう書いてある。なぜだかわからないけど、胸騒ぎがした。何かよくないことが起こりそうな気がする。いや、もしかしたらもうすでにそれは起こってしまっていて、僕はそのただなかに放り込まれているのかもしれない。念のためにまいど屋のオフィスを見渡してみたが、変わった様子は特に感じられなかった。それでも、正体不明の僕の焦りは、時間とともに高まっていった。令和の時代はとうに過ぎ去ったのだ、とどこからか声がした。その声は、例のカタログから聞こえてきていた。それは預言の書だった。そして僕は突然、自分自身が得体のしれない場所に漂着した浦島太郎になっていたことを悟った。その珍奇な土地では、ワーカーはスポーツをしながら仕事をしている。仕事はスポーツであり、スポーツは仕事だった。そして誰もが、スポーツパンツと見分けがつかないような格好をして、日々現場で精を出している。リミットを外し、アスリートのパフォーマンスを最大化する、とそのカタログは終末の世界の労働シーンを描いていた。僕はそうした場所で働く人々を想像した。そしてもちろん、彼らが着用している、世にも不思議な仕事着のことも。ボディーは肉厚で高耐久、どんな激しい運動にも対応できるタフな作り。それでいて、肉体の動きに軽やかにフィットする圧倒的なストレッチ性を備えている。スリムなシルエットながら、アスリートが求める運動性がいささかも損なわれていないのはそのためだ。悪天候時も安心の撥水仕様。我に返って僕は再び狼狽えた。そしてまいど屋の物流センターを点検して仰天した。次世代のワーキングウェアは既にそこに存在し、ユーザーへの出荷を待っていた。令和は僕が知らないうちに、ひっそりと終っていたようだった。そして僕は預言の書が云う次世代を、ひと足先に歩み始めていたのだ。
■ メーカー:アイトス
■ 型番:11442
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