いわゆるサイバーパンクスタイル、なのだそうであります。あの名作、ブレードランナーにおいて、ハリソンフォードがこんな格好で登場した記憶は全くないのですが、とにかく近未来のディストピアでは、人びとが抑圧された社会体制に反抗するため、こうしたファッションに身を包んでいるらしいのであります。そしてメーカーの桑和は、今回、未来を先取りする形で、このウェアを提示してきた。実に有難迷惑であります。彼らは曲がりなりにも自由社会で生活している現代の我々に、自由の放棄を促しているのであります。その世界では、職人は定められたマニュアルからの逸脱は許されず、創造性を奪われ、ビッグブラザーの指示通りに体を動かし、その結果として仕事の出来が凡庸であっても知らんぷりを決め込まざるを得ず、そうして何に対しても情熱は湧かなくなり、どうでもいいやとばかりに投げやりな毎日を送ることになるのであります。しかるに、なぜそのような無気力の現場で、身体の自由を最大限に保証してくれるジョガースタイルに身を包む必要があるのか。それは恐らく、来たるべき脱出と解放を暗示することで、意気消沈した現場に活力を取り戻そうとする試みなのであります。気力の萎えた病人に、無理やりカンフル剤を打ち込んで、あたかも希望の明日が拓けたように錯覚させる策略なのであります。馬鹿もほどほどにしてほしいのであります。元々自由だった我々が、なぜ進んで不自由を受け入れ、さらにそこからの解放を夢見て戦い続けなければならないのか。これは需要の原因と解決策を同時に作り出すことで購入意欲を刺激するマーケティング手法の典型であります。このような危険な存在は、若き日のハリソンフォードを連れてきて、即刻抹殺してほしいのであります。動きやすさを追求したワイドシルエットスタイル。ハードな動作にもしなやかにフィットするストレッチタイプ。足元のリブは冷感性のニット素材。野帳がすっぽり入るカーゴポケットなど、収納力の良さにも注目の実力ギア。コイツじゃなけりゃダメだっていうウェアはそう多くはない。妥協を許さないマニアックな視線でワーキングギアの新たな可能性を切り拓くG.Groundシリーズ商品。
■ メーカー:桑和
■ 型番:7378-07

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