作業服・クレヒフク 613 CATサロペットならまいど屋

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クレヒフク 613

CATサロペット

　出逢った瞬間に私の頭に浮かんだのは、ガードレールを突き破って転落死するライダーの姿だった。ライダーは腰の高さほどの首都高のフェンスを勢いよく越え、一瞬、天へと続く橋を駆け昇って行くようにも思われたが、やはり重力の法則には逆らえなかったとみえて、万歳をしながら視界から消えていった。だが、次に当然予想される衝撃音は、不思議と聞こえてこなかった。フェンスの下に私には見えない虹の橋があったのかもしれないし、あるいは何かの奇跡が起きて、ライダーは10メートル下のアスファルトに見事に着地し、甲州街道を西へ走り去っていったのかもしれない。いずれにしても、初対面の彼に何故そんな印象を持ったのかはわからなかった。私は彼の朗らかな笑顔に魅了されつつも、その下に潜む危うさのようなものを本能的に感じ取っていたのであろうか。しばらくの間、私と彼は共に同じプロジェクトを担当していた。彼は仕事のできる男だった。要領を掴むのがうまく、何をするにも的確な動作で与えられたタスクをこなしていた。私は内心、彼の能力の高さに舌を巻いていた。そして子供の絵本に出て来るような汚れのない表情と、研ぎ澄まされた刃のような冷たい緊張感が伝わってくる仕事ぶりのアンバランスさに、彼の第一印象は私の中で、ますます大きく膨らんでしまうのだった。今思えば、私の予感は半分だけ当たっていた。彼は次第に自分の個性を隠さなくなり、周囲との協調が取れなくなっていった。仕事ができる分、誰も表だって彼の振舞いを批判することはできなかったが、場の空気の中では明らかに浮いた存在になっていた。それでも彼は、相変わらず柔和な笑顔を浮かべていた。昔話の絵本の中にいる、爺さんのような笑顔を。そしてある日、彼はいなくなった。職場を囲んでいた見えないフェンスを突き抜けて、どこか遠い所へと消えてしまったのだった。彼は自分の居るべき場所を見つけるために、虹の橋を駆け昇って行ったのだ。あるいはこの現実社会で生きられる別の道に飛び移り、目的地に向かって走り去っていったのだ。彼は死んでいない、と後日風の便りに聞いた。新しい場所に、なかなかうまく適応しているらしい。そこには彼のような雰囲気を持つ仲間が大勢いるという。どんな所なのだろう？一度、訪ねていってみたいと思っている。現場仕事には勇気がなくてためらってしまうひとも、デイリーユースで活用しているみたい。温かみのあるコール天に刺し子の入った配色ポケットが特徴のサロペットスタイル。

■　メーカー：クレヒフク

■　型番：613

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