プロヴァンスの海風が吹いてくる!コートダジュールの陽光が輝き出す!まいど屋で買ったウチのスタッフウェアには、確かそんなキャッチが付いていた。僕たちはカタカナで書かれたその地名が持つエキゾチックな響きに惹かれ、深く考えもせずにコイツをユニフォームに採用した。そしてその日から、僕たちの店はかつてとは全く違った雰囲気に変身してしまったんだ。店は心斎橋の雑居ビルの中にあった。お客は床にゲロの染みがある薄暗いエレベーターでゆっくりと7階まで運ばれ、ようやく店の玄関にたどり着く。年代物のドアは締め切られている。3畳程度のそのエレベーターホールで、お客はそのまま引き返すか、入店するか、考える猶予を与えられる。物事にあまり頓着しない人間か、もしくは正常な判断力を失っている酔客が、ときたまドアを開けて入店してきた。彼らはドアを開けた瞬間、自分がどこに迷い込んでしまったのかわからなくなっているようだった。そして下品で猥雑で、酔いつぶれて床に転がっても誰も気にしないような場所でささやかな優越感に浸ろうとする目論見は、今やアテが外れてしまったことを知って不安になっていた。ヴォン・ソワールと僕たちはにこやかに挨拶した。ムッシュ、マダム、さあこちらへどうぞ。僕たちは一目で安物とわかる手荷物を恭しく受け取ってから、彼らを席に案内した。客は落ち着かなさげにきょろきょろと辺りを見回し、やがてスタッフの上着に目を遣ってこうつぶやくのだ。なんだか、地球を半周してきたようだ。ええ、そうですよ、と僕たちは心の中で返事をする。ここは南仏の港町です。地中海の波の音が聞こえる静かなビストロなんです。ワインをもらおうか、と男性客のひとりが気を取り直したように云う。ウィ、とスタッフが返事をする。もちろんですよ、ブルゴーニュ産のピノノワールでいいものが入ってます。いかがですか?僕たちはこのウェアを纏って、店内を忙しく動き回る。袖はトリコロールカラーのテープでロールアップされ、開放感のある雰囲気を醸し出している。ウエストにボリュームを持たせた、絶妙の短め丈スタイル。シャリ感のある肌当たりと吸汗性の良さに加え、適度なハリ・コシ感で着心地快適なポプリン素材。腰回りのフィット感を2段階に調節できるアジャスタータブ付き。
■ メーカー:住商モンブラン
■ 型番:BW8501-8
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