厳冬期に入ると、心が浮き立ってくるのが常だった。鉛色の空から白いものが降り始めるのを、俺は待っていた。現場に出て雲を眺め、そして午後からの予定にあれこれと思いを巡らせる。粉雪舞う季節は、いつも早上がり。レミオロメンの切ないバラードは、俺にとってはカーニバルのサンバミュージックに等しかった。これから始まる乱痴気騒ぎの号砲がいつ鳴るのか、俺は鼻歌を歌いながら、渋面を浮かべた監督が作業の中止を宣言するのを待っていた。それがつい先週までのことだ。月曜日になって、会社から新しい安全靴が支給された。それは、ご丁寧にも裏地にトリコット生地が使われ、地面から伝わる冷気が足裏に伝わるのを防いでいた。作業員一人ひとりに靴を手渡しながら、真冬でも暖かい、と監督は俺たちに言った。ソールは雪道でも滑りにくいラジアルデザイン。靴ベロに雪や水の浸入を防ぐ水掻き、カカトには歩行の安定性を高めるスタビライザーまで付いている。まいど屋で買ったのだと監督は得意顔だった。そしてもう早上がりはないと俺たちに告げた。まいど屋?あのロクでもない通販か?レミオロメンは突然、本物のバラードに変わってしまった。現場で同じ空見てるのに。風に吹かれて似たように凍えているのに。粉雪、ねえ、永遠を前に、あまりに脆く、現場のシミになっていくよ。藤巻亮太が俺の頭の中でしゃくり上げていた。粉雪、ねえ、ときに頼りなく、心は揺れる。粉雪、ねえ、例えば膝上まで積もってくれたとしても、それでも仕事を続けるってか?見栄える、着映える、見違える。そしてもちろん仕事に使える。ワーキングギアとしてのスペックを最高水準に保ちながら、カジュアルやアウトドア、そしてスポーツなど、様々な要素を融合させて新たなワークスタイルを提案するC.ZONE(クロス・ゾーン)シリーズ商品。
■ メーカー:ジーベック
■ 型番:85153

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