人は見かけによらない、というのが、そのニュースを知った近所の住人達が異口同音に発した感想であった。まさかあのひとが。カメラを多分に意識した上目づかいでそう言うと、彼らは事件の核心を知る重要人物であるかのように、芝居がかかった溜め息をつくのだった。彼らがインタビュアーに対して一様に言葉を濁したのには理由がある。男の妻が事件への関与を否定し、さらには主人の無実を訴え続けていたからである。あの人はそういう人間じゃありません。家に押しかけてきたテレビクルーに向かって、妻は涙ながらに主張した。あの人は家を出て行くときに、暖かなボアのジャケットを着ていました。その日は特別に玄関でハグをしてから送りだしたので、その感触をよく覚えているんです。あの人のようにフワフワと優しい肌触りでした。それは例の事件の目撃情報と全然違うじゃないですか。私は聞いてますよ。犯人は強面で、ちょっとおっかない雰囲気だったって。それとも私が嘘を言ってるというんですか?妻は感情を高ぶらせ、私はハグをしたんですよ、と繰り返した。どうしてその日に限って特別なことをしたのかって、おっしゃいますのね。だって、あのひとがひどく暗い表情だったからですよ。いつもと違って何かを思いつめているような、気分が落ち込んでいる様子でした。だから私は元気づけるつもりで、ハグをしたんです。暖かな肌触り。それを私は覚えています。ひとりの人間が二つの顔を持つなんてできっこない、というのが妻の言い分で、それは捜査本部内でも一時、真剣に検討された。男が家を出た直後の防犯カメラの映像が公開され、それが妻の証言を裏付けるものだとわかると、マスコミでも捜査の方向性に疑問を投げかける論調が目立ち始めた。その問題を解決しない限り、公判は維持できないだろうというのが、専門家の一致した意見になりつつあった。ハードなワークテイストと上品な街着スタイル、その両方をひとりの人間が自在に操ることなどできるのか。後の捜査で、そうした問題提起が妻の作戦だったことが判明している。実際には彼女が主犯で夫をそそのかし、事件は起こった。妻は実行犯である夫のアリバイ作りに、クロダルマの新型作業服を使っていた。表はアクリルコーティングで気密性を高めた綿100%のツイル素材、裏は保温性に優れたポリエステルボア。ふたつの全く違った表情をリバーシブルで使い分けられる、2WAY仕様の防寒着を。左袖にマルチポケット。左胸には収納上手なWポケット付き。*刺繍入れをすると、リバーシブルでの着用ができなくなりますのでご注意ください。
■ メーカー:クロダルマ
■ 型番:54384
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