防寒アウターは、現場作業着の王である。そんな言葉が、ごく普通に語られていた時代があった。語っていたのは、もちろん作業着を販売する作業着屋の店主たちだ。彼らにとって防寒着は、なかなか思うように伸びていかない一年の販売実績を挽回する、最後の希望の星だった。そして日本各地に散らばったその希望の数々は、よほどの暖冬でもない限り、いつも満額回答で叶えられていた。店主たちはほっと胸をなでおろし、店内に飾られたその商材に手を合わせた。そして心からの敬愛の念を込め、防寒着を王と呼んだ。そんな時代がいつ終わりを迎えたのか、店主たちは思い出せない。気付いたときには現場の景色はすっかり変わっていた。恐らくじわじわと、あたかも北欧の氷河が年に数メートルずつ後退するように、流れは続いていたのだろう。そして何かの拍子に氷山が大崩落したときの爆音に驚いてようやく正気に返ったとき、自分たちの王が姿を消していたことを知って狼狽したのだ。今思えば、地球の温暖化は随分前から始まっていた。アスファルトの水たまりはずっと水たまりのままで、氷が張ることもなくなっていた。それにつれて王者だった防寒着はかつての重々しい風格を徐々に失い、より薄く、軽量になっていった。防寒性を持たせたコンプレッションが普及し始めると、その傾向にはさらに拍車がかかった。軽くて動きやすくてスマートがキーワードだった。そして、重厚感が失われた分、当然、販売価格は低下し、普通の作業着とそれほど変わりなくなったのだ。今ではガテンの代表格であるあの寅壱でさえ、こんな防寒ギアを出すようになっている。例の3つのキーワードがバランスよくちりばめられた、旬を強く意識して作られた時代の写し鏡。店主たちは最早手を合わせることもなく、この収益にそれほど貢献しない、だが職人の間では圧倒的人気を誇る低価格アイテムを、半ばあきらめきった気持ちで取り扱っている。軽量ながら保温性よし。各所に耐摩耗性に優れたオックス生地を配したハイブリッドモデル。多少の水ならはじく撥水加工付き。*この商品はカラーによって素材混率が異なります。1.パープル、2.グリーンは表地:ナイロン62%、・ポリエステル38%、別布:ポリエステル100%、裏地:ポリエステル100%です。
■ メーカー:寅壱
■ 型番:2587
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