昭和レトロを、寅壱流に表現してみるのだ。この商品が発表される前の段階で、寅壱サイドからはそうした意気込みが聞こえてきていた。担当者が軽率だったのか、あるいは何か別の意図があったのか。今にして思えば、まいど屋は後者を採る。統制が徹底している組織の一担当者が口を滑らせたにしては話が具体的過ぎたし、その情報の出し方も随分と巧妙だったからだ。目指しているのは昭和40年から50年代。その頃の日本にはまだ自国の伝統をエキゾチックなものとして捉える風潮はなく、純粋な日常風景のいたるところにそれが溶けこんでいたはずである。寅壱はそれをこの令和の時代に再現する。日本を再発見するのではなく、そこに身体を馴染ませて、自分自身の一部に変えてしまう。要するに、外部から珍重する立ち位置ではなく、内側からの同化。それがテーマなのだと担当氏は言っていた。まだ形のないモデルに対してそうした情報リークが行われるのは、彼らが並々ならぬ決意を持って、このプロジェクトを進めていた証左ではないか、とまいど屋は推察する。彼らはマーケットの期待感を利用して、実製品がリリースされた際の瞬発力を高めたかった。そしてそのために、さらに巧妙な仕掛けを考えた。実は、寅壱の公式カタログにあるこのモデルの紹介ページには、レトロのレの字も記されていないのだ。彼らは、販売代理店の熱量がユーザーの皆さんに直接伝わっていく方が効果が高いと読んでいた。つまり、まいど屋が彼らに代わって広報を務めることを期待していた。そう考えたからこそ、まいど屋は本モデルが発売された今、本来ならばオフレコにしておくべき上記のような業者間のやり取りを、この商品紹介欄ですっかり開示してしまうことにしたのである。和の精神に通じるカラーリングとナイロンワッシャーの繊細な表情が独特の雰囲気を醸し出す昭和レトロ風防寒ギア。裏地は保温性の高いフリース仕立て。多少の雨ならはじく撥水加工付き。
■ メーカー:寅壱
■ 型番:2590
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