寅壱を着たいが、寅壱を着ているとは思われたくない。それは人に恥ずべき屈折した心理だろうか?一概にそうとも言い切れないだろう。それはある意味で、正常に屈折した欲求の表れなのだ。例えば、ヴィトンの品質には敬意を払っているものの、それを持ち歩くとなると嫌でも他人の目に触れてしまうLVマークに抵抗を覚える人間がいる。メルセデスにカラスの足跡のような、あのエンブレムが付いていなかったなら。心惹かれる美しいレクサスのボディーから、自分の懐具合を言いふらしているようにしか思えないLマークが取り外されてさえいれば。誰もが知るハイブランドの商品には、気恥ずかしさからくるそうした感情が、時として付いて回るものなのだ。寅壱を着たい。己の肉体こそが唯一の資本である職人が、作業性能と着心地のよさ、そして何よりも独特のオーラを放つ着用時の佇まいを我が物にしたいと考えるのは当然のことだ。しかし、すれ違う人に向かっていちいち寅壱を着ている理由を釈明するわけにはいかない。俺はブランドを所有することでしか自分の価値を確かめられない人間ではない。寅壱を選んだのは、仕事上、最高水準の現場着が必要だったからだ。そんな訴えに、一体誰が耳を貸すというのだろう?寅壱独特のクセのあるデザインは、多くのマニアを虜にしてきた。そして同時に、まさにその明瞭すぎるシンボル性こそが、多くの職人に寅壱を敬遠させる原因にもなってきたのだ。さて、ここに寅壱ではあるが、従来の寅壱らしさが全くないウェアが誕生した。いつもの威圧感を消し去ったジェントルな顔立ちは、筋金入りのファンには物足りなく映るかもしれない。しかしそれでも、通常の感覚の持ち主には十分スリリングで、心をざわつかせるアピール力を持っているように思う。寅壱の商品開発部隊がアンチ寅壱層の存在を意識したのかどうかはわからないが、今回発表されたこのモデルは、寅壱を着たいが寅壱を着ているとは思われたくないと正常に屈折していたユーザーに、今度こそはと誓わせる力を秘めていると思われるのだ。バイオブラスト加工で味わいのある抜け感を表現したデニムギア。ムシ暑い季節でも爽やかに着用できるサマーモデル。ハードな動作にもムリなくフィットするストレッチ仕様。
■ メーカー:寅壱
■ 型番:8923


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